失礼な依頼に関するあれこれ ~最初にギャラと権利の話をしろよと声を大にして言いたい
Twitter(現在はX)を見ていたら、失礼な依頼に関するあれこれが流れてきました。
テレビ朝日「グッド!モーニング」からの失礼な依頼に関して(2023年5月13日12:30に追記)
一つ目は、カルロス矢吹さんが経験した失礼な依頼。
カルロス矢吹さんのプロフィールは、以下のとおりです。
1985年宮崎県生まれ。作家、ラジオパーソナリティ。(株)フードコマ代表。大学在学中より、グラストンベリーなど海外音楽フェスティバルでスタッフとして働き始める。以降、日本と海外を往復しながら、ライター業やラジオ・TVの構成を開始。コンサート運営、コンピレーション編集、美術展プロデュースなど、アーティストのサポートも行う。2012年より、日本ボクシングコミッション試合役員に就任。山中慎介や井上尚弥ら、日本人世界チャンピオンのタイトルマッチを数多く担当。取材で世界60カ国以上を訪れ、海外へ行く度に現地のスノードームを手当たり次第購入しており、そのコレクションは300を超える。
カルロス矢吹さんのnoteに以下の記述がありました。テレビ朝日系列の番組「グッド!モーニング」スタッフによる、失礼な依頼です。
「番組内で取り上げたい話題があって、それを調べていたらカルロス矢吹さんの記事がHITした。協力して欲しいのだが大丈夫だろうか?差し当たっては◯◯に関して知ってることがあったら教えて欲しい。なお、企画が番組で放送されるかはまだわかりません」
企画が放送されるかわからないが、とりあえず協力はしてくれ、情報をくれという内容ですね。それに対して、カルロス矢吹さんは次のような対応をしたそうです。
テレビから仕事の依頼が来た時のテンプレート文章を送りました。テレビからのこういう依頼は山ほど来て、山ほど嫌な思いをさせられてきたので、必ず下記を確認するようにしています。少しだけ意訳です。
①ギャランティの有無ギャラに関しての説明がありませんでしたが、企画が成立するにせよしないにせよ、リサーチへの協力依頼には料金が発生します。料金はそちらの規定で構いません。マナーとしてよろしくお願いします。出演者としてギャラが発生する場合はまた応相談です(みなさんへ注:なぜなら出演料にリサーチ料が含まれていると判断出来るので)。②写真使用料について弊社・株式会社フードコマでは写真画像代理店業務も行なっております。カルロス矢吹が撮影した写真に関しては、実際に番組で使用された場合のみ、弊社既定の使用料をいただいています。また、その場合は「提供:株式会社フードコマ」のクレジット表記徹底をお願いします。
カルロス矢吹さんに依頼する際に、お金関係のことを触れずに、自分の都合だけを押し付けようとした模様。
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写真/ぱくたそ |
テレビ東京『出没!アド街ック天国』からの失礼な依頼に関して
もう一つは、渡辺豪さんが経験した失礼な依頼。
渡辺豪さんのプロフィールは、以下のとおりです
1977年、福島県生まれ。全国に残る遊廓跡・赤線跡およそ500箇所を撮影取材。2015年、遊廓専門の出版社「カストリ出版」を創業、主に貴重書の復刻を行う。翌2016年、吉原遊廓跡に遊廓専門の書店「カストリ書房」を開店。『遊廓』に収録した写真はすべてシグマ社製カメラを用い、多くはDP1 Merrillで撮影。
ギャランティや権利関係などについての記載はありませんでした。ただし、ギャラ以前の問題として、この手のテーマはセンシティブであるため、諸条件について伝える前に「権利処理は使用者の責である」旨を強調して伝えました。
結果的に、いったんは利用をお断りする返事を貰いました。
が、数日後に責任を了解した上で、改めて使える写真素材の有無について、打診がありました。
このタイミングでようやく、ギャラや放送権(将来的な再放送やパッケージ化)などの諸条件を伝え、所蔵する前述の昭和32年に撮影された洲崎パラダイスのサンプル写真などを送りました。ここまでにメールは4往復ほど行っており、それなりの時間を割いていますが、トラブルを防ぐためには負担の少ないルートではあったと思います。
そして、4月末前後の先方からの「いただきました諸条件で弊社およびテレビ東京に確認を取りまして、改めてお返事させて頂ければ存じます」といった返事を最後に、その後テレビ局からは連絡がぷっつり途絶え、放送予定日5月20日が過ぎたことを、今しがたふと思い出して検索したところ、しっかり洲崎パラダイスが取り上げられていました、という顛末です。「なるべくお早いお返事がいただけますと幸いです」という文面を思い出すだに悲しい気持ちになります。
いろいろと作業をやらせておいて、急がせておいて、返事をしないという、「あるある」です。
そのほかにも興味深い記述がありました。
これまでカストリ書房は、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌などメディアに沢山取り上げて貰いましたが、世間に信頼される古いメディアほど驚くくらい反響がありません。むしろ冷やかし客が増えるだけした。「新聞でみたよ」と切り抜きを持参するなどして、小一時間ほど自説を開陳して何も購入せずに帰る高齢男性のなんと多かったことか──
こうした事が続いたので、私は報道を除く商業媒体の場合、基本的に取材は有償としています。
一方、インスタグラムなど個人SNSに紹介された方が、よほど売上に繋がります。例に挙げた業界関係者には申し訳ないですが、彼らの現在の立ち位置を如実に示しています。
テレビ、ラジオ、新聞、雑誌などのオールドメディアは、視聴者・読者もオールドで、金を落とさないどころか、手前みその話をダラダラと行う時間泥棒。
依頼者も依頼者ならば、その程度の視聴者・読者ということになるのでしょうか。
私の場合は、某公共放送のGという番組を見て、出演した大学教授にムックの取材依頼をしたことがありました。依頼書に「Gという番組を見た。同じ内容で取材させてほしい」と書いたところ、すごい嫌悪感を示されてしまったのです。どうやらかなり長い時間を撮影に拘束され、大変な思いをした割に、報われた感がなかったようです。
こちらとしては、よかれと思ってGという番組名を挙げたのですが、逆効果。ただ、「ご面倒をおかけしない」と繰り返し伝えたので、取材はできました。
カルロス矢吹さんや渡辺豪さん、そして大学教授の話から、テレビ番組の名前を出して取材を申し込むのは、やめておいたよさそうだと思った次第です。
そんな私も依頼を受けることがありますが、最初にギャラと権利の話をしろよと声を大にして言いたいところです。
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