結局のところ、「営利」とは何なんだ問題 ~特に税金に関して
公共の施設では「営利目的での使用不可」などとされています。
ぼんやりと「営利は、金銭を受け取ることかな……」と思っていたら、実際はそうではないケースに遭遇しました。
そんなわけで、営利について調べてみました。
営利については、辞書では次のように説明されています。
えい‐り【営利】財産上・金銭上の利益を得る目的をもって事を行うこと。
デジタル大辞泉
えい‐り【営利】〘 名詞 〙 財産上または収入上の利益を上げるようにはかること。利益の獲得を目的にして活動すること。
精選版 日本国語大辞典
「金銭上の利益を得る」などのように、辞書ではやはり金銭の受け取りが含まれています。
一方、厚生労働省のページでは次のように説明されていました。
「営利を目的としない」とは一般的に様々な意味があり、①出資の持分に応じた剰余金の分配を目的としないという意味や、②利益を追求しないことや収益事業を行わないといった意味で使われますが、「労働者協同組合は営利を目的としない」と説明する場合は①の意味を指します。(第77条2項)
冒頭で紹介した例については、後で紹介する「収益事業」が行われていたため、「出資の持分に応じた剰余金の分配」がキーになっていたのでしょう。
「出資の持分に応じた剰余金の分配」については、営利団体 (Profit-making organization)・非営利団体 ( Non-profit organization)とセットで考えると、理解しやすくなります。
営利団体
利益を追求することが目的で、事業活動で得た利益を株主や社員など構成員へ分配します。
株式会社や合同会社などは、売上から原価や人件費や経費を差し引いて利益が出ると、株主など出資者に分配(配当)することができます。
残余財産は、株式会社の場合には株主に、合同会社は社員に分配されます。
非営利団体
社会貢献や公益性の追求が目的で、活動で得た利益を構成員(会員、社員)に分配されず、活動資金として使われます。たくさん利益が出たからといって、構成員で山分けすることはできないのです。
つまり、非営利とは、「利益を上げてはいけない」「無料でサービスを提供しなければならない」という意味ではありません。提供するサービスに見合った対価を報酬として得て、事業収益を上げて、団体本来の活動資金に充当します。
組織的・継続的に活動を続ける経費として、地代家賃や通信費、消耗品費などがあります。こうした支出は利益の分配ではありません。
構成員の給料も、事務的な経費に相当します。労働の対価として払うのではありません。団体の運営に必要な経費、つまり活動資金としての給料の支払いは認められています。
残余財産(法人を解散するときに余った財産)は、国、地方公共団体、公益財団法人、公益社団法人、学校法人、社会福祉法人、更生保護法人、NPO法人のいずれかへ寄付しなければなりません。
非営利団体であっても、事業活動で利益を上げる場合はあります。そして非営利・営利に関係なく、次の事業や取引では課税されます。
収益事業から生じる所得は課税される
収益事業は、サービスの提供に金銭的対価を伴う、以下の34事業です。
収益事業
①物品販売業
②不動産販売業
③金銭貸付業
④物品貸付業
⑤不動産貸付業
⑥製造業
⑦通信業
⑧運送業
⑨倉庫業
⑩請負業
⑪印刷業
⑫出版業
⑬写真業
⑭席貸業:利用料などの名目で座席・部屋・施設などを貸しつけ、時間や期間等を区切って利用させる事業
⑮旅館業
⑯料理店業その他の飲食店業
⑰周旋業:結婚紹介所など
⑱代理業
⑲仲立業
⑳問屋業
㉑鉱業
㉒土石採取業
㉓浴場業
㉔理容業
㉕美容業
㉖興行業:イベント開催
㉗遊技所業
㉘遊覧所業:展望台、パノラマ、遊園地、庭園、動植物園、海中公園など不特定多数の人が訪れる場所を観覧させる
㉙医療保健業
㉚技芸教授業
㉛駐車場業
㉜信用保証業:利用者の債務を保証する事業
㉝無体財産権提供業:特許権や著作権、ノウハウの使用料
㉞労働者派遣業
非営利団体であっても、収益事業から生じる所得には法人税が課せられます。ですから、収益事業とそれ以外の事業からの所得を分けて、経理を行う必要があります。
対価を得て行われる取引は課税される
商品を販売して代金を受け取ったり、事務所を貸し付けて家賃を受け取ったり、工事を請け負って代金を受け取ったりするような取引には消費税が課せられます。
給与や報酬、謝礼金には源泉所得税が課せられる
給与や報酬、謝礼金を渡す際には、源泉所得税10.21%を預かり、翌月10日までに国に納める必要があります。
長くなってしまいましたが、「営利」については、厚生労働省のページにあるように、さまざまな意味で使われています。そのため、場面場面で、「この『営利』は何を指していますか?」と言葉を使っている人に尋ねる必要があるようです。
***
余談ですが、営利団体・非営利団体には、法人格がある団体とない団体とがあります。法人格とは、個人以外で権利や義務の主体となり得るものを指します。
任意団体
任意団体は、法人格、そして法的な手続きや認定はありません。「権利能力なき社団」と呼ばれることもあります。社団とは、一定の目的によって結集した人の集団です。
任意団体で代表者または管理者を決めている場合は、「人格のない社団等」に該当します。また、会則、事務局が存在し、継続的に活動できる体制が整っています。
人格のない社団であれば、団体名で口座を作れます。ただ、金融機関の判断によっては、断られることもあります。
人格なき社団の要件
〇団体としての組織を備えていること
〇多数決の原則が行われていること
〇構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続していること
〇その組織において代表の方法、総会の運営、財産の管理等団体としての主要な点が確定していること
収入が会費・寄付のみの場合などは、法人税はかかりません。
任意団体が収益事業を行っている場合には、法人税・法人住民税・消費税を納める義務があります。
また、任意団体であっても、従業員を雇って給料を渡すことはできます。この場合の給料は、普通の会社の給料と変わらないので、所得税の源泉徴収義務があります。任意団体であっても、原則、毎月の給料から、所得税を天引きして、翌月10日までに源泉徴収した所得税を国に納付します。
(例)協会、資格認定団体、業界団体、学会、研究会、サークル、同窓会、町内会、自治会
一般社団法人
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律により法人格が与えられています。設立には、2人以上の社員(総会の議決権を有するもの)と定款、公証人による認証、法務局での登記が必要です。
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| 一般社団法人・一般財団法人と法人税より |
NPO法人
特定非営利活動促進法により法人格が与えられています。設立には、10人以上の社員(総会の議決権を有するもの)、3人以上の理事、1人以上の監事と、定款、所轄庁による認証、法務局での登記が必要です。
そして、活動内容が「特定非営利活動」に限定されています。
保健、医療又は福祉の増進を図る活動社会教育の推進を図る活動まちづくりの推進を図る活動観光の振興を図る活動農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動環境の保全を図る活動災害救援活動地域安全活動人権の擁護又は平和の推進を図る活動国際協力の活動男女共同参画社会の形成の促進を図る活動子どもの健全育成を図る活動情報化社会の発展を図る活動科学技術の振興を図る活動経済活動の活性化を図る活動職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動消費者の保護を図る活動前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動
資本金という制度はないので、設立してから売上が立ち始めるまでに必要な経費は、誰かが一時的に立替払いしておく必要があります。立て替えた資金は、NPO法人にとっては未払金(借入金)になります。
■主な参考資料
N P O Q & A
学会などの「人格のない社団」にも法人税や消費税などの税が課せられる?
非営利用語辞典
NPOのイロハ
「知っておきたい! 非営利法人の税務の特徴」の巻
営利・非営利区分の判断について(ご案内)
地方公務員の兼業に関する技術的助言の通知
一般職の国家公務員の兼業について(Q&A集)
総務省が地方公務員の兼業や副業を促進、許可基準を公表…環境整備するよう自治体に通知
公務員は講師・講演活動で謝礼金受け取ってもいいのか?オファーを受けるにはどうすればいい?
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