子どもにも教えたい、本当に怖いお金の話

友情はお金で買えないけど、お金で友情は壊れる。
愛情も、家庭も。

お金より命が大事だというけど、お金を失ったことで命も失う人がいる。

お金をたくさん持っているだけなのに、お金持ちを多くの人が「スゴイ」と褒める。

お金持ちの人が書いた本を、「ありがたい教えが書いてある」と言わんばかりに多くの人が買い求める。

「お金を好きになるとお金に愛される」「努力不要! お金を引き寄せる法則なんて本がたくさん出回っている。





 このような金、金、金の世の中ですが、多くの大人たちが、これまでお金について誰からもきちんと教わったことがありません。お金についてよくわからなくても、どこかに勤めて、定年まで働き上げれば老後も安心して暮らせた時代があったからでしょう。
 また、昔は金融機関が銀行か郵便局(今はゆうちょ銀行)、農協ぐらいでした。

 それが今ではインターネットが発達し、数多くの金融商品を自宅でも簡単に取引できます。ネットショッピングでクレジットカード払いというのは当たり前になってきました。
 結果としてお金のバーチャル化が進み、「お金とは何か」が捉えにくくなっているように思います。

 かつて、雑誌編集者時代に、マネー関連の特集をときどき担当しました。読者の家計をファイナンシャルプランナーが診断するという特集を数年前に組んだのですが、今でも忘れられない家計があります。

 夫は大学の講師、妻は専業主婦、未就学の子どもが2人。
 妻に取材したところ、夫が財布のひもを握っていて、外食が多くて食費がかさみ、年長の子の習い事の費用も非常に高いのです。クレジットカードは10枚以上持っていて、キャッシングで生活費をまかなっていました。あるカードでキャッシングし、返済期限が来ると別のカードでキャッシング。これの繰り返し。

 妻もこのままでいいとは思っていないから、家計診断に応募したのです。しかし「夫に口出しできない」「私も働きたいけど、保育園には応募していない」と、なんだか責任感が弱い印象。
 妻から聞いた内容と家計状況をファイナンシャルプランナーに伝えたところ、「これは、手に負えない」との返事が来ました。

 この家庭の夫は、職種から考えるとかなり高い学歴の持ち主だと推定できました。しかし、お金の感覚がおかしいのです。おそらく「自分は頭がいいのだから、妻は口出しせずに自分に任せておけばいい」という態度で、その後も行動を変えることはなかったでしょう。



 仕事で家庭のさまざまな事情を聞く中で、学校の勉強や試験勉強よりも、必要なのはお金の勉強だという思いが強くなりました。
 できれば子どもが高校生までにお金の勉強をやっておいたほうがいいでしょう。理由は、大学生になるとクレジットカードを持つケースがあるからです。
 私の大学時代、友人が「リボ払いで毎月の返済が少ないから、いろいろなものが買えて便利」と話していたことを覚えています。

 リボ払いでどれだけの手数料を払っていたのでしょうか。

 彼女は自力で返済しましたが、クレジットカードで知らぬ間に借金を増やしていき、親が尻拭いしなければならなくなるケースもあるはずです。


 もう一つの理由は、どこで学び、どこで働くのかという進路を考えるうえで、お金について知っておくことが大事だからです。
 東京大学を卒業して電通に就職した女性が過労死するという、痛ましい事件がありました。そのほかにも超有名企業が実はブラック企業という報道がありました。

 賃金は、日々を健康に暮らして、適度に息抜きをして、家族を養って、「よし、また働こう」とがんばれるために支払われるものではないでしょうか。ですから、賃金を得るために死んでしまったり、精神や体を壊して働けなくなったりするのは、そもそもおかしいと私は思うのです。

 「お金持ち=スゴイ」「給料の高い有名企業に就職する=スゴイ」という思考にはまり込むと、自分の精神や体を置いてきぼりにしがちです。
 高校生になると、親の意見だけに従わず、子ども自身も自分の進路について考えるはずです。

周囲の友達は大学に進学するが、果たして自分には進学する必要があるのだろうか?

どうしても有名大学に行きたいのだが、家計的に厳しく、奨学金を使うのなら自分は返済していけるだろうか?

今の世の中で、進学する、働くとは自分にとってどんな意味があるのだろうか?


 「お金持ち=スゴイ」「給料の高い会社に入る=エライ」に巻き込まれず、客観的に世の中をとらえながら進路を考えるために、お金について勉強しておく必要があるかもしれません。

 私は複数のファイナンシャルプランナーと仕事をしてきました。
 ファイナンシャルプランナーもさまざま。「ふろ掃除は100円、窓ふきは300円という具合に、お手伝いに応じてお小遣いをあげると、子どもの金銭感覚が育つ」という意見もあれば、「家庭内のお手伝いに対価を発生させることはおかしい」という意見もありました。

 アルバイトだと、専門性や危険度、労力などに応じて仕事の対価が支払われています。お手伝いに応じてお小遣いをあげることは、アルバイトと同様、社会勉強になると考えられます。加えて、自分の労力を使って得たお金を子どもは無駄遣いしないのではないかという親の期待もあるでしょう。

 一方、家庭生活を営む上で、家族で協力・分担して家事を行う必要があります。漫画「逃げるは恥だが役に立つ」で、「夫婦は共同経営責任者」というセリフがありました。


 夫婦だけでなく親子も共同経営責任者ととらえるのならば、家族一人ひとりに家庭を幸せに経営する責任があります。この場合は、「お手伝いの対価としてお小遣いを渡す」という発想にはなりません。幼い子どもも経営者だからです。

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