全肯定する呪文「そこがいいんじゃない!」  『「ない仕事」の作り方』

  私たちにとっての不安の大きな要因は、お金と仕事と人間関係ではないでしょうか。

 しかし、天下の回り物であるお金も、仕事も、移ろい続ける人の心にも、「絶対」はありません。だから不安を消すことはできず、この状態をみうらじゅん氏は「不安タスティック」と呼んで、「不安がないと人生つまらない」と自分を洗脳することを推奨しています。

みうらじゅん氏サイン本

 世の中を生きている人のほとんどは、不安を抱えています。「自分だけが追い詰められている」のではないし、 世の中を生きている人のほとんどは、不安を抱えています。「自分だけが追い詰められている」のではないし、不安については周囲に当たり散らして軋轢を生みながら生活していくのか、SNSや買い物、ギャンブル、アルコールへの依存で紛らわせてこじらせていくのか、「不安タスティック」として受け止めていくのかは、自分次第なのでしょうね。

 「不安タスティック」として受け止めながらも、実際に仕事をするには、どうしたらいいのでしょうか。

 

「一人電通」式仕事術を大公開!
 帯にこのように書かれている『ない仕事の作り方』(著/みうらじゅん 文藝春秋)。

 「一人電通」とは、電通という広告代理店がやっていることを全部一人でやってしまおうとすること。

 「一人電通」で重要になのは接待です。
 接待というと、黒いイメージしかないですよね。
 「官僚を接待して……」という違法行為。実力で戦わず裏で手を回す卑怯な態度。高級店で金をジャブジャブ使う無駄。
 クリエイティブとは真逆な印象ですが、そんな接待の重要性が力説されているのが本書です。

 接待において、自分語りは厳禁ですよね。相手に気持ちよくなってもらうために、「へぇ!」「勉強になります!」などと相づちを打ち続けなければなりません。
 結局、「自分のことは話すな」に行き着くわけです。

 興味深いのが、仕事については、同じタイプの人間は不要という点。できないことをやってもらうために一緒に仕事をするのです。

 過去に私がみうらじゅん氏を取材したテーマが、『親孝行プレイ』でした(冒頭のサイン本は、その際にサインしてもらいました)。つらいこと・嫌なことのすべてに「プレイ」や「ブーム」という言葉をくっつけて、新しい名前をつけて面白がると見方が変わるわけです。「親孝行」は嫌だけど、「親孝行プレイ」になると道徳とか心の問題とかを飛び越えて、なんだか面白くなりますよね。
 「一人電通」のように、新しい名前ができると仕事が面白くなるのかもしれません。

 以下は本書からのまとめです。

「私が」で考えない

私が何かをやるときの主語は、あくまで「私が」ではありません。「海女が」とか「仏像が」という観点から始めるのです。

「私はこういう仕事がしたい」という考え方のうちは、逆になかなかのその仕事は形になりません。

 「自分探し」をしても、何にもならないのです。そんなことをしているひまがあるのなら、徐々に自分のボンノウを消していき、「自分なくし」をするほうが大切です。

接待の重要性

 前例のない、「ない仕事」をしようとしているのですから、そのくらいの接待は当然です。黙っていても、いい扱いなどされないのです。

 話題の選び方も大事です。たまに空気を読まずに自分の話ばかり延々とする後輩がいますが、そんな人は次回から飲みの席に呼ばれません。とは言え、黙って聞いているだけでなく、たまにピリッと笑える話を差し込んだり、いいタイミングで間の手を入れるくらいを目指しましょう。

もしこれから就職や転職の面接を受けるという方は、「面接=接待」だと思って挑んでみてください。

全肯定する呪文「そこがいいんじゃない!」

 人はよくわからないものに対して、すぐに「つまらない」と反応しがちです。しかしそれでは「普通」じゃないですか。「ない仕事」を世に送り出すには、「普通」では成立しません。「つまらないかもな」と思ったら「つま……」くらいのタイミングで、「そこがいいんじゃない!」と全肯定し、「普通」な自分を否定していく。そうすることで、より面白く感じられ、自信が湧いてくるのです。

自分と違うタイプの人と組む

大きなことを成し遂げるとき、同じ才能を持った者が集まるより、それぞれ得意分野が違う者が集まったほうが、きっとうまくいくでしょう。異能戦士が横並びで集まる。それが成功の秘訣なのです。

 チームで仕事をする場合、自分と似たタイプではない人とあえて組んでみることをおすすめします。

私にしてみれば、もし雇うとしたら自分が不得意なことをしてもらいたいだけです。

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『どうやらオレたち、いずれ死ぬっつーじゃないですか』の内容メモ
〇「ああ、楽しかった」と言い残して死ねるように、毎晩、寝る前に練習している
〇「幸せ」も「満足」も単なる言葉でしかないし、見えないものにつけられたイメージ。そんなものに振り回されている人生は滑稽
〇「幸せですか?」と聞いてくるのは新興宗教団体
〇金は思い出とご祝儀に使う
〇雑学や知識だけだと話がうっとうしい。応用できないものは意味がない
〇美意識さえあればよくて、プライドはいらない
〇プライドを傷つけられて怒るヤツって、怒り方がセコイ。みっともない自尊心の見え方
〇仕事と友だちは別(みうらじゅん氏は、一緒に仕事をしない編集者とは飲みに行かないことで有名らしい)
〇 生きる目的は、死ぬまで生きること
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