【ほったらかし投資勉強会】経済的独立について“学ぶ”ほど、経済的に独立できないという矛盾

 『ほったらかし投資術』(朝日新聞出版)の第1章で「経済的独立」という言葉が登場します。著者の一人の水瀬ケンイチさんは、次のように述べていました。

経済的独立を達成していれば、そもそも働くかどうか、住む場所、人間関係、行きたいところ、やりたいことなど、自分の意思によって自由に選択できる範囲が格段に広がります。
 経済的独立と同様に使われている言葉として、次が挙げられます。

○FIRE(Financial Independence, Retire Early)
○経済的自立
○早期退職(リタイア)
○セミリタイア
○金持ち父さん
○不労所得

 水瀬ケンイチさんについては「会社から自由になる」と述べていますが、「家族(親子、夫婦)から自由になる」「下請けから自由になる」などと言い換えてもかまわないでしょう。「お金のためだけに○○しなければならない」という考え方から解放されるのです。また「面倒なこともあるけど、まあ、それも夫婦なのだから」という割り切りもできます。

会社で働いてお金を稼いでいますが、会社でお金を稼がなければ生きていけないわけではありません
精神の安寧安心感は相当なものです。

自分がやりたいことや言いたいことを抑圧し続ける。そんなことはもうしなくてもいい。 

嫌な仕事を、仕事だと割り切れることもまた、経済的に独立した人の強さの一つだと思います。 


 経済的独立を“学ぶ”ためのセミナーやコミュニティ、オンラインサロン、情報商材はあまた存在します。そんなセミナーなどに参加している人が私の周りには数名いますが、全員、経済的独立から離れていっています。
 理由は単純です。セミナーやテキスト、イベントなどにお金を落とし過ぎているからです。賢く生きるための情報商材については、マルチ商法のオーガニック商品とも親和性が高いようで、こうした商品にもお金を落としています。

 経済的独立をうたったセミナーで学んだ人たちは、「講師」や「コーチ」、「コンサル」などさまざまな肩書きで、所属するコミュニティ内でサービスを互いに売買しがちです。
 ただ、メンバーが限られた、ごく狭いコミュニティで「自分が購入したサービス・商品の分を、相手にも買ってもらう」という状態。
 さらに、コミュニティ運営者には会費などの手数料を払っているため、「買ってもらった金額」から「購入した金額」と「月々の会費など」を引くと、プラマイゼロではなく、大きなマイナス。なお、手数料というコストを見極める大切さについて、『ほったらかし投資術』の第3章で触れられています。
 コミュニティでワイワイと楽しむのは、もちろん、けっこうな話ですが、経済的独立からはどんどん遠ざかっていることを自覚したほうがいいような気もします。


 ところで、「経済」という言葉については、「金もうけ」というイメージが強くありませんか。ひたすら利己的に財産を増やしていくような、なんだか品のよくない雰囲気もあります。
 しかし、「経済」と訳されたeconomyの語源は、ギリシャ語のオイコノミクス(oikonomikόs)で、「共同体のあり方」という意味です。economyという言葉が日本に入ってくる際に、福沢諭吉が「経世済民(世の中を治め、人々を救う)」という四字熟語を当てたと伝えられています。

写真/パブリックドメインQ



 経済学について、社会において、限られた資源を有効に活用することで、人々が幸せになるにはどうしたらよいかを考える学問だと、経済評論家の大江英樹さんは説明していました。

 限られた資源を有効に活用して人々を幸せにするツール(手段)が、今の社会ではお金。お金には次の3つの機能があると、一般的に説明されています。

○価値尺度機能
 商品やサービスの価値を測る「ものさし」としての機能です。
○交換(決済)機能
 お金はどんな商品やサービスとも交換できるため、物々交換のような不便さがありません。
○価値保存機能
 お金は腐ったりすることがないため、今すぐ使わず、将来のために蓄えておくことができます。


 お金の機能について、『ほったらかし投資術』の著者の一人の山崎元さん(2024年没)は次のようにかみ砕いて説明していました。

お金は「手段」
1 あれば、欲求をかなえられる
2 あれば、不幸を減らせる
3 運用することで、増やせる(お金でお金を稼げる)
4 持っていれば、後で使い道を決められる
5 あればあるほど、安心できるわけでもない

 運用の一つが投資で、費やして消える物ではなく、将来リターンを得ることを目的としてお金を投下することです。私たちの手元にあるお金を投資に回すことで、「共同体のあり方」にも影響を与えます。次の3つの投資は、GDP(Gross Domestic Product、国内総生産)を構成する要素にもなっています。
○民間企業の設備投資
○住宅投資
○公共投資

 「金は天下の回り物」なので、天下という広い社会を巡ることで、景気などをよくしているのではないでしょうか。

 投資の初心者でも簡単に資産運用できる方法が、「ほったらかし投資」として、本体価格がたったの790円の新書で説明されています。
 経済的独立について“学ぶ”よりも先に、本に書かれているほったらかし投資を始めてその効果を知るほうが、経済的独立への近道になりそうです。

 ここでも『ほったらかし投資術』第3版のマニュアルを引用しておきます。なお、情報は2022年2月時点のものです。eMAXIS Slim 全世界株式よりも手数料の低い、全世界の株式に投資するインデックス・ファンドが登場すれば、そのほうがお勧めということになるでしょう。iDeCoやNISAなどの制度も変更される可能性があります。

[ほったらかし投資術]実行マニュアル


 概ね3カ月〜6カ月の生活資金を確保して、普通預金に置く。それ以外のお金を「運用資金」と呼ぶ。

 運用資金の中からリスクを取って運用してもいいと考える「リスク資産」の保有額を決定する。リスク資産の額は「最悪の場合1年後に3分の1程度損をするかも知れないが、同程度の確率で4割くらい儲かる場合もあり、平均的には年率5%程度の収益率が見込める資産をいくら持つか」と自問して決める。「運用資金」から「リスク資産」を差し引いた残りを「無リスク資産」と呼ぶ。

 「無リスク資産」は、「個人向け国債変動金利型10年満期」又は銀行預金(1人1行1000万円の範囲内を守る事)で持つ。

 「リスク資産」は全て、全世界の株式に投資するローコストな(手数料の安い)インデックス・ファンド(「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」など)に投資する。

 iDeCo(個人型確定拠出年金)、NISA、つみたてNISAなどの税制上有利な運用口座を最大限に利用する。これらの口座の運用商品選択は全世界株式のインデックス・ファンド(選択肢の中に無い場合は、後述する「全世界株式インデックス・ファンドに準ずる商品」)とする。

 税制上有利な運用口座を活用しつつ、適宜積立投資で投資を追加するのも良い。


■ 『ほったらかし投資術』 以外の主な参考資料
1 先のことは誰にもわからない
2 世の中にうまい話はない

『経済ってそういうことだったのか会議』 著/佐藤 雅彦、竹中 平蔵  日本経済新聞社

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