10代でも心肺機能は50代に! 気づかぬうちに心身をむしばむ「ネット依存症」

 「歩きスマホ」で若い命が失われました。2018年7月19日の午後4時過ぎ、14歳の男子中学生が列車とホームの間に挟まれて死亡。歩きスマホが原因と見られています。

 歩きスマホの危険性は再三警告され、過去にも女子高生が列車と接触して事故が起こったという報道がありました。それでも、なぜ歩きスマホをやめられないのでしょうか?

 「ネット依存症」という言葉を、皆さんはすでに目にしたことはあるはずです。スマホなどが使えなくなり、ネットにつながれない状態になると、イライラしたり、パニックに陥ったりして、社会生活が送れなくなる症状です。
 ネット依存症では、「ネットにつながりたい」という衝動が止まらない、食事や睡眠よりもネットを優先する、実生活の人間関係が面倒になってシャットアウトする、心身に問題が起きてもネットを使い続けるといった行動を取ってしまいます。歩きスマホの一因になっている可能性は高いでしょう。

 10代のネット依存症患者は深刻のようです。親がスマホを取り上げたために、大暴れした子どもが刃物で親を刺す事件にまで発展したケースもありました。ネット依存症の疑いがある中高生は、全国で約52万人に上るといわれています。

 歩きスマホがやめられない子どもは、気づかぬうちにネット依存症に陥っている可能性があります。もちろん、それは大人にも当てはまります。
 どうしてネット依存症になるのか、どうしたら防げるのか、今回は考えてみましょう。


ネット依存症が
うつや発達障害と関連

 ネット依存症には、「スマホ依存」や「SNS依存」「ゲーム障害(ゲーム依存、ネトゲ依存)」も含まれます。スマホの普及で、手軽にどこでもネットを使えるようになったこと、子どももスマホを持つようになったことが、ネット依存症の患者を増やしているようです。IT(情報技術)の進歩でもたらされた闇ともいえます。

 欧米や韓国などの研究で、うつ病といった気分障害や、ADHD(注意欠陥・多動性障害)、自閉症スペクトラムなどはネット依存症と関連性があるという報告が出ていました。

○うつ病
気分の持続的な落ち込みを主体とした精神的・肉体的症状が現れる。
○ADHD
不注意・衝動性・多動性が特徴。感情が爆発しやすく、社会的な活動や学業に支障を来す。
○自閉症スペクトラム
社会性やコミュニケーション能力の障害。

 上記の障害を持っていることで、ネット依存症が起こっている可能性もあるでしょう。コミュニケーションを取るのが苦手で、人と接する際に感情的なトラブルを起こしたり、強い不安や緊張を抱いたりすることから、直接人と向き合わずに済むオンラインゲームやSNSにのめり込んでしまうのです。

 ネット依存症は、精神面だけでなく肉体もむしばんでいきます。ネットを1日中使い続けているために、家の中に閉じこもってしまいます。当然運動量が激減し、10代でも心肺機能は30~50代レベルにまで落ちるのです。

「そのうち飽きる」は
大きな誤解

 『ネット依存症』(PHP新書)の著者である樋口進医師は、2011年に日本で初めてネット依存症の治療を開始した久里浜医療センターの院長です。


  この本によると、ネット依存症に陥る原因の一つは、現実生活での人間関係のトラブル。
 職場や学校での人間関係がギクシャクしたり、いじめや仲間外れに遭ったりしたことから、そのストレスを解消するためにオンラインゲームにはまるのです。
 夜中までプレーして朝寝坊をする。遅刻が嫌だから職場や学校に行かない。家でオンラインゲームをする……こうした悪循環に陥るようです。

 樋口医師によると、子どもはネット依存症になりやすく、だいたい1カ月、早いケースでは1週間前後で“依存”と言える状態になります。オンラインゲームのほか、インスタグラムなどのSNS、動画といったさまざまなもので依存が生じるようです。
 「そのうち飽きる」というのは大きな誤解で、やればやるほどハマっていき、ネット依存症は悪化していきます。

 ネット依存症は、スマホなどを取り上げても治りません。先に述べたように、子どもの場合は親に暴力を振るう傾向も見られます。
 初期の状態なら、家族でネット依存症の危険性を共有し、適切な利用方法を話し合って、利用時間などに制限を設けること。同時に、原因となった人間関係のトラブルなどに親子で向き合うことも大事ではないでしょうか。
 重度になったら、医療機関などへの相談を強くお勧めします。

 オンラインゲームなどに熱中し生活に支障を来す「ゲーム障害」を、WHO(世界保健機関)は病気として分類すると発表しています。ネット依存症も病気だととらえ、見守ったり見過ごしたりせず、早期発見・早期治療が重要です。



※主な参考資料
朝日新聞デジタル2018年5月5日付「学校行かずゲーム16時間 運動乏しく、肺は53歳判定」https://www.asahi.com/articles/ASL4J34NBL4JULBJ002.html?ref=nmail
日経電子版NIKKEI STYLE2017年2月23日付「スマホ依存の何が怖い? あなたの人生が失うもの」 https://style.nikkei.com/article/DGXMZO13166550R20C17A2000000
日刊ゲンダイヘルスケア2018年1月16日付「治療の第一人者が警鐘 子供は1週間でネット依存状態に」https://hc.nikkan-gendai.com/articles/221279

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