「1日3回、食後の歯磨き」は世界の中でも少数派? 昔の常識が今は非常識
食後30分は歯を磨かないほうがいい……この「食後の歯磨きNG」説が広まったきっかけは、2010年9月に放送されたテレビの健康番組でした。
「食後の歯磨きNG」説で衝撃を受けた人は少なくないでしょう。長年にわたって「毎食後3分以内に3分間、1日3回歯を磨こう」と、教育機関などで歯磨きが指導されてきたからです。
歯科医の間でも見解が異なる「食後の歯磨きNG」説。賛成か反対か、あるいはもっと重要なことがほかにあるのか、検討してみましょう。
歯磨きの目的は
歯垢を作り出す細菌の除去
世界を見回すと、1日3回の歯磨きを推奨する国は珍しいようです。まず、アメリカ歯科医師会(ADA)が1日2回歯を磨くことを奨励しています。
そして、ヨーロッパで行われた口腔衛生状態に関する調査では、1日の歯磨き回数を2回、1回、1回未満から選択するようになっていました。つまり「3回磨く」という選択肢自体がなかったのです。
では、なぜ日本では3回の食事の後で歯を磨く指導がされてきたのでしょうか。これは1963年に、日本歯磨工業会(当時は、西日本歯磨工業会と東日本歯磨工業会に分かれていた)が「毎食後3分以内に3分間、1日3回歯を磨こう」というスローガンを提唱したことで広まったようです。要するに、歯ブラシや歯磨き粉を製造している業界のキャンペーンだったのです。
歴史を振り返ると、食べかすはつまようじや針のようなもので取り除いていました。その流れで欧米では食後にフロスが使われるのが主流。そして歯磨きの主な目的は「プラークコントロール」、つまり歯垢を作り出す細菌「ミュータンス菌」を取り除くことです。
ミュータンス菌はだ液で洗い流されますが、就寝中にだ液の分泌量が減ります。そのため、ミュータンス菌が1日の中で最も多いのは起床時なのです。朝起きたときの口臭やネバネバは、ミュータンス菌が増殖している証拠。ミュータンス菌を取り除くために、欧米では起床時に歯を磨く習慣があります。
食後の歯磨きで
歯が削れる?
虫歯ができる過程は、以下のとおりです。
1 ミュータンス菌が糖類を利用して不溶性グルカンというネバネバの物質を作り出す。
2 不溶性グルカンが歯の表面にくっついて歯垢を作る。
3 歯垢の中でミュータンス菌が多量の乳酸を産生するため、乳酸がだ液に薄められず、脱灰(だっかい:歯の表面のエナメル質などからリン酸カルシウムの結晶が溶出する現象)が起こり、虫歯が引き起こされる。
歯垢は食後8~24時間で形成されるという説があります。定説はないようですが、食後3分で形成されることはなさそうです。食後3分以内に歯を磨く根拠は見つかりません。
食後すぐに歯を磨くと、むしろ虫歯のリスクを高めると主張しているのが『歯はみがいてはいけない』(講談社)の著者である歯科医の森昭氏。食事の糖分で口の中が酸性に傾いている状態で歯磨きをしたら、歯が削れてしまうということです。
森氏の著書がとても売れていたので、彼の主張に「なるほど」と思った人は少なくないのでしょう。厚生労働省の「平成28年 歯科疾患実態調査結果の概要」によると、45~54歳の「う歯のない者」は0.5%。つまり日本人の99.5%が虫歯を持っています。 この数字から「333運動」は果たして意味があったのか、疑問を持つ人が多いのかもしれません。
しかし、日本小児歯科学会や日本口腔衛生学会は「食後の歯磨きNG」説を否定し、一般的な食事で口の中が大きく酸性に傾くとは考えにくく、食後に歯磨きしても歯が削れるようなことはないだろうという見解を示しています。
「食後の歯磨きNG」説への賛否はともかく、歯科医の多くが歯を磨く回数よりも歯の磨き方を問題視しています。
1つは力の入れ過ぎ。ゴシゴシと強く磨くことで、歯の表面と歯茎を傷つける。ブラシの毛先を軽く歯に当てて振動させるだけで、歯の細菌は落とせます。
もう1つは磨き残し。1本ずつ丁寧に歯の細菌を落とすことが重要です。
思い返せば、私が小学生の頃に指導された歯磨きはローリング法で、「ピカピカになるまでしっかり磨きましょう!」なんて言われたので、子ども心にまじめに取り組んだものです。しかし、大人になって「そんな磨き方だから歯と歯茎の間の汚れが取れないし、歯の表面が削れていますよ」と歯科衛生士から注意を受け、ショックを受けました。
昔の常識が今は非常識ということは珍しくありません。歯磨きについても最新情報にアップデートすることが大事です。
「食後の歯磨きNG」説で衝撃を受けた人は少なくないでしょう。長年にわたって「毎食後3分以内に3分間、1日3回歯を磨こう」と、教育機関などで歯磨きが指導されてきたからです。
歯科医の間でも見解が異なる「食後の歯磨きNG」説。賛成か反対か、あるいはもっと重要なことがほかにあるのか、検討してみましょう。
歯磨きの目的は
歯垢を作り出す細菌の除去
世界を見回すと、1日3回の歯磨きを推奨する国は珍しいようです。まず、アメリカ歯科医師会(ADA)が1日2回歯を磨くことを奨励しています。
そして、ヨーロッパで行われた口腔衛生状態に関する調査では、1日の歯磨き回数を2回、1回、1回未満から選択するようになっていました。つまり「3回磨く」という選択肢自体がなかったのです。
では、なぜ日本では3回の食事の後で歯を磨く指導がされてきたのでしょうか。これは1963年に、日本歯磨工業会(当時は、西日本歯磨工業会と東日本歯磨工業会に分かれていた)が「毎食後3分以内に3分間、1日3回歯を磨こう」というスローガンを提唱したことで広まったようです。要するに、歯ブラシや歯磨き粉を製造している業界のキャンペーンだったのです。
歴史を振り返ると、食べかすはつまようじや針のようなもので取り除いていました。その流れで欧米では食後にフロスが使われるのが主流。そして歯磨きの主な目的は「プラークコントロール」、つまり歯垢を作り出す細菌「ミュータンス菌」を取り除くことです。
ミュータンス菌はだ液で洗い流されますが、就寝中にだ液の分泌量が減ります。そのため、ミュータンス菌が1日の中で最も多いのは起床時なのです。朝起きたときの口臭やネバネバは、ミュータンス菌が増殖している証拠。ミュータンス菌を取り除くために、欧米では起床時に歯を磨く習慣があります。
食後の歯磨きで
歯が削れる?
虫歯ができる過程は、以下のとおりです。
1 ミュータンス菌が糖類を利用して不溶性グルカンというネバネバの物質を作り出す。
2 不溶性グルカンが歯の表面にくっついて歯垢を作る。
3 歯垢の中でミュータンス菌が多量の乳酸を産生するため、乳酸がだ液に薄められず、脱灰(だっかい:歯の表面のエナメル質などからリン酸カルシウムの結晶が溶出する現象)が起こり、虫歯が引き起こされる。
歯垢は食後8~24時間で形成されるという説があります。定説はないようですが、食後3分で形成されることはなさそうです。食後3分以内に歯を磨く根拠は見つかりません。
食後すぐに歯を磨くと、むしろ虫歯のリスクを高めると主張しているのが『歯はみがいてはいけない』(講談社)の著者である歯科医の森昭氏。食事の糖分で口の中が酸性に傾いている状態で歯磨きをしたら、歯が削れてしまうということです。
森氏の著書がとても売れていたので、彼の主張に「なるほど」と思った人は少なくないのでしょう。厚生労働省の「平成28年 歯科疾患実態調査結果の概要」によると、45~54歳の「う歯のない者」は0.5%。つまり日本人の99.5%が虫歯を持っています。 この数字から「333運動」は果たして意味があったのか、疑問を持つ人が多いのかもしれません。
しかし、日本小児歯科学会や日本口腔衛生学会は「食後の歯磨きNG」説を否定し、一般的な食事で口の中が大きく酸性に傾くとは考えにくく、食後に歯磨きしても歯が削れるようなことはないだろうという見解を示しています。
「食後の歯磨きNG」説への賛否はともかく、歯科医の多くが歯を磨く回数よりも歯の磨き方を問題視しています。
1つは力の入れ過ぎ。ゴシゴシと強く磨くことで、歯の表面と歯茎を傷つける。ブラシの毛先を軽く歯に当てて振動させるだけで、歯の細菌は落とせます。
もう1つは磨き残し。1本ずつ丁寧に歯の細菌を落とすことが重要です。
思い返せば、私が小学生の頃に指導された歯磨きはローリング法で、「ピカピカになるまでしっかり磨きましょう!」なんて言われたので、子ども心にまじめに取り組んだものです。しかし、大人になって「そんな磨き方だから歯と歯茎の間の汚れが取れないし、歯の表面が削れていますよ」と歯科衛生士から注意を受け、ショックを受けました。
昔の常識が今は非常識ということは珍しくありません。歯磨きについても最新情報にアップデートすることが大事です。

Leave a Comment