「生産能力があるからといって、もうからないことはやらない」
2023年に、『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』という書籍に関連して、トラブルが起こっていました。
この本の主な関係者は3名。
著者:神田桂一、菊池良
編集プロデューサー:石黒謙吾
note(文章や音楽などのコンテンツを発信・収益化できるサービス)で殴り合いのような応酬をしたのは、神田桂一氏と石黒謙吾氏です。
石黒謙吾氏のnoteでは、神田桂一氏の悪口がいろいろと書かれていたので、一部、引用しておきます。
お金については、初版は印税計算ではなく制作費として版元に予算出していて、僕は企画・プロデュース&編集の完パケでやって40万。著者分は60万で出しています。そして、重版がかかったら、制作サイドトータルの10%を著者と按分で設定しています。割合は、どんな本で、著者によって僕がどこまで原稿に対して手間暇かかるかで多少変わりますが、通常は3%。原稿の手直しなどが大きい場合や、構成、編集の比重が大きいケースでは、4%、5%のときもあります。
石黒謙吾氏は、神田桂一氏が締め切りを守らず、それに伴い数多くの作業が発生してひどい目に遭ったとnoteに書いていました。それに対して、神田桂一氏は次のように書いています。
喫茶店で僕が締切を守らないせいで思いあまって泣いたと書かれていますが、僕の記憶では、石黒さんに30万の借金を頼まれて、僕が無視していたら、喫茶店に呼ばれて、おカネが苦しいと一方的な感情を述べられて泣かれたと記憶しています。
編集者が著者の悪口を飲み屋でこぼすのではなく、ネット上に書くということ自体、異常だと思うのですが……
彼らのトラブルについて、山本一郎氏(作家)は以下のようにnoteに書いていました。
ただでさえ紙の本が売れなくなり、電子書籍も広告が行き届かないとビタイチ動かない時代に企画提案で食っていく編集者にとってはまさに冬の時代で、ウェブに流れなかった人(ウェブ系サイトからお声もかからない人を含む)が業界でやっていけなくなっているのも事実です。
上記の「企画提案で食っていく編集者」とは、石黒謙吾氏のことでしょう。「業界でやっていけなくなっている」ために経済的に困窮しているのかもしれません。
書き方に芸があるか、売れる企画を自前で持っている編集者やライターさん以外は存在し続けること自体が厳しくなっています。
「売れる企画を自前で」という点で、キツイものがあります。そんなにポンポンと生まれるわけではないため、SNSで見つけた若い新人さんに頼ることもあるでしょう。そこでマウントを取りがちなんですね。
編集者が良くやりがちな「この企画は俺のものだ」とか「囲ったライターに仕事を回してやる」みたいな態度
出版社とはけっこういい加減なところで、「印税をごまかしたり、つまんだり」するため、山本一郎氏は次のように注意喚起しています。
入金管理を徹底しろ ――弱小じゃないはずの版元でも、たまに印税をごまかしたり、つまんだりしてくる。掛け算間違えて書類送ってくる確信犯もいる。入った入金と売上冊数はチェックしよう
同業の横のつながりを持とう ――だいたい同じような悩みを抱えている同業同士でつるんでおくと、地雷版元や爆裂ウェブメディア、畜生編集者の情報は誰かしら知っている。依頼されるときや企画を持ち込むときは、あの人は大丈夫かと聞いておくのも手
何より本業は大事に持ちつつ余技で書き続けることをお薦めします。
アマゾンのページに掲載されている石黒謙吾氏のプロフィールは、以下のとおり。大量の書名が羅列されていました。
石黒謙吾 (いしぐろ・けんご)著述家・編集者・分類王。1961年金沢市生まれ。著書は、映画化されたベストセラー『盲導犬クイールの一生』、さまざまな図表を駆使し森羅万象を構造オチの笑いとしてチャート化する“分類王”の『図解でユカイ』ほか、『分類脳で地アタマが良くなる』『2択思考』『エア新書』『ダジャレ ヌーヴォー』『カジュアル心理学』『短編集 犬がいたから』『CQ判定 常識力テスト』『ベルギービール大全』『ナベツネだもの』など幅広いジャンルで多数。プロデュース・編集した書籍も、シリーズ累計15万部超えの『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』(神田桂一、菊池良)、同じく15万部超え『ジワジワ来る○○』(片岡K)のシリーズ、『負け美女』(犬山紙子)、『ナガオカケンメイの考え』(ナガオカケンメイ)のシリーズ、『ザ・マン盆栽』『餃子の創り方』『飛行機の乗り方』(すべてパラダイス山元)、『ネコの吸い方』(坂本美雨)、『人が集まる「つなぎ場」のつくり方』(ナカムラクニオ)、『凄い!ジオラマ』(情景師アラーキー)、『昭和遺産へ、巡礼1703景』(平山雄)、『シベリア抑留 〜絵画が記録した命と尊厳』(勇崎作衛)、『女の節目は両A面』(岡田育)、『くさらないイケメン図鑑』(吉田潮)、『念力恋愛』(笹公人、絵・水野しず)、『教養としてのラーメン』(青木健)、『エガちゃんねる革命』(藤野義明)、『親父の納棺』(柳瀬博一、絵・日暮えむ)、『56歳で初めて父に、45歳で初めて母になりました』(中本裕己)、『腐ったテレビに誰がした?』(鎮目博道)など280冊以上。
280冊以上の印税が微々たるものなので、30万の借金を申し込んだのでしょうか?
この情報はあくまでも神田桂一氏によるものですが、もし違っていたら石黒謙吾氏は「名誉毀損だ!」と烈火のごとく怒るでしょうから、まあ、そうなのでしょう。
数日後、顛末はどうなったのかなと思い、ネット検索。なんと、石黒謙吾氏のnoteが消えていました。こうなると、やはり神田桂一氏の主張に信憑性があったと思いますよね。
縮小していく業界では、さまざまなトラブルが起こりがちです。
「売上16.8%減「オワコン雑誌」業界を経営の神様・稲盛和夫が立て直すなら…」という記事では、「あと5年で週刊誌は消滅する」と断言されていました。
週刊誌だけでなく、雑誌全般、そして書籍も、売り上げが縮小している中、どこに活路を見出せばいいのでしょうか。ネットは厳しいと筆者は述べています。
ネットニュースの利用者、広告への出稿は共に増えているものの、メディア全体がオンラインニュースに力を入れているがために、市場は供給過多、飽和状態にある。
以前だったら「連載をまとめて書籍化すればもうかる」という手もあったが、今は肝心の書籍市場もボロボロである。連載などはばっさり切り捨てるということも選択肢にあっていい。そこでできた余力で、紙を買う読者の本当のニーズを見極めていく。「うちの雑誌とはかくあるべき」というのは読者を無視した作り手側の発想でしかない。
記事の中で響いたのは、この一文。
「生産能力があるからといって、もうからないことはやらない」という1点である。
同じようなことが、『お金の真理』(著/与沢 翼 宝島社)にも書かれていました。出版不況のときは、出版業以外に富(お金)が移動したと考えるわけです。
「お金の総量はたいして変わらない」
業績が下がる会社があれば、逆に業績が上がる会社もあるわけです。
お金は最も儲かるところに移動しているだけです。その総量はさして変わっていません。ですから、どこかでお金が減るときはお金を増やすチャンスにもなります。
過去の古い手法や分野、考え方に固執すると生き残れないことが多いです。未来は必ずしも過去の延長にはありません。
特に印象深かったのは、「稼ぎ方」。
収入というのは、いろいろなところから広く浅く得ることが、長く成功を維持する秘訣です。
一つの収入に固執し、貪欲になるほど、ステークホルダーに対して自己の取り分をより多く要求するような事態にも陥ります。そうすれば、利害関係者からは面倒なヤツだと思われることになり、結果として取引は縮小していくものです。逆にこちらの収入が分散されているかぎり、自分の取り分はある程度のところで満足できるため、局所的なその取引のみから、より多くを得ようとする必要はないため、結果として、「気持ちのいい取り引き」だと相手先から感じてもらうことになっていきます。


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