今や社会問題の産後うつ 妊産婦への配慮に加え大切な体のケア
現代の日本で、「産後うつ病」はもはや社会問題の一つといえます。近年では、産後うつ病に関する調査報告がニュースでたびたび取り上げられてきました。
社会的に妊産婦が気遣われるのは、もちろん望ましいこと。しかし、心のケアばかりに焦点が当たっていないでしょうか。「夫の配慮が足りないせいで、妻が産後うつ病を発症している」といった誤解が生まれ、夫が追い詰められていたら残念でなりません。
私が取材した中では、夫をはじめ家族が昼夜問わずに気遣い、見守っていても、産後うつ病を発症してしまった例は少なくありません。では、産後うつ病を防ぐためにどのようなケアが必要なのでしょうか。
社会的に妊産婦が気遣われるのは、もちろん望ましいこと。しかし、心のケアばかりに焦点が当たっていないでしょうか。「夫の配慮が足りないせいで、妻が産後うつ病を発症している」といった誤解が生まれ、夫が追い詰められていたら残念でなりません。
私が取材した中では、夫をはじめ家族が昼夜問わずに気遣い、見守っていても、産後うつ病を発症してしまった例は少なくありません。では、産後うつ病を防ぐためにどのようなケアが必要なのでしょうか。
大きな鍵となるのが、女性ホルモンの変化なのです。
「心理的なDV」を
産後うつ病は、産後数カ月以内に起こる精神症状です。「赤ちゃんのことを、私はちっともかわいいと感じられない」「母乳が出なくてミルクに頼りっぱなし。ダメな私は生きていても仕方がない」などの不安定な気分や絶望感などが2週間以上も続き、悪化すると離婚といった「産後クライシス」や乳児虐待、自殺にもつながります。
政府は、産後うつ病などによる妊産婦自殺の対策に乗り出すことになりました。
産後うつ病への注目が集まる中、2017年4月24日には「<妊娠中被害>心理的なDV、産後うつ5倍 東京医歯大調査」というニュースが配信されました。
https://mainichi.jp/articles/20170424/k00/00m/040/125000c
東京医科歯科大学の藤原武男教授らは、2012年に愛知県で生後3、4カ月健診を受けた母親を対象に調査票を配布。
その集計結果は次のとおりでした。
○妊娠中にパートナーから侮辱されたり、ののしられたりしたことが「よくあった」と答えた人は「全くなかった」人と比べ、うつ病の疑いが4.85倍高かった
○妊娠中にパートナーからけがをするほどたたかれたり殴られたりしたことが「よくあった」「時々あった」と答えた人は「全くなかった」人に比べうつ病の疑いが7.05倍高かった
こうしたアンケート調査で注意したいのは、母親が主観で回答している点です。妊娠前と妊娠中では女性ホルモンの分泌が大きく異なるため、体だけでなく気持ちが不安定になりやすいものです。
そのため、妊娠前は単なる軽口や冗談で済ませられた夫婦間の会話が、妊娠中には言葉の暴力を浴びせられたととらえて、ひどく傷つく可能性が高いのです。
逆に、妊娠することで攻撃的になるケースもある。女性がイライラして夫に絶えず攻撃した結果、夫は怒りを爆発させてしまうことも考えられるでしょう。
以上のことから、産後うつ病を夫婦・家族関係だけにとどめず、女性ホルモンの変化に着目して予防・改善することをぜひとも検討してほしいと思います。
生活スタイルを含め
産後うつ病は、洋の東西を問わず、古くから確認されていた症状です。紀元前4世紀にヒポクラテスが書いた『流行病』第3巻、そして紀元後200年頃に書かれたとされる中国の古典医学書『金匱要略』に産後うつ病の記述があります。
日本では昔から「妊娠中や産後は針仕事をするな」「秋なすは嫁に食わすな」と言われてきました。妊産婦は目を酷使したり、体を冷やす食品を食べたりしないようにと警告を促す意味が含まれています。女性ホルモンの分泌量を計測することはできなくても、妊娠中と産後の女性は心身が大きく変動するから生活習慣も変える必要があると、人々は経験的にわかっていたのです。
現代の妊産婦はどうでしょうか。スマートフォンで長時間にわたって目を酷使したり、ファッションを気にして薄着で過ごしたり、極端な食事制限をしたりしていれば、生活習慣をちょっと変えてみることも必要かもしれません。実際、東洋医学を勉強した助産師が、妊娠中から産後までの生活術を詳しくアドバイスしているケースもあります。こうした専門家の声もメディアで取り上げてほしいと思います。産後うつ病を防ぎ、治すには、夫など身近な人間に責任を負わせるよりも、生活スタイルを含め女性の体を整えていくことが大切かもしれないからです。
「心理的なDV」を
どうとらえるのか
産後うつ病は、産後数カ月以内に起こる精神症状です。「赤ちゃんのことを、私はちっともかわいいと感じられない」「母乳が出なくてミルクに頼りっぱなし。ダメな私は生きていても仕方がない」などの不安定な気分や絶望感などが2週間以上も続き、悪化すると離婚といった「産後クライシス」や乳児虐待、自殺にもつながります。
政府は、産後うつ病などによる妊産婦自殺の対策に乗り出すことになりました。
産後うつ病への注目が集まる中、2017年4月24日には「<妊娠中被害>心理的なDV、産後うつ5倍 東京医歯大調査」というニュースが配信されました。
https://mainichi.jp/articles/20170424/k00/00m/040/125000c
東京医科歯科大学の藤原武男教授らは、2012年に愛知県で生後3、4カ月健診を受けた母親を対象に調査票を配布。
その集計結果は次のとおりでした。
○妊娠中にパートナーから侮辱されたり、ののしられたりしたことが「よくあった」と答えた人は「全くなかった」人と比べ、うつ病の疑いが4.85倍高かった
○妊娠中にパートナーからけがをするほどたたかれたり殴られたりしたことが「よくあった」「時々あった」と答えた人は「全くなかった」人に比べうつ病の疑いが7.05倍高かった
こうしたアンケート調査で注意したいのは、母親が主観で回答している点です。妊娠前と妊娠中では女性ホルモンの分泌が大きく異なるため、体だけでなく気持ちが不安定になりやすいものです。
そのため、妊娠前は単なる軽口や冗談で済ませられた夫婦間の会話が、妊娠中には言葉の暴力を浴びせられたととらえて、ひどく傷つく可能性が高いのです。
逆に、妊娠することで攻撃的になるケースもある。女性がイライラして夫に絶えず攻撃した結果、夫は怒りを爆発させてしまうことも考えられるでしょう。
以上のことから、産後うつ病を夫婦・家族関係だけにとどめず、女性ホルモンの変化に着目して予防・改善することをぜひとも検討してほしいと思います。
生活スタイルを含め
女性の体を整えることが大切
産後うつ病は、洋の東西を問わず、古くから確認されていた症状です。紀元前4世紀にヒポクラテスが書いた『流行病』第3巻、そして紀元後200年頃に書かれたとされる中国の古典医学書『金匱要略』に産後うつ病の記述があります。
日本では昔から「妊娠中や産後は針仕事をするな」「秋なすは嫁に食わすな」と言われてきました。妊産婦は目を酷使したり、体を冷やす食品を食べたりしないようにと警告を促す意味が含まれています。女性ホルモンの分泌量を計測することはできなくても、妊娠中と産後の女性は心身が大きく変動するから生活習慣も変える必要があると、人々は経験的にわかっていたのです。
現代の妊産婦はどうでしょうか。スマートフォンで長時間にわたって目を酷使したり、ファッションを気にして薄着で過ごしたり、極端な食事制限をしたりしていれば、生活習慣をちょっと変えてみることも必要かもしれません。実際、東洋医学を勉強した助産師が、妊娠中から産後までの生活術を詳しくアドバイスしているケースもあります。こうした専門家の声もメディアで取り上げてほしいと思います。産後うつ病を防ぎ、治すには、夫など身近な人間に責任を負わせるよりも、生活スタイルを含め女性の体を整えていくことが大切かもしれないからです。
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