【ほったらかし投資勉強会】暗号資産(仮想通貨)の投資でマルチ商法的な勧誘が広まるワケ

 最近、暗号資産(仮想通貨)に関する話題が知人との間で出たので、改めて調べてみました。
 結論としては、技術としては素晴らしく、送金の手数料などが軽減できるメリットを再確認したものの、そうした目的以外で暗号資産を持つのは、機会にお金をかける「投機」に相当するのではないかと。

 そんな結論に至るまでの長い道のり、それから、暗号資産の詐欺事件の内容をまとめました。

 暗号資産については、機会を見て売買を繰り返さない限り、もうからないでしょう。
 そして、暗号資産自体が多くの人にとって「よくわからないが、もうかりそうなもの(もうかると報じられているもの)」で情報商材と非常によく似ているため、「誰でも簡単にもうけられる」が合言葉のマルチ商法的な勧誘と親和性が高いのだと考えられます。
 

そもそも通貨とは何なのか


 通貨(お金)には価値の保存、交換手段、価値の尺度という3つの重要な機能があります。

価値の保存

 お金を銀行に預けたり金庫に保管したりすることで、価値を蓄えておくことができます。

交換手段

 物々交換では、米を持っている人が塩を欲しがっても、塩を持っている人が塩をいらなければ交換できません。お金を使えば、米→お金→塩、塩→お金→肉という形で、交換しやすくなります。

価値の尺度

 値段(価格、料金)は、世の中の商品やサービスの価値を示す目安になっています。スーパーの牛肉でも、100グラム当たり200円のものと1000円のものでは、高価な牛肉のほうが価値が高いと見なされがちです。お金は、物やサービスの価値を測る基準となっています。

 お金の3つの機能によって、経済活動が発達してきました。


デジタル通貨と現金との違い

 デジタル通貨は、デジタルデータとして存在するお金です。紙幣や貨幣といった現金とは違う、3つの大きな特徴があります。

即時性

効率性

追跡可能性

 現金は匿名性を持つために、麻薬取引、誘拐(身代金)、人身売買、偽札、脱税、マネーロンダリングなどに用いられることがあります。それに対して、デジタル通貨は取引情報(いつ、誰から、誰に、いくらの金額が移動したか)を記録できるため、犯罪者の追跡が可能になります。



 デジタル通貨には、民間・団体が発行する暗号資産(仮想通貨)と、国や中央銀行が発行する中央銀行デジタル通貨(CBDC)の2種類があります。

 暗号資産は、ブロックチェーン技術を用いて、国や中央銀行の信用に依存せずに運営される電子的な通貨です。ブロックチェーンとは、暗号資産の基本となる技術のことで、一つ一つのブロックに取引データが格納されています。

「中央銀行デジタル通貨とは」より

 中央銀行デジタル通貨は紙幣や硬貨ではなく、デジタルデータとして存在します。法定通貨として発行されるため、法定通貨と同じ単位(円や米ドルなど)・価値を持つため、安全性と信頼性が確保されます。

暗号資産の取引とは


 2008年にサトシ・ナカモトが決済手段として開発したのが最初の暗号資産であるビットコインですが、株式やFXなどと同じように、暗号資金は取引・投資が行われています。
 暗号資産は、国や中央銀行によって価値が保証されていません。そのため、需給関係によって、法定通貨や他の暗号資産と交換する際のレートが大きく変化します。

 暗号資産の投資には、販売所で売買する方法と、利用者同士が取引をする方法があります。

販売所での売買

 販売所では、金やプラチナを販売している業者から購入するときと同じように、暗号資産を購入します。
 メリットは、すぐに購入ができること。加えて、取引所より大きい数量で注文ができて、暗号資産の取り扱いが多いことです。
 デメリットは、「買値」と「売値」の差があること。この差をスプレッドといいます。スプレッドについては、取引手数料と考えていいでしょう。
 また、価格を決めて注文ができないので、購入価格が変動します。

取引所での売買

 取引所では、証券取引所のように、暗号資産を売りたい人・買いたい人という利用者同士で取引します。
 市場取引であるため適正価格、自分で決めた価格で売買でき、スプレッドがかかりません。
 また、取引所では、レバレッジ取引も取り扱っています。レバレッジとは、少ない資金で大きな金額の取引をすることです。
 それから、アービトラージ(裁定取引)という取引手法が可能です。アービトラージとは、例えばビットコインという暗号資産は、さまざまな取引所で扱われていて、取引所ごとに取引価格に差があります。この価格差を利用して、安い取引所で買って高い取引所で売るという形で、利ざやを取るのです。
 保有している暗号資産を取引所に貸して貸借料を得る「レンディング(貸暗号資産)」と呼ばれるもうけ方もあります。
 レンディング中は、自由な売買ができなくなります。そのため、期間に相場が下落した場合、損失が出るリスクがあります。拘束の強い定期預金のような印象。
 レンディングと似ているステーキングでは、自由に売却ができます。保有してネットワークに貢献するとのこと。普通預金のような印象。

 暗号資産は、販売所や取引所で取得する以外に、マイニング(採掘)でも取得できます。金を採掘するように、計算能力を提供して暗号資産を生成することもマイニングといいます。
 暗号資産を生成するためには、ブロックチェーンの新たなブロックを生成する必要があります。マイニングをするためには、計算能力の高いパソコンが必要となります。また、マイニングの作業には大量の電力が必要となるために、電気代がかかります。

 イールドファーミング(流動性ファーミング)といって、分散型金融(DeFi、銀行などの特定の管理者なしに、ユーザー間で直接貸付、決済、取引などを行う仕組み)プロトコルに暗号資産を預け入れ、流動性を提供することで報酬を得る方法もあります。

 そして暗号資産が無料で配布されるエアドロップというイベントがあります。暗号資産の発行元や取引所が、宣伝を目的として、条件を満たしたユーザーに暗号資産を配布するのです。

 以上のことから、暗号資産の報酬は、保有やネットワークへの貢献の対価といえます。
 ただ、取引については既存のFXや金取引とさほど変わりません。また、「ほったらかし投資」のように「ほったらかし」にはできません。

 問題なのは、詐欺が横行していること。
 暗号資産投資の詐欺事件では、自殺した被害者の母親が、勧誘者など3名を提訴したと報道されていました。

 暗号資産投資の詐欺事件でも行われていたのが、ポンジスキーム。「結局、古典的なポンジスキームなのか……」という印象です、

 上記の事件に関連するネット情報を集めたところ、アムウェイのマルチ商法のやり方で、暗号資産投資をSNSやセミナーで呼びかけ、それが若者にも蔓延していたのでした。
 


 暗号資産(仮想通貨)の取引に投資すれば高配当が得られると説明し、無登録で出資を募ったとして、警視庁は男女7人を金融商品取引法違反(無登録営業)容疑で逮捕し、10日発表した。2019年以降に「ジュビリーエース」などの金融商品をうたい、全国でセミナーを開いて集客したという。同庁は、男らが出資金として650億円相当の暗号資産を集めたことを確認したという。

 逮捕されたのは、投資会社役員玉井暁(53)=東京都世田谷区=、無職宮崎由季子(31)=同中央区=、職業不詳高橋智道(59)=同中央区=、職業不詳松永風菜(29)=同渋谷区=、会社員谷譲(62)=同杉並区=、無職中里明(40)=世田谷区=、会社役員宮城良太(53)=同千代田区=の7容疑者。

出資者には「暗号資産の取引所の価格差を把握し、売買できるシステムを作った。投資すれば月利20%の配当を得られる」などと説明したという。7人は「ジュビリーエース」「ジェンコ」といった名前でセミナーを繰り返していたが、国内で法人を設立した形跡はなかった。

札束、高級ブランド…画像に惑わされ出資 友人4人、巻き込んだ末に

 「玉井暁」で検索すると、以下がヒット。
 まずフェイスブックでの「玉井暁」ページには、以下の写真がアップされていました。

 セミナー会場での記念写真でしょうか。皆さん、指で「1」を示していますが、これは「玉井暁」のメンタルセミナーでは「人生一度きり」と熱弁(?)されているからのようです。
 セミナーは熱狂していたとの情報も。

その怪しいセミナーを冷やかしてきたことがあるんだけど、「玉井暁」は過去にアムウェイだのアサイージュースだのMLMを手掛けて大成功したと豪語してた。50人位の受講者は熱心に話を聞き入り、熱狂していくので、疑問を挟む空気もなく、ああ、催眠商法ってこういうことなんだと理解したのを覚えてます

アムウェイ時代。玉井暁の師匠でもある
宮庄隆士は、またポンジースキーム始めました。冨岡剛とも組んでビットサンズやってました #カジノ #ゲーム #ポンジースキーム #宮庄隆士 #玉井暁

 「『モナヴィージャパン』というアサイージュースを販売するネットワークビジネスを手掛けて大成功していました。ド派手な金ピカのスーツを着て、流暢(りゅうちょう)に成功体験を語る。トップセールスとして事業の説明会によく登壇していましたが、『この人の言う通りなら儲かるかも』と思わせる演説力があった。言うなれば”マルチのカリスマ”。当時から玉井さんを慕う『玉井グループ』なるものがあって、年収は、数千万はあったと思います」

被害総額650億円…「仮想通貨男」にダマされる人が続出したワケ
玉井暁容疑者 金融商品取引法違反容疑で逮捕 「月利20%」を謳って出資者を募り、集めに集めたカネは650億円!
ほのかさんが出資するきっかけになったのは、大学の同級生だった友人のインスタグラムを見たことでした。

それは「投資に興味がある人?」というアンケートで、ほのかさんが興味を示すとその同級生から“高校の同級生”だという男を紹介されます。

投資先とされたのは、海外に拠点を置いているという会社で、「AIを駆使して暗号資産を運用するので、投資すれば多額の配当が出る」とうたっていた事業です。

ほのかさんのノートには、市場で安く買った暗号資産をほかの市場で高く売って利益を出す「アービトラージ(裁定取引)」など、専門的な用語が書かれていて、言葉巧みに引き込まれていった様子がうかがえます。

そして娘は命を絶った ~“暗号資産”めぐる事件の果てに

■主な参考資料
デジタル通貨とは?仮想通貨との違いやメリット・デメリット、デジタル地域通貨をわかりやすく解説

金と暗号資産:投資なのか?

娘を自殺に追いやった責任を 母親が投資勧誘者に賠償求め提訴

大阪 投資詐欺で川上穂野香さん(22)を自殺に追い込んだ殺人鬼・山根雄太、小椋巧の悪行顔の巻


※2022年に報じられた、暗号資産関連のニュース
 FTXの破綻、暗号資産では最大 債権者は10万人超、日本でも事業
 暗号資産(仮想通貨)交換業大手のFTXトレーディングが11日、同社や関連の計約130社が米連邦破産法11条(チャプター11、日本の民事再生法に相当)の適用を申請したと発表した。
https://news.yahoo.co.jp/articles/42f4bcc55dfaa5cde5049eff0f6c5ad53e38d6f3


 「NFT(非代替性トークン)」とは、「ブロックチェーン(分散型台帳)」と呼ばれる暗号資産(仮想通貨)の基盤技術を使って複製を困難にしたデジタル資産のことです。
 また、ブロックチェーンは電子的な台帳で、ネットワーク上にある複数の端末を接続し、暗号技術で取引の記録を分散的に処理・記録します。ブロックと呼ばれる単位でデータを管理し、それを鎖のように連結します。また、日本ブロックチェーン協会では「電子署名とハッシュポインタを使用し改ざん検出が容易なデータ構造を持ち、且つ、当該データをネットワーク上に分散する多数のノードに保持させることで、高可用性およびデータ同一性等を実現する技術」と説明されています(ノードは、コンピューター、ルータ、ハブ、サーバ、プリンタ、IP電話機、スマートフォン、タブレットなど、ネットワークに接続された機器)。

 「トークン(token)」には様々な意味があるが、近年は特に「ブロックチェーン技術を利用して発行された仮想通貨」や「NFT(非代替性トークン)」などを指して使われることが多い。そもそも”token”は「象徴」や「記号」を意味する英単語だが、そこから転じて、デジタル上でなんらかの価値を象徴するもの(価値を表す記号)として用いられている。

 ここ数年内に登場し、急速に注目を集めているのがブロックチェーン技術を使うNFTと呼ばれるデジタル資産だ。NFTは「Non-Fungible Tokens」の略で、「世界に一つ」であることを証明できる。これを活用することで、デジタル画像や動画などがデジタル資産として取引できるという。 

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