超文系人間がちょっと細かく調べてみた その4 「電気」ってなんだろう?

 電気は、私たちの体の中でも発生しています。そして、「心臓」について考えてみよう その1 心電図 でも触れていますが、電気や化学物質(神経伝達物質)が、臓器などで多くの情報を伝達しているのです。

〇神経系での情報伝達:各器官まで伸びた神経細胞が、電気的な信号で情報を伝える
〇内分泌系での情報伝達:ホルモンが、体液に乗って特定の細胞に運ばれ、情報を伝える


  電気の歴史をさかのぼると、古代ギリシャの哲学者であるタレス(紀元前624~紀元前546年頃)の名前が出てきます。「万物の根源は水である」という言葉が有名なタレス。

wikipediaより

 タレスは、琥珀を布でこすると、ホコリなどが琥珀にくっつくことに気づきました。これが電気の発見で、電気を表す英単語 electricity はギリシャ語の琥珀、ηλεκτρον (elektron)が由来とのこと。

樹脂の化石である琥珀

 ただ、タレスはホコリなどが琥珀に引き寄せられる力を磁力と考えていたようです。

 磁力については、当時、すでに知られていたのでしょう。紀元前3000年頃、古代ギリシャの遊牧民が、靴の金属の部分や、杖の先の鉄で出来た部分にくっつく石、つまり磁石を発見していたからです。

 タレスが電気(彼の頭の中では磁力)を発見した後、電気の研究のためにおそらく、多くの研究者が琥珀を布でこすり、バチッ、ビリッという痛みにも悩まされていたに違いありません。


 タレスが生きた時代から2000年も後に、イギリス王立医学学校の教授でエリザベス一世の主治医であったウィリアム・ギルバート(1540~1603年)が、「琥珀にホコリがくっつくのは、磁力のせいではない」と発見しました。

wikipediaより
 ウィリアム・ギルバートは磁石についての体系的な研究を進める中、ダイヤモンドやガラス、樹脂、宝石など、琥珀以外の物をこすっても軽い物が引き付けられることを発見。「静電気」が働いていることを明確にしたのです。

 物をくっつける、言い換えると物を動かす現象が、電気とも言えそうです。バチッ、ビリッ、ペタッという現象や引き起こしている力が、電気と呼ばれていたというわけです。


 電気には2つの物を引きつけ合う性質と、反発させ合う性質があります。布でこすった琥珀にホコリがくっつく現象は引きつけ合う性質、髪の毛をブラッシングすると逆立ったりする現象は反発させ合う性質が関係しています。


 こうした現象を研究するうちに、プラスとマイナスという2種類の「電荷」を設定すると、電気について説明しやすいとわかったようです。
 「プラスとマイナスはひきつけ合うことにしておこう」「プラスとプラス、マイナスとマイナスは反発し合うことにしておこう」というように、プラスとマイナスは便宜的な考え方ということなんですね。

〇ひきつけ合う力=引力
〇反発し合う(互いにはね返す)力=斥力(せきりょく)


 電気の研究に関する歴史に話を戻しましょう。

 1746年に、オランダの科学者であるピーテル・ファン・ミュッセンブルーク(ピーター・ヴァン・マッシェンブレーケ)が、「ライデン瓶」を発明しました。「ライデン」は、ミュッセンブルークが教員として在籍していた大学の名称です。

wikipediaより

 それまでは、摩擦によって静電気を作る「静電発電機」で、電気の研究が行われていました。

 物をこすったりして静電気は発生させられるものの、すぐに失われていきます。この静電気をためておく器具が、ライデン瓶です。ガラス瓶を水で満たして、真鍮の棒を入れると、電気が保たれることをミュッセンブルークたちが発見したのです。

 このライデン瓶は、アメリカの政治家で物理学者でもあるベンジャミン・フランクリンが、1752年に嵐の中で凧揚げを行い、雷が電気であることを明らかした実験にも用いられています。この実験については、「ウソじゃないの」といった話もありますが、さておき。

wikipediaより

 電池を発明したのは、イタリアの物理学者であるアレッサンドロ・ボルタ

 彼が登場する以前に、プラスとマイナスという2種類の「電荷」があると考えられるようになりました。ボルタは「電位」と電荷を分けて研究する手段を確立。

 おおざっぱに説明すると、水は高いところから低いところに流れますよね? 高低差が大きければ大きいほど、勢いよく流れます。
 このとき、水がある位置が電位に、高低差が電圧に当たります。

http://www.max.hi-ho.ne.jp/lylle/denryu5.htmlより


 そんなわけで、電圧の単位である「ボルト」の由来はボルタです。

wikipediaより

 1800年にボルタが発明した電池のおかげで、「一定の電気が持続して流れ続ける」ということが可能になりました。そして、電池の中を流れているものを「電流」としたのですが、電流といっても具体的に何が流れているのかはわかっていませんでした。


 フランスの物理学者・土木技術者であるシャルル・ド・クーロンは、軍隊にいたときに、毛髪や糸、針金のねじれについて研究しました。このときに使っていたのが、ねじり秤(ばかり)。

 ねじり秤には、さまざまなタイプがあるとのこと。

ねじり秤 ねじりばかり

金属または溶融石英などの弾性体の細線のねじり応力を利用して微小質量を測定する質量計。トーションバランスtorsion balanceともよばれる。いろいろな構造があるが、基本形は水平に張った弾性細線(ワイヤーまたはリボン)の中央部にこれと直交する形で水平にてこを取り付け、その一端の鉤(かぎ)に品物をつるすもので、品物の重量に比例したねじりモーメントが弾性細線に作用する。この結果生じたねじり変形の角度を指針や光てこなどを用いて読み取ったり、またはてこがつねに水平を保つように弾性細線の一端に逆向きのねじり回転を与え、その角度から質量の大きさを読み取る。高感度が最大の特徴であり、1マイクログラム程度の感量が得られる。微量分析、繊維の計量などに用いられる。

https://kotobank.jp/word/%E3%81%AD%E3%81%98%E3%82%8A%E7%A7%A4-111254

 クーロンはねじり秤を自作して、1785年に「クーロンの法則」を発見しました。なお、電池はまだ発明されていなかったため、静電気で研究しています。

〇クーロンの法則:2つの点電荷の間に働く力(引力、斥力)はそれぞれの電荷量の積に比例し、距離の2乗に反比例する

クーロンのねじり秤(旧制新潟高等学校の物理関係の資料より)


  デンマークの物理学者であるハンス・クリスティアン・エルステッドは、コペンハーゲン大学の物理学の教授だった1820年、講義中に実験器具をいじっていました。そして、電池のスイッチを入れたり切ったりすると、電流の流れている電線の近くにあった方位磁針が、北でない方角を指すことに気づきました(ちなみに、方位磁針の原型は3世紀頃〈諸説あり〉の中国で使われていた「指南魚」で、イスラム商人によってヨーロッパに伝わったとのこと)。

  この発見を耳にしたフランスの物理学者の アンドレ=マリ・アンペールが研究を開始。方位磁針の振れる方向が電流の流れている方向に関係することを発見し、エルステッドの発見から1週間後に、論文を発表しました。
 ちなみに、電流のSI単位のアンペアの由来は、アンペールです。

 そして、こうした実験から「電流はプラスの電極(正極)から出て、マイナスの電極(負極)に流れる」と決められたのです。とりあえず、です。

 その後、1897年に、イギリスの物理学者であるジョセフ・ジョン・トムソンが、「陰極線」はマイナスの電気を持った粒子の流れであることを発見しました。後年、この粒子は電子と呼ばれるようになったのです。

wikipediaより

 陰極線は、ほぼ真空のガラス管内でマイナス極からプラス極に走ります。


 この発見のおかげで、「電流とは電子の流れである」とわかったのです。

 原子の中心にあるのが「原子核」で、その中に「陽子」「中性子」があります。そして原子核の周囲を「電子」がぐるぐると回っています。

○陽子 +を帯びた粒
○中性子 +でも-でもない粒
○電子 -を帯びた粒

 マイナスの電荷の電子は、プラスに引き寄せられるので、電子はマイナスからプラスに流れます。

 だからといって、ここに来て「電流はプラスからマイナスに流れる」という取り決めを撤廃することはできなかったのですね。いろいろと、大きく、科学者たちがもめたに違いありません。

 ですから、学校の教科書では「電流はプラスからマイナスに流れる」となっているのです。歴史を振り返ると仕方がなかったのだと。

 1903年に、トムソンは、原子の構造をレーズン・パン (ぶどうパン) のようなものだと発表(トムソンの原子模型)。 パンの中に干しブドウが散らばっているという構造です。

九州大学 2-4: トムソンの原子模型より

 同じく1903年、物理学者である長岡半太郎は、原子の構造を土星のようなものだと発表しました。

中部原子力懇談会 世界で初めて土星型原子モデルを提唱より

 1911年に、物理学者のアーネスト・ラザフォードは、原子核の存在を証明しました。

中部原子力懇談会 世界で初めて土星型原子モデルを提唱より

 しかし、原子核の周りを電子が回る(円形運動)と 、電子は電磁波を放射してエネルギーを失って原子核に落ち込み原子は崩壊してしまいます。 

 1913年に、ニールス・ボーアは、ラザフォードの原子模型で発生する矛盾を解消する、新たな原子模型を発表しました。
北海道大学 第9章 原子とボーアの原子モデルより

 しかし、物理学者のルイ・ド・ブロイは、電子が負の電荷をもった粒子の性質だけでなく、波としての性質を持っていると考え、それが実験で明らかにされました。

 電子は粒子であり、波であるということを説明するために、物理学者のエルヴィン・シュレーディンガーが由来のシュレーディンガー方程式が使われています。超文系人間の頭ではついていけなくなったので、「国立科学博物館で学ぶ物理学 <シュレーディンガー方程式/原子の電子雲>」を参照してください。
wikipediaより

 長くなりましたが、電気とは電子が移動すること。電子については、粒子であり、波でもあります。


■参考資料

電荷とはなんですか?またそれが電子のようにマイナスになるとはどういうことですか?https://jp.quora.com/%E9%9B%BB%E8%8D%B7%E3%81%A8%E3%81%AF%E3%81%AA%E3%82%93%E3%81%A7%E3%81%99%E3%81%8B-%E3%81%BE%E3%81%9F%E3%81%9D%E3%82%8C%E3%81%8C%E9%9B%BB%E5%AD%90%E3%81%AE%E3%82%88%E3%81%86%E3%81%AB%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%83%8A

電気と電子の違い
http://lance3.net/chigai/z0425.html

原子の成り立ちとイオン
http://www.kogaku-pub.com/product/pdf/10005904.pdf

微生物が互いに電子をやり取りする未知の「電気共生」を発見
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20120605/index.html

イオンとプラズマの違い
https://hegtel.com/ion-purazuma.html

電流と電子はなぜ向きが逆なのか?
https://hegtel.com/nagare-gyaku.html



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