傷は消毒すると治りにくくなる! あの痛みは破壊される細胞の悲鳴
子どもの頃、転んでケガをするとオキシドールを塗られました。オキシドールが傷に染みる痛さといったら、傷ができたときの比ではありません。シュワシュワと出てくる泡を見ながら、「これで傷が治るのだから」と激痛を我慢していたものです。
このような傷の治療法は、過去の遺物といってもいいでしょう。消毒が、むしろ傷の治りを悪くさせることもわかってきているのです。
ところが、学校の保健室では相変わらず、子どものすり傷に消毒薬が使われていることがあります。傷を水道水で洗うだけだと、「子どもがケガをしたのに、学校では消毒もしてくれないのか」と保護者から苦情が入ることもあるようです。「これまで消毒薬を使って傷が治っているのだから、やめる必要はない」という意見も強いようです。
ケガに消毒薬を使うか使わないか。あなたはどちら派ですか?
消毒薬が
「上皮細胞」を破壊する
まずは、オキシドールなどの消毒薬を使ったときに生じる痛みについて、検討しましょう。この痛みは、オキシドールによって私たちの細胞が傷つけられていることで生じているます。いわば「細胞の悲鳴」なのです。
オキシドールは「過酸化水素(H2O2)」の水溶液です。オキシドールを傷口に塗ると「活性酸素」が発生し、傷に付着している細菌を死滅させます。
問題は、活性酸素が細菌だけでなく、私たちの細胞にもダメージを与えること。
活性酸素についてはすでにご存じの方も多いでしょうが、がんや老化の原因物質とされています。その理由は、活性酸素は反応性が高く、周囲にあるタンパク質や脂質、糖質などを酸化するからです。例えば皮膚が大量の紫外線を浴びると、活性酸素が発生します。こうして皮膚の脂質が酸化されると、シミが発生しやすくなります。また、活性酸素が細胞に障害を与え続ければ、皮膚がんのリスクが高まります。
そもそも「痛み」とは、私たちの体の防衛反応です。「それ以上やめて!」と体が危険を知らせているわけなので、強い痛みを引き起こす行為は逆効果でしょう。
「これまで消毒薬を使って傷が治っている」という意見もありますが、傷が治っているのは人間の自然治癒力のおかげ。実際のところは、消毒薬は傷の治りを遅くしています。というのも、皮膚の表面の組織などを形成する「上皮細胞」を消毒薬が破壊するからです。
痛みもなく
早く傷が治る「湿潤療法」
以上のような理屈も大事ですが、「消毒・乾燥・ガーゼ」による治療とは真逆の「湿潤療法(モイストヒーリング、ラップ療法)」をまずは試してほしいと思います。消毒するときの痛みもなく、早く傷が治ることを実感できるはず。
湿潤療法の大まかなやり方は次のとおりですが、ぜひとも『傷はぜったい消毒するな』(夏井睦、光文社)などの書籍を参照してください。
1 傷口を水道水でよく洗浄する。血液や泥、砂などを丁寧に取り除く。消毒は行わない。
2 傷口をドレッシング材で覆う。一般的なドラッグストアで入手できるドレッシング材として「キズパワーパッド」「ケアリーブ」などがある。
3 ドレッシング材から浸出液が漏れ出したらドレッシング材を外し、水道水で浸出液を洗い流してから、新しいドレッシング材で傷口を覆う。
4 1日1~2回、傷口を水道水で洗い、ドレッシング材を交換する。
5 傷口にうっすらと膜が張ったように見えたら(上皮化)、湿潤療法をやめる。
なお、動物にかまれたり、釘などが突き刺さったり、傷が赤く腫れ上がったりしているときは、深くまで細菌が入り込んでいる危険があるので、必ず受診しましょう。
ケガに消毒薬を使うかどうかは、本人の自由です。ただ、子どもが学校などでケガをしたときに、「消毒もしてくれないのか」と苦情を入れる前に、消毒薬を使わない処置が主流になりつつある現状を理解してほしいと思います。
このような傷の治療法は、過去の遺物といってもいいでしょう。消毒が、むしろ傷の治りを悪くさせることもわかってきているのです。
ところが、学校の保健室では相変わらず、子どものすり傷に消毒薬が使われていることがあります。傷を水道水で洗うだけだと、「子どもがケガをしたのに、学校では消毒もしてくれないのか」と保護者から苦情が入ることもあるようです。「これまで消毒薬を使って傷が治っているのだから、やめる必要はない」という意見も強いようです。
ケガに消毒薬を使うか使わないか。あなたはどちら派ですか?
消毒薬が
「上皮細胞」を破壊する
まずは、オキシドールなどの消毒薬を使ったときに生じる痛みについて、検討しましょう。この痛みは、オキシドールによって私たちの細胞が傷つけられていることで生じているます。いわば「細胞の悲鳴」なのです。
オキシドールは「過酸化水素(H2O2)」の水溶液です。オキシドールを傷口に塗ると「活性酸素」が発生し、傷に付着している細菌を死滅させます。
問題は、活性酸素が細菌だけでなく、私たちの細胞にもダメージを与えること。
活性酸素についてはすでにご存じの方も多いでしょうが、がんや老化の原因物質とされています。その理由は、活性酸素は反応性が高く、周囲にあるタンパク質や脂質、糖質などを酸化するからです。例えば皮膚が大量の紫外線を浴びると、活性酸素が発生します。こうして皮膚の脂質が酸化されると、シミが発生しやすくなります。また、活性酸素が細胞に障害を与え続ければ、皮膚がんのリスクが高まります。
そもそも「痛み」とは、私たちの体の防衛反応です。「それ以上やめて!」と体が危険を知らせているわけなので、強い痛みを引き起こす行為は逆効果でしょう。
「これまで消毒薬を使って傷が治っている」という意見もありますが、傷が治っているのは人間の自然治癒力のおかげ。実際のところは、消毒薬は傷の治りを遅くしています。というのも、皮膚の表面の組織などを形成する「上皮細胞」を消毒薬が破壊するからです。
痛みもなく
早く傷が治る「湿潤療法」
以上のような理屈も大事ですが、「消毒・乾燥・ガーゼ」による治療とは真逆の「湿潤療法(モイストヒーリング、ラップ療法)」をまずは試してほしいと思います。消毒するときの痛みもなく、早く傷が治ることを実感できるはず。
湿潤療法の大まかなやり方は次のとおりですが、ぜひとも『傷はぜったい消毒するな』(夏井睦、光文社)などの書籍を参照してください。
1 傷口を水道水でよく洗浄する。血液や泥、砂などを丁寧に取り除く。消毒は行わない。
2 傷口をドレッシング材で覆う。一般的なドラッグストアで入手できるドレッシング材として「キズパワーパッド」「ケアリーブ」などがある。
3 ドレッシング材から浸出液が漏れ出したらドレッシング材を外し、水道水で浸出液を洗い流してから、新しいドレッシング材で傷口を覆う。
4 1日1~2回、傷口を水道水で洗い、ドレッシング材を交換する。
5 傷口にうっすらと膜が張ったように見えたら(上皮化)、湿潤療法をやめる。
なお、動物にかまれたり、釘などが突き刺さったり、傷が赤く腫れ上がったりしているときは、深くまで細菌が入り込んでいる危険があるので、必ず受診しましょう。
ケガに消毒薬を使うかどうかは、本人の自由です。ただ、子どもが学校などでケガをしたときに、「消毒もしてくれないのか」と苦情を入れる前に、消毒薬を使わない処置が主流になりつつある現状を理解してほしいと思います。
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