母乳が出ようと出まいと、赤ちゃんをかわいく思えようと思えなかろうと、赤ちゃんにはお母さんが必要です
私が知る限り、産後うつで亡くなったお母さんは、夫など周囲の人間が無理解だったり、周囲の人間からほったらかしにされたりしたわけではありません。
ちょっと様子が変だからとご家族が昼夜問わず見守っていたにもかかわらず、目を離したすきにお母さんが突発的な行動を取ってしまったケースもあります。
「お母さんにもっと温かい言葉をかけてあげていれば」「周囲がサポートさえしていれば」というレベルではないと私は思います。
産後うつで悲しいことは、赤ちゃんを取り巻くすべての人が「私が悪い」と自分を責めてしまうこと。
しかし、誰が悪いのでもありません。
お母さんの温かい血が足りないだけ。
ですから、お母さん本人も周りの人も、お母さんの体が温かい血で満たされるように心がければいいのです。
うつっぽいときは、温かい血が足りていません。
赤ちゃんをかわいく思えないのは、全身が栄養不足で疲れ切っているからです。
ただでさえ出産で血を失うのに、産前にかなり食事制限をしたり、悩みやストレスを抱えていたりすると、体は血がさらに欠乏状態になります。
そのために、体に力が入らなくなったり、気力が出なかったり、気持ちがうつうつと晴れなかったり、母乳が出にくくなったりしているわけです。
お母さんの努力が足りないわけではありません。
心がけが悪いわけでもありません。
温かい血が足りていないのです。
冷えているのなら温めればいいし、足りないのなら補えばいいわけです。
ところで、血とは東洋医学の概念で、血管を巡って各臓器に栄養や潤いを与えるエネルギーです。西洋医学の「血液」は、「血」という言葉からつけられたと聞いています。
紀元前に生まれた東洋医学では、人間の体を丹念に観察したり、植物や鉱物を摂取したときにどう反応するかを調べたりして、全身を一つの生命ととらえて病気を治してきました。
うつを含めた産後のトラブルについても古くに把握されているので、生活術や食事法などが考え出されてきたのです。
「産後うつは、体を温かい血で満たして治す」「産後を見据えて妊娠期間を過ごしてください」とお伝えするのも、東洋医学的な観点からです。
産後すぐに、体を温かい血で満たすには、次のような生活を送ってください。
1 スマホやパソコンを使ったり、テレビを見たり、本を読んだりしないこと
目を使うと、肝に蓄えられた血が消費されます。ですから、目を使うのは必要最小限にします。
2 自分も赤ちゃんも毎日ふろに入らないこと
赤ちゃんをふろに入れると、親は体力を消耗します。ですから回数を減らしたほうがいいわけですが、そもそも、毎日ふろに入れないほうが赤ちゃんの皮膚にとって望ましいのです。水に濡れず、お湯に漬からず、タオルでこすらないことで、皮膚のバリア機能が守られるからです。
根拠は『ふろに入らないほうが美肌になる』に長々と書いたので、不安があればお母さん以外の人が読んで、お母さんに説明してください(お母さんは目を使わないでください)。
日本ほど清潔な水がたっぷり使える国はほとんどありません。世界の基準で考えると、ふろに毎日入るほうが異様なのです。
「おふろに入らなければ」「赤ちゃんをおふろに入れなければ」という思い込みは捨ててください。
3 便通を整えること
赤ちゃんの便ばかり気にして、自分の便通には一切気をかけていないお母さんは少なくないでしょう。
腸が動き、胃もきちんと動いて、消化・吸収活動が正常に行われるのです。便が気持ちよく出ていなければ、頭痛や肩こり、体の重さなどの不調が現れます。
一般に、食物繊維の摂取は便秘解消に役立つと言われています。
しかし、血が足りなくて胃腸も弱っているときに、不溶性食物繊維をたくさん摂取するのはお勧めしません。不溶性食物繊維が腸の水分を吸って膨らんだときに、不溶性食物繊維を含む老廃物を腸は便として排出できるほどのエネルギーがないからです。
実際、食物繊維を摂取してかえって便秘が悪化し、ガス腹に苦しんだと話す人はたくさんいました。
なかなか便秘が解消しないときは、腸が冷えている可能性があります。
冷たい飲食物は摂取を避けて、常温以上の温かい飲食物を取るようにしましょう。
インドの伝統医学アーユルヴェーダの医師は、白湯(温かいお湯)を勧めています。
寝る前に、ちょっと熱い60℃以上の白湯をたっぷり飲んでください。暑い季節で白湯を飲むと不快と感じたら、もっと低い温度でかまいません。
白湯にレモン汁と塩を少量、飲んでおいしいと感じる程度加えるのもいいでしょう。
腸を温めることは、温かい血を全身に巡らせるうえでも大事なこと。そして腸が温まっているかどうかは、便通でわかります。お母さんは自分の便通に注意を向けてみましょう。
4 とにかく横になること
産後3週間は、昼間でも部屋を薄暗くして、布団に入ってひたすら横になってください。
気持ちが落ち着かなかったり、じっとしているのはつらいかもしれません。しかし、体は血が不足しています。
これは感情にがんじがらめで、自分が消耗しているのに気づいていないのです。
つらかろうが、泣けてこようが、とにかく布団に入って横になってください。
泣きたかったら、エンエンと声を挙げ、涙を流していいのです。
「赤ちゃんがかわいくない」と思ってもかまいません。
すべて「温かい血が私には足りていないのだ」と思ってください。
横になって活動を止めることで、血が肝に蓄えられます。肝に蓄えられた血が、子宮など出産でダメージを受けた臓器の修復に役立ちます。
5 血を補う食品を取ること
大ざっぱに言うと、赤い食品が血を補います。クコ、ニンジン、トマトなどが挙げられます。
また、米、もち米、ハチミツ、黒ゴマ、卵、豚肉、鶏肉、エビ、イカ、ウナギなどの中から「今食べたい」と感じるものを選んで食べましょう。
お母さんは横になるのが大事なので、周囲の人に買ってきてもらうか、弁当やレトルトでもかまいません。
私が勧めているのは、鶏スープです。
■更年期や月経トラブル解消、産後の体調回復にお勧めの「鶏スープ」レシピ
https://sceltadelmetodo.blogspot.com/2019/03/blog-post_85.html
血が足りていないのに「料理は自分で作らなきゃ」なんて考えてはいけません。
優先順位の第一は、体を温かい血で満たすこと。
血が増えてきたかを判断するには、便通があるかどうかが一つの目安になるでしょう。便通が整ってくると、おそらく「ちょっと気分がいいかも」と感じられるはずです。
それから、初めて昼間に起き上がるようにしてください。
最後に、母乳が出ようと出まいと、赤ちゃんをかわいく思えようと思えなかろうと、世話ができようとできなかろうと、お母さんは赤ちゃんの近くにいたほうがいいと私は思います。
どんなお母さんでもかまわないから、赤ちゃんにはお母さんが必要ではないでしょうか。
赤ちゃんにはお母さんがただそこにいて、お母さんが気(き)を与えてくれて、赤ちゃんの気を受け取ってくれればいいのです。
産後にお母さんの血が不足しないように、妊娠期間に準備することを私は『女性の体の知恵』でお勧めしました。しかし、なんの準備もせずに産後に突入したからと言って、手遅れなんてことはまったくありません。
体はボロボロ、心はクタクタで大変かもしれませんが、体を整えて心の状態を回復させていくことはできます。
『女性の体の知恵 妊娠から子育てまで健やかに過ごす』の無料配布を始めました。
ちょっと様子が変だからとご家族が昼夜問わず見守っていたにもかかわらず、目を離したすきにお母さんが突発的な行動を取ってしまったケースもあります。
「お母さんにもっと温かい言葉をかけてあげていれば」「周囲がサポートさえしていれば」というレベルではないと私は思います。
産後うつで悲しいことは、赤ちゃんを取り巻くすべての人が「私が悪い」と自分を責めてしまうこと。
しかし、誰が悪いのでもありません。
お母さんの温かい血が足りないだけ。
ですから、お母さん本人も周りの人も、お母さんの体が温かい血で満たされるように心がければいいのです。
うつっぽいときは、温かい血が足りていません。
赤ちゃんをかわいく思えないのは、全身が栄養不足で疲れ切っているからです。
ただでさえ出産で血を失うのに、産前にかなり食事制限をしたり、悩みやストレスを抱えていたりすると、体は血がさらに欠乏状態になります。
そのために、体に力が入らなくなったり、気力が出なかったり、気持ちがうつうつと晴れなかったり、母乳が出にくくなったりしているわけです。
お母さんの努力が足りないわけではありません。
心がけが悪いわけでもありません。
温かい血が足りていないのです。
冷えているのなら温めればいいし、足りないのなら補えばいいわけです。
ところで、血とは東洋医学の概念で、血管を巡って各臓器に栄養や潤いを与えるエネルギーです。西洋医学の「血液」は、「血」という言葉からつけられたと聞いています。
紀元前に生まれた東洋医学では、人間の体を丹念に観察したり、植物や鉱物を摂取したときにどう反応するかを調べたりして、全身を一つの生命ととらえて病気を治してきました。
うつを含めた産後のトラブルについても古くに把握されているので、生活術や食事法などが考え出されてきたのです。
「産後うつは、体を温かい血で満たして治す」「産後を見据えて妊娠期間を過ごしてください」とお伝えするのも、東洋医学的な観点からです。
産後すぐに、体を温かい血で満たすには、次のような生活を送ってください。
1 スマホやパソコンを使ったり、テレビを見たり、本を読んだりしないこと
目を使うと、肝に蓄えられた血が消費されます。ですから、目を使うのは必要最小限にします。
2 自分も赤ちゃんも毎日ふろに入らないこと
赤ちゃんをふろに入れると、親は体力を消耗します。ですから回数を減らしたほうがいいわけですが、そもそも、毎日ふろに入れないほうが赤ちゃんの皮膚にとって望ましいのです。水に濡れず、お湯に漬からず、タオルでこすらないことで、皮膚のバリア機能が守られるからです。
根拠は『ふろに入らないほうが美肌になる』に長々と書いたので、不安があればお母さん以外の人が読んで、お母さんに説明してください(お母さんは目を使わないでください)。
日本ほど清潔な水がたっぷり使える国はほとんどありません。世界の基準で考えると、ふろに毎日入るほうが異様なのです。
「おふろに入らなければ」「赤ちゃんをおふろに入れなければ」という思い込みは捨ててください。
3 便通を整えること
赤ちゃんの便ばかり気にして、自分の便通には一切気をかけていないお母さんは少なくないでしょう。
腸が動き、胃もきちんと動いて、消化・吸収活動が正常に行われるのです。便が気持ちよく出ていなければ、頭痛や肩こり、体の重さなどの不調が現れます。
一般に、食物繊維の摂取は便秘解消に役立つと言われています。
しかし、血が足りなくて胃腸も弱っているときに、不溶性食物繊維をたくさん摂取するのはお勧めしません。不溶性食物繊維が腸の水分を吸って膨らんだときに、不溶性食物繊維を含む老廃物を腸は便として排出できるほどのエネルギーがないからです。
実際、食物繊維を摂取してかえって便秘が悪化し、ガス腹に苦しんだと話す人はたくさんいました。
なかなか便秘が解消しないときは、腸が冷えている可能性があります。
冷たい飲食物は摂取を避けて、常温以上の温かい飲食物を取るようにしましょう。
インドの伝統医学アーユルヴェーダの医師は、白湯(温かいお湯)を勧めています。
寝る前に、ちょっと熱い60℃以上の白湯をたっぷり飲んでください。暑い季節で白湯を飲むと不快と感じたら、もっと低い温度でかまいません。
白湯にレモン汁と塩を少量、飲んでおいしいと感じる程度加えるのもいいでしょう。
腸を温めることは、温かい血を全身に巡らせるうえでも大事なこと。そして腸が温まっているかどうかは、便通でわかります。お母さんは自分の便通に注意を向けてみましょう。
4 とにかく横になること
産後3週間は、昼間でも部屋を薄暗くして、布団に入ってひたすら横になってください。
気持ちが落ち着かなかったり、じっとしているのはつらいかもしれません。しかし、体は血が不足しています。
これは感情にがんじがらめで、自分が消耗しているのに気づいていないのです。
つらかろうが、泣けてこようが、とにかく布団に入って横になってください。
泣きたかったら、エンエンと声を挙げ、涙を流していいのです。
「赤ちゃんがかわいくない」と思ってもかまいません。
すべて「温かい血が私には足りていないのだ」と思ってください。
横になって活動を止めることで、血が肝に蓄えられます。肝に蓄えられた血が、子宮など出産でダメージを受けた臓器の修復に役立ちます。
5 血を補う食品を取ること
大ざっぱに言うと、赤い食品が血を補います。クコ、ニンジン、トマトなどが挙げられます。
また、米、もち米、ハチミツ、黒ゴマ、卵、豚肉、鶏肉、エビ、イカ、ウナギなどの中から「今食べたい」と感じるものを選んで食べましょう。
お母さんは横になるのが大事なので、周囲の人に買ってきてもらうか、弁当やレトルトでもかまいません。
私が勧めているのは、鶏スープです。
■更年期や月経トラブル解消、産後の体調回復にお勧めの「鶏スープ」レシピ
https://sceltadelmetodo.blogspot.com/2019/03/blog-post_85.html
血が足りていないのに「料理は自分で作らなきゃ」なんて考えてはいけません。
優先順位の第一は、体を温かい血で満たすこと。
血が増えてきたかを判断するには、便通があるかどうかが一つの目安になるでしょう。便通が整ってくると、おそらく「ちょっと気分がいいかも」と感じられるはずです。
それから、初めて昼間に起き上がるようにしてください。
最後に、母乳が出ようと出まいと、赤ちゃんをかわいく思えようと思えなかろうと、世話ができようとできなかろうと、お母さんは赤ちゃんの近くにいたほうがいいと私は思います。
どんなお母さんでもかまわないから、赤ちゃんにはお母さんが必要ではないでしょうか。
赤ちゃんにはお母さんがただそこにいて、お母さんが気(き)を与えてくれて、赤ちゃんの気を受け取ってくれればいいのです。
産後にお母さんの血が不足しないように、妊娠期間に準備することを私は『女性の体の知恵』でお勧めしました。しかし、なんの準備もせずに産後に突入したからと言って、手遅れなんてことはまったくありません。
体はボロボロ、心はクタクタで大変かもしれませんが、体を整えて心の状態を回復させていくことはできます。
『女性の体の知恵 妊娠から子育てまで健やかに過ごす』の無料配布を始めました。
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文/森 真希(もり・まき)
医療・教育ジャーナリスト。大学卒業後、出版社に21年間勤務し、月刊誌編集者として医療・健康・教育の分野で多岐にわたって取材を行う。2015年に独立し、同テーマで執筆活動と情報発信を続けている。
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