どうして月経痛が起こるのだろうか ~子宮筋腫 その4 漢方薬

 子宮筋腫は、平滑筋で構成されている子宮にできたしこりといえます。

どうして月経痛が起こるのだろうか ~子宮筋腫 その1 子宮筋腫の種類と大きくなるメカニズム
https://sceltadelmetodo.blogspot.com/2020/06/1_11.html

 では、なぜ体にしこりができるのでしょうか?
 漢方では次の3つの原因が考えられています。

〇気滞 気の流れが停滞している
〇瘀血 血の流れが停滞している
〇痰湿 過剰に水分がたまっている

 そして、心と体に現れている症状を把握して筋腫が形成されたしこりの作った主な原因が気滞か、瘀血か、痰湿なのかを診断します。
 ただ、気は血と水を巡らせるエネルギーなので、気滞によって瘀血・痰湿も引き起こされます。



〇気滞 

ストレス・寝不足・運動不足で、気の流れが停滞することを指しています。
 イライラや怒りっぽさ、ため息は、その特徴。そして、おなかにガスがたまったり、ゲップがよく出たりします。
 また月経前には、乳房や下腹部の張って、痛みます(PMS)。

 「肝鬱気滞」といって、五臓の中の肝が弱っていることで、気滞が引き起こされます。ここでの肝は肝臓の機能だけではなく、自律神経系をつかさどって体の諸機能を調節し、情緒を安定させ、血(けつ)を貯蔵して循環させる働き全般を意味します。

 対処には「疎肝解鬱」「行気散結」。

 漢方薬で主に処方されるのは逍遥散。また、のぼせや口渇を伴う場合は加味逍遥散です。


〇瘀血

気滞と同じく精神的なストレスや、寒さ、冷え、運動不足などで血の流れが停滞した状態です。また血になる栄養が足りない場合や、虚弱体質でも瘀血があります。

 差し込むような痛みの月経痛、腰痛、頭痛、肩こり、のぼせが特徴です。他人におなかを触られると、ひどく不快になります。
 経血に、レバー状の塊が混じるのも特徴。


 瘀血は、五臓の中の腎が弱っている「腎虚」と関連しています。腎は腎臓の機能だけではなく、体内の水分をつかさどるほか、成長や生殖などホルモン分泌とも大きく関係します。

 対処は「活血化瘀」「散結」。

 漢方薬で主に処方されるのは温経湯や桂枝茯苓丸、当帰芍薬散。
 ホルモンバランスを調節している腎を整える八味地黄丸などが処方されることもあります。

 保険適用されていませんが、月経痛には折衝飲が有名です。

〇痰湿

「痰湿凝結」ともいって、体内にたまった過剰な水分や湿気である痰湿。痰湿はしこりの原因とされています。

 見た目は太っていなくても、足首だけがむくんで太く、足を触るとしっとりとして冷えています。そして体が重だるく、めまいがして、痰が多く出ます。

 痰湿は、五臓の中の脾が弱っている「脾虚」と関連しています。食べた物が気・血・水に変わらず、余分な水分がネバネバした状態で体内に停滞すると考えられています。
 脾虚を招くのは、冷たい水分や糖質をたくさん摂取することと、梅雨や台風など湿度の高い環境です。

 対処は「健脾化痰」「散結」。

 漢方薬で主に処方されるのは二陳湯や五苓散、平胃散、牛車腎気丸。


 
 以上は、子宮筋腫のときによく処方される漢方薬ですが、胃腸の状態に合わせて別の薬も一緒に使うことは珍しくありません。ですから「私にはこれ!」「筋腫だから、これ!」という思い込みは持たないようにしてください。

 漢方薬については「穏やか」「ナチュラルで優しい」などのイメージが先行し過ぎている印象もあるため、次の記事もぜひ参照にしてもらえたらと思います。






文/森 真希(もり・まき)
医療・教育ジャーナリスト。大学卒業後、出版社に21年間勤務し、月刊誌編集者として医療・健康・教育の分野で多岐にわたって取材を行う。2015年に独立し、同テーマで執筆活動と情報発信を続けている。

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