「マイペースで、地元で、自分のできる範囲で」行う、古くて新しい働き方

 近年では女性だけでなく男性も、子育てや病気、介護で転機を迎えます。

ライフサイクル

○社会に出てバリバリ働く「キャリアアップ期」
○出産で始まる「子育て繁忙期」
○子どもが独立したり老親を見送ったりした後の「再出発期」
○老親にかかわる「介護期」(遠距離介護も含む)
○病気での「休止期」
○自分の老いと向き合う「老後期」
○死を見据え、社会や若い世代のために生きる「貢献期」

 上記のようなライフサイクルに加え、社会情勢も私たちの働き方に大きな影響を与えます。

 新型コロナウイルス(COVID-19)感染症

  発熱、空咳、倦怠感などの症状は個人差が大きく、ほとんどの感染者では軽度から中等度で回復します。
 しかし、高齢者や、心臓病、糖尿病、高血圧など基礎疾患がある人では急激に重症化しやすく、死に至るケースもありました。
 ですから、さまざまな人が暮らしている社会の一員として、感染を広げないために、私たちは密閉・密集・密接の「三密」は避けなければならない状況です。


 結果として、対面の回避、テレワーク(「tele=離れた所」と「work=働く」を合わせた造語)の導入、脱会議・押印、飲み会の中止などが推奨されています。その影響は、運輸・飲食・はんこ業界だけでなく、広く及んでいます。

 こうしたライフサイクルや社会状況に応じて、暮らしや仕事を変化させる必要性を私たちは感じています。

 同時に、これまで当たり前だった価値観を見直す時期が来ているのかもしれません。

 私たちの経済活動では、「もっと速く、もっと遠くへ、もっと効率よく」と果てしなく拡大していく資本主義が前提となっています。「人々は利益と生産を増やすことに取り憑かれ、その邪魔になりそうなものは目に入らなくなる」と、『サピエンス全史』(著/ユヴァル・ノア・ハラリ 河出書房新社)には書かれています。


 そんな資本主義の限界については、経済の分野だけでなく環境問題などでも、さまざまな論調で触れられてきましたが、新型コロナウイルス感染症は違った形で見せつけました。


 資本主義というシステムの中では、三密は、非常に効率のよい経済活動を生み出す、好ましい状況です。

 例えば、高度成長期に働き手が工場など1カ所に集められて、製品を大量生産していました。働き手を同じ場所・同じ時間に集めたほうが、効率よく管理できるわけです。1カ所で集中的に作り出された製品は、その土地の人々だけでは当然消費できないため、遠くへと運ばれる必要が出ます。なんなら、地球の裏側に住んでいる人にも、この製品を使ってほしいと売りに行き、生産活動をどんどん拡大させていく……


 これが資本主義の経済活動だとしたら、三密を避ける非効率な経済活動は、資本主義的ではないといえます。

 「もっと速く、もっと遠くへ、もっと効率よく」が優秀、“善”とされてきた価値観から抜け出さなければならない状況に、新型コロナウイルス感染症は一気に転換させてしまったのです。


 ここで検討したいのは、「マイペースで、地元で、自分のできる範囲で」が当たり前になると思われる、これからの働き方。自分や家族の健康を守りながら、生活するためのお金を稼ぐ……生業です。

 キーワードは「効率主義を“善”としない」。

 資本主義の影響は、経済活動に限定されているわけではありません。家庭でも学校でも、私たちは幼い頃から効率主義が“善”と刷り込まれてきました。早く片づけを済ますと褒められ、テストを早くやり終えると褒められ(正答率も大事ですが)、とにかく、急かされながら生きてきたのではないでしょうか。

 どっぷりと頭まで漬かってきた効率主義の思考サイクルから抜け出すこと。ここに生業のヒントがあるかもしれません。


 すでに日本各地では、「マイペースで、地元で、自分のできる範囲で」の試みが行われてきました。2000年頃に日本でブームになった「地域通貨」もその一つ。

 『クラナリ』では、地域通貨も含めて「マイペースで、地元で、自分のできる範囲で」行われている生業を、古くて新しい働き方として探っていきます。



□参考資料
症状、予防、経過と治療… 新型コロナウイルス感染症とは? 現時点で分かっていること(9月13日時点)
https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20200913-00197970/

「脱ハンコ」コロナで機運 在宅勤務推進の妨げにhttps://www.nikkei.com/article/DGXMZO59399040R20C20A5000000/

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