改めて、「心臓」について考えてみよう その2 心臓が収縮する仕組み
人間の体の細胞は、細胞膜で覆われています。そして細胞膜は、リン脂質(リン酸+脂肪酸)の二重の層(「脂質二重層」)です。
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細胞膜の構造 |
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細胞の構造 Wikipediaより |
油が水をはじくように、細胞膜の脂肪酸も水をはじきます。その一方で、リン酸は細胞膜の水となじみやすい性質があります。
こうした構造のため、細胞膜の内側にある「細胞内液」と外側にある「細胞外液(組織液、細胞間液)」では、含まれている成分が異なっています。
イオンについては、以下のような違いがあります
○細胞内液 カリウム(K+)やリン酸(HPO42-)のイオン
○細胞外液 ナトリウム(Na+)や塩素(Cl-)のイオン
細胞内液や細胞外液といった水に溶け込んでいるイオンは、通常は細胞膜を通り抜けることはありません。
ただ、細胞膜には、物質が通り抜けられる経路「チャネル」や、エネルギー(ATP)を使って吸い上げたり送ったりする「ポンプ」があります。
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チャネルは「水路」 |
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ポンプはポンプ(そのまんま……) |
ナトリウムイオン(+)をくみ出す「ナトリウムポンプ」は、カリウムイオン(+)を細胞に取り込んでいます。ですから、細胞の中はナトリウムイオン濃度が低くて、カリウムイオンが高い状態になっているのです。
このバランスが、細胞の活動にぴったりなんですね。
それが、心臓の筋肉が興奮すると、筋肉の細胞(心筋細胞)の細胞膜のナトリウムチャネルとカルシウムチャネルが開きます。そしてナトリウムイオン(+)は急激に、カルシウムイオン(+)はゆっくりと、細胞の中に入ってくるのです。
ナトリウムイオンが流れ込もうとすることで発生するのが「活動電位」。電位については、以下の図と 改めて、「心臓」について考えてみよう 番外編 そもそも「電気」ってなんだろう? を参照してください。
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http://www.max.hi-ho.ne.jp/lylle/denryu5.htmlより |
すると、筋肉の細胞にある「筋小胞体」という器官からカルシウムイオンが放出されて、細胞の中のカルシウムイオン濃度が高まります。
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東邦大学メディアネットセンターより |
そしてカルシウムイオンが「トロポニン」というたんぱく質にくっつくと、筋フィラメントが動きます。フィラメント、つまりひも状の物が、互い違いに重なっていた状態から、隙間が小さくきっちりと重なる状態になることで、全体の幅が狭くなっているわけです。これが収縮。
その後、筋小胞体にカルシウムイオンが取り込まれるとともに、細胞の外にくみ出されることで、細胞内のカルシウムイオン濃度が低下。トロポニンからカルシウムイオンが離れることで、筋フィラメントが元に戻ります。
まとめましょう! 心臓が収縮するのは、細胞内のカルシウムイオンの濃度が大きく関係しています。
そして、ナトリウムイオンやカルシウムイオンが細胞膜を通過する際に、活動電位が発生。その様子を図示したものが心電図で、心臓が正常に収縮しているときには以下のような形になります。
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看護roo!より |
刺激がないとき 細胞膜の外側はやや+、内側がやや-で、内と外の電位差は約-90mVで維持(静止膜電位)
刺激
0相 ナトリウムチャネルが開いてナトリウムイオン(Na+)が細胞の内側に流入
第1相 ナトリウムチャネルが閉じて、わずかにカリウムイオンが細胞の外側に流出
第2相 カルシウムチャネルが開いて、カルシウムイオン(Ca2+)が細胞の内側に流入
第3相 カルシウムチャネルが閉じて、カリウムイオン(Na+)が細胞の外側に流出
第4相 カリウムイオン(Na+)が細胞の外側に流出
■参考資料
東邦大学メディアネットセンター
https://www.mnc.toho-u.ac.jp/v-lab/shinkin/denki/denki-1-1.html
看護roo!
https://www.kango-roo.com/learning/2078/
https://sceltadelmetodo.blogspot.com/2020/12/blog-post.html
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