【ファクトフルネス3】ファクトフルネスの実践

 『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』にはファクトフルネスの実践方法が具体的に記載されています。その一部を抜粋して、【ファクトフルネス1】未知の感染症によるプチパニック状態にこそ大切な『ファクトフルネス』 で紹介しました。今回は実践方法をさらに細かく確認していきます。

Gapminder Slidesより

 1.分断本能への対処法 話の中の「分断」を表す言葉に気づこう

分断に関する頻出ワード「世界は分断されている」「あの人たちは私たちとは違う」

 さまざまな物事や人々は、富と貧困、正義と悪、先進国と発展途上国というように2つに分かれていて、両者は対立していると考えてしまいがちです。原因の一つは、極端な事例や数字、「平均の比較」といったニュース。センセーショナルなニュースには思わず目を奪われてしまいます。
 こうした情報に惑わされず、中央値、つまり「大半の人がどこにいるのか」を探すようにしましょう。
 そして、世界を2つに分けるのはやめましょう。

■ファクトフルネス
●「平均の比較」に注意しよう
●「極端な数字の比較」に注意しよう
●「上からの景色」であることを思い出そう
※「上からの景色」とは、あまりにも高所から物事を見ているために、差異が見えなくなっていること。十把一絡げにしてしまいやすいのですね。
Gapminder Slidesより

2.ネガティブ本能への対処法 ネガティブなニュースに気づこう

ネガティブなニュースでの頻出ワード「世界はどんどん悪くなっている」

 ネガティブ本能とは、物事のポジティブな面よりもネガティブな面に気づきやすいという本能。
 この本脳を刺激する要因として、次の3つを著者のハンスは挙げています。
●あやふやな過去の記憶(思い出の美化)
●ジャーナリストや活動家による偏った報道
●状況がまだまだ悪いときに、「以前に比べたら良くなっている」といいづらい空気

 場の空気。
 日本人は特に敏感ではないでしょうか。「そんな無責任な!」「お気楽ね」という批判や嫌味を受けたくないために、つい、深刻ぶってしまうわけです。
 また、悪い情報はニュースとしてメディアが頻繁に流します。そのために思考がネガティブになりやすいのですが、対策として悪いニュースが流れたときには、同じトピックでよいニュースについて調べること。そして、統計を調べること。
 ハンス・ロスリングは以下のように述べています。

 統計を読み解く際には、「数値の差が10%程度かそれ以下である場合、その差を基になんらかの結論を出すことには慎重になるべき」と覚えておこう。


■ファクトフルネス
●「悪い」と「良くなっている」は両立する
●良い出来事はニュースになりにくい
●ゆっくりとした進歩はニュースになりにくい
●悪いニュースが増えても、悪い出来事が増えたとは限らない
●美化された過去に気をつけよう
Gapminder Slidesより

3.直線本能への対処法 「グラフは、まっすぐになるだろう」という思い込みに気づこう


直線グラフの頻出ワード「世界の人口がパンクするまで、ひたすら人口が増え続ける」

 私たちはグラフを見ると、直線的に増加するか減少するかのどちらかに、つい考えがちです。
 ですから、実際に多数のグラフを見て、実際には、直線のグラフのほうが珍しいことを確認しておきましょう。また、グラフ上の点と点を、勝手に直線で結ばないように。S字カーブなどの曲線でつながっている可能性もあるのです。

■ファクトフルネス
●なんでもかんでも、直線のグラフに当てはめないようにしよう

Gapminder Slidesより

4.恐怖本能への対処法 「恐ろしいものには、自然と目がいってしまう」ことに気づこう


怖がっているときの頻出ワード「(反射的に)ヤバい」

 「危険」とは違って、「恐怖」は危険があるように「見える」だけです。しかし、私たちは恐怖を抱くと危険を大きく感じてしまって、正常な判断ができなくなってしまいます。
 ですから恐怖と危険を区別して検討する訓練が必要です。自分が怖がっているからといって、危険とは限らないのです。恐怖は感情なので正確に見積もることはできませんが、危険はデータをもとに「危険度×頻度」で計算できます。
 注意すべきはメディアとTwitter。私たちの恐怖心を刺激して、認識を誤らせるような報道をしています。

■ファクトフルネス
●世界は恐ろしいと思う前に、現実を見よう
●リスクは「危険度」と「頻度」、言い換えると「質」と「量」の掛け算で決まる
●行動する前に落ち着こう

Gapminder Slidesより


5.過大視本能への対処法  ただひとつの数字が、とても重要であるかのように勘違いしてしまうことに気づこう


過大視しているときの頻出ワード「90%オフ! 買わなくちゃ」

 目の前にある1つの数字だけ「なんて大きい(小さい)んだ」と、つい考えがちです。
 数字は決して「確かなもの」ではありません。
 提示された1つの数値だけを重視して、ほかの数値が見えなくなることもあるので、いくつか比較することが大切。

■ファクトフルネス
●比較しよう
●80:20ルールを使おう(項目が並んでいたら、まずは最も大きな項目だけに注目する)
●割り算をしよう(国や地域を比較するときには一人当たりを計算)
Gapminder Slidesより

6.パターン化本能への対処法 ひとつの集団のパターンを根拠に物事が説明されていたら、それに気づこう、分類を疑おう


パターン化の頻出ワード「いつもそうでしょ」「あの人たちはそうでしょ」

 何も考えずに物事をパターン化させて、すべてに当てはまると考えてしまいがちです。特に専門家、学歴が高い人、社会的な地位がある人は注意。「俺様こそがわかっている。みんなバカ」に陥りやすいのでしょうね。
 自分を普通だと思わず、「間違っているかもしれない」と疑うことが大事。

■ファクトフルネス
●同じ集団の中にある違いを探そう
●違う集団のあいだの共通項を探そう
●違う集団のあいだの違いも探そう
●「過半数」に気をつけよう(同じ過半数でも51% と80%では大違い)
●強烈なイメージに注意しよう(頭に残りやすいが例外の可能性も)
●自分以外はアホと決めつけないようにしよう
Gapminder Slidesより

7.宿命本能への対処法 いろいろなもの(人、国、宗教、文化)が変わらないように見えるのは、変化がゆっくりと少しずつ起きているからだと気づこう


頻出ワード「変われませんよ。絶対に」「すべてはあらかじめ決まっている」

 私たちは変化に鈍感だったり、変化しないと思い込んだりしがちです。
 技術や社会、文化、そして宗教も刻々と変わり続けているですから、常に自分の知識をアップデートする必要があります。

■ファクトフルネス
●小さな進歩を追いかけよう
●知識をアップデートしよう
●おじいさんやおばあさんに話を聞こう(価値観がどれほど変わっているのかを確認)
●文化が変わった例を集めよう
Gapminder Slidesより

8.単純化本能への対処法 ひとつの視点だけでは世界を理解できないと知ろう

頻出ワード「真実は一つ」「それしかない!」

 私たちは、物事を単純化する傾向があります。シンプルなものの見方に、ぐっとひかれてしまうのです。そして「自分は普通」「自分こそ正しい」と思い込んでしまうわけです。
 専門や立場が異なる人々の意見にも謙虚に耳を傾けて、社会の複雑さを知ることが大切です。

 教育レベルの高い(世界有数の科学専門誌「ネイチャー」を購読しているような)人でも、普通の人並みか、普通の人よりも間違いが多い
(中略)その道のプロは、その道のことしか知らない。
(中略)貴重な専門知識を持っていたら、それを使いたくなるのはあたりまえだ。努力して身につけた知識やスキルを専門分野以外のことにも使いたいと考える専門家もいる。


■ファクトフルネス
●自分の考え方を検証しよう
●知ったかぶりはやめよう
●めったやたらとトンカチを振り回すのはやめよう(一つの道具で全部に使え、物事が片付くわけではない)
●数字は大切だか、数字だけに頼ってはいけない
●単純なものの見方と単純な答えには警戒しよう
Gapminder Slidesより

9.犯人探し本能への対処法 誰かが見せしめとばかりに責められていたら、それに気づこう


頻出ワード「犯人はお前だ! これでめでたし、めでたし」

 悪いことが起きたときに、単純明快な理由を、つい見つけたくなるものです。そして悪いことの原因を、自分ではなく他人に求める傾向があります。
 これは事実と異なり、犯人は1人だけではなく、自分を含めた大勢の人、つまり社会に原因があります。犯人を見つけた(と思った)時点で、思考停止しないように注意。「犯人を捜すよりシステムを見直したほうがいい」と著者は語ります。逆に物事がうまくいったときも、ヒーローのおかげではなく社会基盤とテクノロジーのおかげと思ったほうがよいそうです。
 犯人を作り上げ、寄ってたかって責めていたら、ほかの原因に目が向かなくなり、将来同じ間違いを繰り返すことになります。

■ファクトフルネス
●犯人ではなく、原因を探そう
●ヒーローではなく、社会を機能させている仕組みに目をむけよう
Gapminder Slidesより

10.焦り本能への対処法 「いますぐに決めなければならない」と感じたら、自分の焦りに気づこう


頻出ワード「今すぐ手を打たないと大変なことになる」「いつやるか? いまでしょ! いましかない」「今日から考え方を変えよう!」

 目の前に危機が迫っていると感じると、いてもたってもいられなくなり、冷静に判断できなくなります。そして極端な考えに傾きがち。
 「人間とは焦る生き物だ」ということを念頭に置いておけば、焦りに気づきます。そしてまず一呼吸おいて、多くの情報やデータを収集しましょう。
 著者のハンスは「たとえ善意からだとしても、拙速に行動を呼びかけてはいけない」と注意を促しています。 

■ファクトフルネス
●深呼吸しよう
●データにこだわろう
●占い師に気をつけよう(未来についての予測は不確か)
●過激な対策に注意しよう
Gapminder Slidesより





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