改めて「学歴」について考えてみた
まず最初に、私自身が偏差値社会・学歴社会で思春期を過ごしてきた人間であることを断っておきます。差別的な表現が含まれる可能性もあるので、苦手な人は読まないでください。
自分が高校性の頃は「自分の適性は何か」「何を学びたいか」「将来の夢は何か」などほとんど考えずに、がむしゃらに偏差値を上げる勉強をしてきました。
TBSドラマ「義母と娘のブルース」で、娘のみゆきが高校3年で進路について語るセリフにビックリ。
詳細は忘れたのですが、「好きなこともないし、興味のあることもないし、アキコさん(義母)に喜んでもらいたいから、私立のそこそこ名前があるところに行ければなと思ってる。それじゃだめなの?」といった内容。
「そこそこ」という感覚が、最近の高校生の感覚なのでしょうか。
「とにかく上を目指せ」と偏差値を上げる文化で高校時代を過ごした私には驚きでした。
大学生になり、就職活動のときも、「自分の適性は何か」「何をやりたいか」「将来の夢は何か」については、表面的にしか考えていませんでした。それで人気企業を片っ端から受験していたのです。
そんな偏った生き方をしてきたわけですが、ここで改めて「学歴」について考えてみたいと思います。
きっかけは、某有名私立の卒業生がメジャーだった、とある職場に、Fランク大学の卒業生も同じ職種・同一賃金で雇われていることを知ったからでした。
正直、驚きました。
私が若い頃に必死に得ようとしてきた「学歴」「ブランド」とは何だったのだろうか……
自分のショックはさておき、現状の一因としては、職種としての人気が落ちてきたことが考えられます。昔はメジャーでも今はマイナー。給料も右肩下がり。子どもの頃から涙ぐましい努力をして得られた高学歴を生かせない職種だと、世間的に判断されているかもしれません。
諸行無常。万物は流転するのですね。
もう一つの原因は、実は一般社会では、学歴がさほど重視されていないという可能性。
自分の体験ですが、子どもが保育園時代に知り合ったママたちについては、学歴を聞いたことは一度もありません。その人の性格や責任感などで判断し、ママ同士でお付き合いしたり、謝恩会その他の仕事を分担したりしていたわけです。
会社の仕事も同様、コミュニケーション能力がきちんとしているか、礼儀作法や一般常識をわきまえているかのほうが、学歴よりも大きな比重を占めているのではないでしょうか。
要は、きちんと仕事をしてくれたら、学歴なんてどうでもいいわけです。
私の世代は、出生数が非常に多いものでした。そんな世代の学生に対して、雇用主側も、「コミュニケーション能力がきちんとしているか」「礼儀作法や常識をわきまえているか」を一人ひとり、丁寧にチェックするのが面倒。ですから、最初に学歴で振り分けていた側面がありました。
少子高齢化が進む今後は、どうなのでしょうか。
学歴だけで人を判断するような高飛車な態度の企業は、従業員はおろか、「学歴偏重」などとうわさされて、仕事全般に悪影響を及ぼすようにも思えます。
そのため、偏差値社会・学歴社会の人間が親になった今、子育てで惑うのです。
自分の周囲に限れば、相変わらず学歴偏重の傾向が見られ、自分の子ども(中学生)の友人たちは幼い頃から塾通いをしています。
進学塾に通わせるということは、高学歴を目指しているということ。高学歴を目指しているということは、それが就職に有利だと信じ込まれているからではないでしょうか。
ここで数字を見てみましょう。
文部科学省が公表した「2019年度(令和元年度)学校基本調査(確定値)結果」によれば、大学・短大進学率は58.1%。これは過去最高で、女子学生の45.4%という割合も過去最高とのこと。
あれ?
私は散々「大学全入時代」と聞いてきたのですが、実際は半数ちょっとが大学と短大に進学しているのです。
ちなみに、高校進学率は、通信制を含めると98.0%とのこと。全入時代は高校であって、大学ではありませんでした。
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高等学校教育の現状 - 文部科学省 より |
そして、「平成31年3月高等学校卒業者の就職状況(平成31年3月末現在)に関する調査について」によれば、高卒の就職率は98.2%。
就職希望者のほとんどが、職に就いているという結果になっています。
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(3)学科別就職率(就職率の高い順)
「工業」99.5%、「農業」99.0%、「商業」98.9%、「水産」98.8%、「家庭」98.6%、「看護」98.4%、「情報」98.3%、「福祉」98.2%、「総合学科」97.5%、「普通」96.6%
※「その他」の学科は除く。
※「看護」に関する学科は看護師5年一貫課程が主となるため、5年課程5年次の就職率を示している。
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ちなみに「家庭」とは、食物科、服飾科、生活デザイン科、生活科学科、家政科、保育・栄養科、調理科などを指しています。
では、大卒と高卒とでは、賃金差は大きいのでしょうか。厚生労働省の令和元年賃金構造基本統計調査 結果の概況には以下のように書かれています。
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学歴別に賃金をみると、男性では、大学・大学院卒が400.5千円(前年比0.0%)、高専・短大卒が314.9千円(同0.4%増)、高校卒が292.9千円(同0.4%増)となっている。女性では、大学・大学院卒が296.4千円(同2.2%増)、高専・短大卒が260.6千円(同0.9%増)、高校卒が214.6千円(同0.8%増)となっている。
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厚生労働省の令和元年賃金構造基本統計調査 結果の概況 より |
気を付けなければならないのが「平均値」ということ。初任給が高い人もいれば安い人もいるわけで、一概に「大卒は高卒よりも給料が高い」とは言い切れないのではないでしょうか。
高卒も大卒もさまざまということです。
Fランク大学の就職先について、複数のサイトを見た結果、外食、小売・流通(スーパー、コンビニ)、不動産、介護、製造業、金融業の業界が多いという印象です。現在も学歴で学生をふるい分けをする企業があり、また、Fランク大学だと正確な企業情報が入ってきにくいという意見も見られました。
とはいえ、繰り返しになりますが、学歴での差別が大きい企業に将来性があるのか、ちょっと疑問ではあります。
その点も考えると、勉強が苦手な子どものお尻をたたいて(比喩的表現です、念のため)、塾などにジャンジャンお金をかけて、偏差値の高い学校を狙わせるのも、果たして意味があるのかと迷うのです。
少子高齢化が進む中、職で困るのは子どもよりも親である自分。自分のお尻をたたいて、社会の変化に対応していく必要性のほうが高そうです。
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