「生物の分類」の変遷について、超文系人間が調べてみた
私たちは、物事を見た目で判断しがちですよね。
生物の分類についても、昔は形の違いをもとにしていたそうです。ただ、実際の進化や分岐については、形とは無関係な点があります。「空を飛べる羽を持っている」という形だけで、「同じ仲間」と一括りにしてはいけないようです。
現在では、見た目ではなく、リボソームRNA遺伝子 (rDNA) の解析をもとにした分類「3ドメイン説」が高校の生物基礎の教科書に掲載されていました。リボソームRNAはすべての生物に存在していて、タンパク質合成に関わる重要な分子とのこと。
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Wikipediaより |
3ドメイン説によれば、原始の生命は、細菌(Bacteria)とアーキア( Archaea、古細菌)とに分かれます。
細菌は現在まで細菌のままなのですが、アーキアからは真核生物(Eucarya) が分岐します。真核生物に分かれる前に、アーキアに細菌が共生し、共生した細菌がミトコンドリアに。
真核生物がさまざまな生物に枝分かれする中で、ミトコンドリアを持つアーキアに光合成細菌が共生し、共生した光合成細菌が葉緑体に。その先で、植物に分かれていきます。
動物については、生命の歴史ではごく最近、真菌(キノコ、酵母、糸状菌などの総称)と分かれたようです。
極論になりますが、私たち動物は、カビ(真菌の一つ)と近しい関係というわけです。むむ。
『カラー図解 アメリカ版 新・大学生物学の教科書 第1巻 細胞生物学』より |
※系統樹の「原生生物」とは、生物の分類の一つで、真核生物のうち、菌界にも植物界にも動物界にも属さない生物の総称
文系の『クラナリ』編集人はにはちんぷんかんぷんなので、文系らしく、「いったい、どうしてこんな流れに……」をベースに生物の分類について調べてみました。
なお、3ドメイン説が高校の生物基礎の教科書に掲載されているとしても、今後、どのように変遷していくのかはわかりません。
生物の分類の変遷
2界説
スウェーデンの博物学者で「分類学の父」と呼ばれているカール・フォン・リンネの著書『自然の体系』(1735年)
植物界
動物界
※大きい順に、界Kingdom>門Phylum>綱Class>目(もく)Order>科Family>属Genus>種Speciesと階層構造を作った
3界説
ドイツの生物学者エルンスト・ヘッケル(1866年) ※ドイツでチャールズ・ダーウィンの進化論を広めることに貢献
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Wikipediaより |
原生生物界(菌類や海綿動物などを指すので、現在の「原生生物」とは異なる)
植物界
動物界
2帝説(真核生物・原核生物)
フランスの海洋生物学者エドゥアール・シャトン(1925年)
Eukaryote(真核生物) 核膜がある=核を持つ生物
Prokaryote (原核生物) 核膜がない=核を持たない生物
5界説
アメリカの生物学者ロバート・H・ホイタッカー(1969年)→アメリカの生物学者リン・マーギュリスとカーリーン・V・シュヴァルツ(1988年)
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ロバート・H・ホイタッカー(Wikipediaより) |
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リン・マーギュリス(Wikipediaより) |
モネラ界(細胞核を持たない原核生物:大腸菌、乳酸菌、納豆菌、ブドウ球菌など)
原生生物(プロチスタ)界(単細胞真核生物:酵母菌、病原体、トリパノゾーマ、ゾウリムシやカサノリなど)
菌界
植物界
動物界
※マーギュリスは、1967年に細胞内共生説を提唱
かつて,生物は真核生物と原核生物の2つに分類されるという考え方があった.アーキアはバクテリアと同じ原核生物であり,またその形態,つまり見た目もバクテリアと似ている.よって,顕微鏡で微生物を“見て”いた時代はアーキアとバクテリアの区別はつかず,原核生物でひとくくりにされていた.
6界説
アメリカの微生物学者であるカール・ウーズ(1977年)
真正細菌界
古細菌界
原生生物界
菌界
植物界
動物界
しかし,1977年に出版された論文において,Carl R. WoeseとGeorge E.Foxは16S (18S) ribosomal RNA(rRNA)の配列解析によって,Methanobacterium thermautotrophicumをはじめとするmethanogenic bacteriaが分類されるグループは,Saccharomyces cerevisiaeなどの真核生物のグループとはもちろんのこと,Escherichia coliやBacillus firmusを含むバクテリアのグループとも異なることを示した1)(ちなみにこの時代はまだシーケンシング技術が発展していなかったため,rRNAの配列を決定したわけではなく,rRNAをRNase T1により切断し,切断断片の類似性を電気泳動した際の移動度で判断していた).つまり,原核生物の中に系統学的に異なる2つのグループがあることが分かったわけである.メタン生成菌は水素と二酸化炭素の存在する原始の大気組成と似ているとされる環境下で生育することから,それを含むグループを太古のbacteriaを意味するarchaebacteria(archaeは“古代の”意味)と名付けた.このarchaebacteriaの日本語訳が古細菌であり,この時点ではまだbacteriaの仲間という認識である.ちなみにこの時点でバクテリアはeubacteria,真核生物はurkaryotesとされた.これによって,いずれアーキアと呼ばれる微生物が,どうやらバクテリアとは少し異なるぞということが分かったわけである.
エオサイト(2ドメイン)説
アメリカの進化生物学者であるジェームス・レイク(1984年)
細菌
アーキア (古細菌)
※古細菌の1系統であるクレン古細菌(別名「エオサイトeocytes」)が真核生物の祖先となったとする説
3ドメイン説
アメリカの微生物学者であるカール・ウーズ(1990年)
細菌:大腸菌、放線菌、藍色細菌
アーキア (古細菌):メタン生成菌、好熱好酸菌
真核生物:藻類、原生動物、変形菌類、キノコ、カビ、コケ類、シダ類、種子植物、無脊椎動物、脊椎動物
※アーキアは深海や温泉、地下など、無酸素で超高温、超高圧、高塩濃度、高い酸性など、極限的環境で生息するものが多く、酸素があると生きられない(嫌気的)。核がない原核生物で、細胞壁を持ち、顕微鏡でなければ見えない。「古細菌」と呼ばれることもあるが、細菌の仲間であると考えてはいけない(1977年の段階では細菌の仲間と考えられていたために「古細菌」と訳された模様)。
1990年になってWoeseらはそれらを用いて進化系統樹を作成し,urkaryotes(eukaryotes),eubacteria,archaebacteriaは系統学的には明確に異なることを改めて示した.そして生物を分類する階層を表すkingdom(界)の上位にdomain(ドメイン)を置き,urkaryotes(eukaryotes),eubacteria,archaebacteriaが相当するドメインをそれぞれEucarya(真核生物),Bacteria(バクテリア),そしてArchaea(アーキア)とすることを提唱した(図1)3).ここで正式に現在アーキアと呼ばれている微生物の分類が誕生したのである
上記引用によれば、大きい順に、ドメインdomain>界Kingdom>門Phylum>綱Class>目(もく)Order>科Family>属Genus>種Speciesという階層構造になります。
とにかく、分類については、今も激しい議論が続いているようです。
現在、真核生物がどこに由来するかを巡る議論は熟成の段階にきている。3ドメイン派でも2ドメイン派でも、どちらの陣営かに限らず、研究者の多くが真核生物の出現には恐らく、細胞内共生として知られる段階が関わっていると考えている。今は亡き生物学者リン・マーギュリス(Lynn Margulis)が提唱したこの仮説は、大昔に生息していた単純な宿主細胞が、何らかの経緯で細菌を取り込み、両者が相互に利益を得る関係を築き始めたというものだ。宿主細胞に捕らわれた細菌は最終的にミトコンドリア(エネルギーを生成する細胞内小器官)に進化し、やがてこれらの細胞が真核生物として現在知られるものになったわけである。
■参考資料
Wikipedia
生物の多様性と進化の驚異
16S rRNA・16S rDNA 腸内細菌学会
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