超文系人間がちょっと細かく調べてみた その3 アミノ酸はどこから来たのかな?
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タンパク質ができるまでの4つの階層構造(タンパク質とは? 放射光科学研究センターより) |
『クラナリ』では、「人体も細胞も、水で満たされた水中国家を形成している」と仮定して、体の仕組みを調べてきました。
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体内で最も多いのは水分で、年齢・性別で割合が変化(イラスト/イラストボックス) |
過去の記事「アミノ酸・ペプチド・タンパク質問題」で触れたように、アミノ酸が50個以上結合したものが、タンパク質と呼ばれています。
アミノ酸を人間に見立て、組体操にたとえると、こんな感じ。
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Wikipediaより |
ですから、「タンパク質はどこから来たのかな?」を知るために、「タンパク質を構成しているアミノ酸がどこから来たのかな?」を調べました。
ここで、回り道になりますが、電磁波について調べておきましょう。
電磁波とは電界と磁界が互いに影響し合いながら空間を光と同じ速さで伝わっていく波のことをいいます。
電界(電場):電圧がかかっている空間の状態、電荷に力を及ぼす空間の性質の一つ
例えば、プラスチックの下敷きをセーターなどでこすって頭の上にかざすと髪の毛が逆立ちますが、このような力を生じさせるような状態のことです。 また、雷雲と大地の間にもかなり大きな「電界」が生じます。
磁界(磁場):磁気が働く空間の状態、電気的現象・磁性的現象を記述するための物理的概念であり、電流が作り出す場
例えば、紙の上に砂鉄をまいて磁石を置くと、砂鉄はその周りにきれいなラインを描きますが、これは磁界の作用です。
北海道電力
波(波動):振動が、ある物質によって伝わる現象
例えば、ロープの一端を手で持って振動させると、その振動がロープ上に伝わりますね。振動が、ある物質によって伝わる現象が 波 です。ここで波を伝えるためにはロープという物質が必要です。このような波を伝える物質のことを 媒質 といいます。例えば音という波を伝えるとしたら空気が媒質で、水面を波が伝わるとしたら水が媒質です。しかし、媒質がなくても伝わる波もあります。それは真空中を伝わることができる波、 光 です。光だけは例外的に媒質がなくても伝わることができるのです。
うーん、何がなんだか……
超文系には理解できません。ちなみに、原子のエネルギーの変化から生まれるとのこと。
ただ、「波長」や「周波数」という、電磁波に関係する言葉には耳なじみがあります。
波長:連続する次の波が来るまでに進む距離
周波数:1秒間の波の回数で単位はHz(ヘルツ)
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くらしの中の電波 https://www.arib-emf.org/01denpa/denpa01-02.htmlより |
上の図を見ると、電磁波の定義がわからなくても、なんとなく、わかった気になれます。レントゲンやら、太陽光やら、電子レンジやら、スマホやらと大きく関わっているのが電磁波なんですね(アバウト……)。
光については、真空中を伝わることができる波(振動が伝わる現象)で、偏光と非偏光があるとのこと。
偏光:電場および磁場の振動方向が規則的な光
直線偏光:ある方向に一定に振動する光
円偏光:振動の軌跡が円を描く光で、回転の方向(右回り・左回り)で右円偏光・左円偏光
楕円偏光:直線偏光と円偏光の組み合わせで、楕円を描くように振動
非偏光(太陽光):無規則に振動している光
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日本女子大学 偏光板を用いた実験より |
地球上に降り注ぐ太陽光は、非偏光なんですね。
このことだけ覚えておいて、ひとまずアミノ酸に進みます。
アミノ酸は、アミノ基(-NH 2)とカルボキシ基(-COOH)の両方の官能基を持つ有機化合物の総称で、次の種類があります。
〇α-アミノ酸:カルボキシ基とアミノ基が同じ炭素に結合
〇β-アミノ酸:カルボキシ基が結合する炭素の1つ隣の炭素にアミノ基が結合
〇γ-アミノ酸:カルボキシ基が結合する炭素の1つ隣の炭素にアミノ基が結合
一般的なアミノ酸はα-アミノ酸で、20種類あります。
アスパラギン酸
グルタミン酸
リシン
アルギニン
ヒスチジン
セリン
トレオニン
システィン
アスパラギン
グルタミン
チロシン
グリシン
アラニン
プロリン
バリン
ロイシン
イソロイシン
メチオニン
フェニルアラニン
トリプトファン
グリシンを除く19種類のアミノ酸は、ちょうど左手と右手の関係のように、互いに鏡に映すと同じ構造のものが存在します。互いに鏡に映すと同じ構造のものは、「鏡像異性体」また「光学異性体」と呼ばれています。
19種類のアミノ酸では、鏡に映った片方がL体(左手型、L-アミノ酸)、もう片方はD体(右手型、D-アミノ酸)と呼ばれています。
実験室でアミノ酸を合成すると、ほぼ同じ量のL体とD体ができます。しかし、生物の体を構成するアミノ酸のほとんどがL体で、これを「ホモキラリティ」といいます。ホモキラリティについて、さまざまな研究がされています。
L体のアミノ酸で占められている原因として、「アミノ酸や糖、核酸塩基といった生命素材物質は、宇宙から隕石によって原始地球にもたらされた」という「宇宙起源説(パンスペルミア説)」が提唱されています。「パンスペルミア」は、「種まき」を意味するギリシャ語です。
アミノ酸については、宇宙空間で、以下のように作られると考えられています。
〇星間分子雲に存在する分子と宇宙線が反応してアミノ酸が生成される
〇小惑星内部で化学反応が起こってアミノ酸が生成される
〇宇宙塵の上でアミノ酸の短い鎖が自然に形成される
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国立天文台野辺山より |
宇宙空間で作られたアミノ酸は、「電磁波」の項で紹介した円偏光でD体が分解されてL体だけが多く残り、L体が隕石に乗って地球にやって来たと考えられているようです。
1969年に地球に飛来した隕石(マーチソン隕石)には数種類のアミノ酸が含まれていて、小惑星「リュウグウ」の試料にも11種類のアミノ酸が含まれていたとのこと。
一方、原始地球を構成する無機物が化学反応を起こして生命素材物質ができたと考えるのが「化学進化仮説」です。アミノ酸も地球でできたと考えます。
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広島大学【研究成果】太古の昔、生物がどのように増殖する能力を獲得したかを実験で解明~生命起源における「化学」と「生物学」の溝をうめる世界初の成果~より |
ウィキペディアでは、「化学進化仮説」が一般的だと紹介されていましたが、ネット検索した限りでは「宇宙起源説」のほうが盛り上がっているという印象でした。
なお、油脂も宇宙空間にあるという論文が発表されていました。
「銀河系は油脂だらけ」、国際研究チーム推定
■参考資料
宇宙生命探査 -地球人としての生き方-01| 物質が生命となった瞬間
東北大学 生命起源
国立天文台野辺山 宇宙の生命素材物質の形成過程を解明:他の惑星系にも生命が存在する期待が高まる
神戸大学 隕石とガンマ線が地球に生命の素を与えた可能性
生命の起源に関してわかっていること: 私の研究史
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