年齢も収入も資産額も関係ないシンプルな投資術 山崎元さんに勝手に教わるお金と生業3 『ほったらかし投資術』
『ほったらかし投資術』(朝日新聞出版)の著者は、経済評論家の山崎元さん(2024年没)、カリスマ投資ブロガーの水瀬ケンイチさんの2人です。2010年に第1版、2015年に第2版、2022年に第3版が出版されました。シリーズ累計30万部突破とのこと。
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| 『ほったらかし投資術』 |
この本については、金融庁のサイトにあった「初めての投資!おススメの一冊ベスト 10」(個人投資家の投票によるランキング)の第4位です。
まずは黒字体質の家計を作り、次に生活防衛費を確保すること、それができてから、投機ともギャンブルとも異なる長期投資に取り組むことなど、投資以前の、一生を通じたお金の取り扱いを初めて意識させてくれた本。余裕資金を定期預金に寝かせておくだけではなく、投資した方がいいということが腹に落ちた。
なお、ほったらかし投資術の詳しい内容は、以下の山崎さんの記事を参照してください。根拠などがしっかりと書かれています。
〇個人のインデックス投資、4年間の進歩 〜「全面改定 ほったらかし投資術」(朝日新書)の変更点〜
https://media.rakuten-sec.net/articles/-/2851#google_vignette
ここでも『ほったらかし投資術』第3版のマニュアルを引用しておきます。
[ほったらかし投資術]実行マニュアル
1 概ね3カ月〜6カ月の生活資金を確保して、普通預金に置く。それ以外のお金を「運用資金」と呼ぶ。2 運用資金の中からリスクを取って運用してもいいと考える「リスク資産」の保有額を決定する。リスク資産の額は「最悪の場合1年後に3分の1程度損をするかも知れないが、同程度の確率で4割くらい儲かる場合もあり、平均的には年率5%程度の収益率が見込める資産をいくら持つか」と自問して決める。「運用資金」から「リスク資産」を差し引いた残りを「無リスク資産」と呼ぶ。3 「無リスク資産」は、「個人向け国債変動金利型10年満期」又は銀行預金(1人1行1000万円の範囲内を守る事)で持つ。4 「リスク資産」は全て、全世界の株式に投資するローコストな(手数料の安い)インデックス・ファンド(「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」など)に投資する。5 iDeCo(個人型確定拠出年金)、NISA、つみたてNISAなどの税制上有利な運用口座を最大限に利用する。これらの口座の運用商品選択は全世界株式のインデックス・ファンド(選択肢の中に無い場合は、後述する「全世界株式インデックス・ファンドに準ずる商品」)とする。6 税制上有利な運用口座を活用しつつ、適宜積立投資で投資を追加するのも良い。
山崎さんは、お金を貯める場合に、「何に使うか」「いくらまで貯めるか」といった目的・目標を、運用に結び付けることをよしとはしていません。お金はどんなものとも交換が可能な柔軟性があるため、お金に意味を持たせるのはその長所を失うことだからだと考えられます。
3~6カ月分の生活資金が手元にあれば、残りは投資に回し、例えば子どもの教育費(入学金など)が必要になったらその金額だけ投資を取り崩せばいいということです。
加えて、老後については貯蓄額と運用を別々に考えることが大事だといいます。一概に「2000万円が必要」といえるはずもなく、老後の計画や金銭管理のやり方などは一人ひとりで違うからです。
老後の費用を計算するツールは、以下のウェブページにあります。
〇人生設計の基本公式
ここでは、現在の貯蓄額が1000万円の4人世帯で実行するケースを考えてみます。
ほったらかし投資術 4人世帯の例
1 ある家計調査では、2021年の4人世帯の1カ月当たりの支出額は、約32万円でした。
1カ月の支出が32万円と想定すると、6カ月分の生活資金は192万円です。これを普通預金に入れておきます。
1000万円(貯蓄額)-192万円(生活資金)=808万円(運用資金)
2 リスク資産の決め方は、個人差が大きいのではないでしょうか。私たちは一般的に、「もうかるなら確実にもうけたくて、損をするのはなんとか避けたい」という心理状態になりがちです。投資額が300万円のときと600万円のときで、「最悪の場合1年後に3分の1程度にへるかも知れないが、同じくらいの確率で4割儲かる場合」について計算してみましょう。
〇投資額が300万円
最悪:100万円が減って200万円
最高:120万円が増えて420万円
長期投資を行った場合に1年当たりで増えると見込まれる:15万円
〇投資額が600万円
最悪:200万円が減って400万円
最高:240万円が増えて840万円
長期投資を行った場合に1年当たりで増えると見込まれる:30万円
正負の法則で「最悪と最高は同じ割合で起こる」のであれば、「平均的には年率5%程度の収益率が見込める」ことになるのでしょう。長期投資であれば、ある程度の額を運用したほうが、よさそうに思えます。また、リスクに応じた収益を長期的に積み上げる(リスクプレミアムを集める)ようにするのが投資の鉄則といいます。
というわけで、600万円をリスク資産とします。
808万円(運用資金)-600万円(リスク資産)=208万円(無リスク資産)
3 無リスク資産のうち、10年ほどは使わない見込みの100万円を個人向け国債変動金利型10年満期に、108万円を銀行の定期預金にします。
●個人向け国債(変動金利10年型)
半年毎に適用利率(クーポン)が変わる「変動金利」を採用。
4・5 リスク資産の600万円は、iDeCo(個人型確定拠出年金)、NISA、つみたてNISAを上限まで使って、信託報酬(投資家が支払う経費)が年率0.05775%以内(税込)と安いeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)で運用します。それだけで「卵を一つのかごに盛る」のを避けられ(分散投資)、投資先を自分で考える必要はありません。ほったらかしにしていても、利益が利益を生む「複利効果」で雪だるま式に資産が増えていきます。
●個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)
iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)は、確定拠出年金法に基づいて実施されている私的年金の制度で、加入は任意です
iDeCo(イデコ)は口座の運営・運用に、手数料がかかります。
加入・移換時手数料(初回1回のみ):2,829円加入者の方や企業型確定拠出年金からの移換者の方(加入者及び運用指図者)について、加入時又は移換時に手数料として2,829円をご負担いただきます。加入者の方については、初回の掛金又は企業型確定拠出年金から移換された個人別管理資産のうちから、企業型確定拠出年金から個人別管理資産を移して運用指図者となる方については、移換された個人別管理資産のうちからそれぞれ差し引きます。加入者手数料(掛金納付の都度):105円加入者の方には、手数料として掛金納付の都度105円をご負担いただきます。還付手数料(その都度):1,048円国民年金の未納月が判明した場合等、当該月の個人型確定拠出年金(iDeCo)の掛金を加入者にお返し(還付)する必要が生じた場合、手数料として還付金のうちから1,048円を差し引きます。
上記に加えて、信託銀行へ毎月66円の手数料を支払います。金融機関によっては、さらに手数料が取られることも。
そのほかの手数料が取られない場合は105+66=171円が毎月かかり、年額2052円となります。
iDeCoの掛け金は、所得控除となります。会社員・公務員でなければ、確定申告で手続きします。
●NISA
株式・投資信託等への投資から得られる配当金・分配金や譲渡益が非課税
●上場投資信託(ETF、Exchang Trade Fund)
ETFも投資信託もどちらも投資信託ですが、大きな違いは、上場しているか上場していないか(証券取引所を通じて取引するのかしないのか)の違いです。ETFと投資信託では、一般的にETFのほうが、購入時手数料や保有期間中の手数料(信託報酬)が比較的安くなっています。投資信託の中には、ノーロード(No-load)と呼ばれる購入時手数料が無料の投資信託もあります(ただし信託報酬はかかります)。
(例)上場インデックスファンドTOPIX
資産運用の対象外にすべき金融商品
外国債券
金などのコモディティ(商品)投資
FX取引 経済状況や社会情勢によって、不安定で予期せぬ動きをする
外貨預金 「外貨を持つこと」と「外国資産を持つこと」は違う、外貨をそのまま持っていても日本で使う機会がない、外貨⇔日本円の際に手数料がかかる
不動産投資(マンション投資など)
毎月分配型のファンド
成功報酬型のファンド
プライベートバンク
個人向けヘッジファンド
デリバティブ(金融派生商品)
■主な参考資料
投資信託の「今」について山崎元さんと語り尽くした3時間
ただ広く人に勧められるかという意味でロジカルに考えれば、時価総額加重のポートフォリオの範囲の広いインデックスファンドっていうことにならざるを得ないのかなっていうふうには思いますよね。
故・山崎元氏との共著「全面改訂第3版 ほったらかし投資術」が15刷決定&シリーズ累計30万部突破!
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