ガスの原料について、超文系人間が調べてみた

 ガスという言葉を作ったのは、フランドルの錬金術師、ヤン・ファン・ヘルモント(1579‐1644年)で、ギリシャ語で混沌を意味する「chaos(カオス)」がガスの語源なのだそうです。
木炭を燃やした時に出る気体の研究を行い、その気体のことを「気のガス、森のガス gas sylvestre」と呼びました。今日の二酸化炭素のことでした。

この当時には既に、果実等の発酵の際に生じる「空気」や、ろうそくの炎を消す「空気」など、大気とは若干性質の異なる「空気」があることもわかってきていました。

ヘルモントは大気に似た、当時としては捕らえどころのない気体のことを、ギリシャ語の「混沌(カオス Chaos」に因むベルギー・フランダース地方の方言で書き記し、それがなまって「ガス」と発音されたのが、今日の「ガス」という用語の起源とされています。

 木炭から見つかったガスですが、私たちが利用している都市ガスは何を原料にして作っているのでしょうか。

 またここで、超文系人間による、長く、曲がりくねった物語が始まります。

石炭(写真/ゆんフリー写真素材集

 石炭は、およそ数千万年から3億年かけて、植物が石に変わったものです。

 植物を構成している主要な元素は、炭素と水素と酸素。そこから、長い年月をかけて水素と酸素が抜けて炭素だけが多く残って、石炭になったとのこと。炭素が濃縮される度合いで、高いものから無煙炭、瀝青炭 、亜瀝青炭、褐炭、泥炭に分類されています。

 石炭は紀元前にすでに知られていたようです。中国では、約3500年前から使われていたとのこと。また、古代ギリシャ・古代ローマで、石炭は「燃える石」と呼ばれていたそうです。

 ちなみに、石油のもとになっているのは、1億年ほど前の植物性プランクトンと考えられています。こちらも古代からその存在は知られていて、紀元前3000年のメソポタミアでは立像の接着にアスファルトが使われていたようです。古代エジプトでも、アスファルトはミイラの防腐剤として使われていました。


 時代は飛んで、14世紀のイギリスでは、家庭用暖房燃料として石炭の需要が急増し、大気汚染が問題になっていました。1306年に、職人が炉で石炭を焚くことを禁止したとのこと。
 これだけ石炭が使われていたわけで、炭鉱がイギリス各地にあったと思われます。

 1709年、イギリスのダービー父子(ふし)が石炭からコークスを作ったとのこと。コークスとは、石炭を乾留(蒸し焼き、空気が入らないようにして熱して揮発性成分のガスと不揮発性成分のコークスに分ける)によって炭素を残した燃料です。

 イギリスの発明家であるトーマス・ニューコメン(1664‐1729年)が、鉱山の排水のために、蒸気機関を作りました。1712年のことで、これが最初の実用的な蒸気機関とされています。
 このニューコメン機関と呼ばれた蒸気機関は、炭鉱の余分な水をくみ出すために使われていましたが、動かすのに掘り出す石炭の3分の1を消費するというデメリットがありました。

 ジェームズ・ワット(1736‐1819年)はニューコメン機関の改良を行って、蒸気機関を実用化したとのこと。
 それがいつなのかという、諸説があり過ぎて、1765年、1769年、1776年とバラバラ。最も多いのが1769年でしょうか。

 さておき、ワットによる蒸気機関の改良でイギリスで産業革命が起こりました。この蒸気機関の燃料として,石炭は大量に使われるようになりました。


 ワットの会社では、スコットランドの技術者・発明家のウィリアム・マードック(1754 - 1839年)が働いていました。マードックが、1792年に球形の金属容器で石炭を加熱して可燃性ガスを取り出したとのこと。こうして得たガスの炎を、1797年にマードックが照明に利用したのが、ガス灯の始まりです。

 日本では、1872(明治5)年10月31日(旧暦9月29日)に、横浜の馬車道にガス灯が点灯しました。そのようなわけで、10月31日は「ガスの記念日」となっています。ガス灯は、文明開化の象徴となり、急速に普及していきました。
横浜 馬車道の記念レリーフ(写真/東京ガスサイトより)


 日本でガスが使われ始めてからの約80年間は、ガスの主な原料は運搬や貯蔵がしやすい石炭でした。

 1950年代に中東やアフリカで相次いで大油田が発見されたことから、石油が大量に安価に手に入るようになりました。1960年代には、石油を高温で熱分解して取り出されたガスが都市ガスの原料として使われるようになっていきました。

 油田で採掘された原油を蒸留・分解することで、ガソリン、灯油、軽油、重油などのさまざまな石油製品ができます。
 そのうちの一つが、ナフサ。ナフサは都市ガスの原料に使われていました。
 また、ブタン(プロパン、LPガス)も都市ガスの原料に使われているとのこと。

液化石油ガス(Liquefied Petroleum Gas:LPG、以下「LPガス」と称する)は、炭素数が3~4の低級炭化水素を主成分とする燃料の一種であり、一般には「プロパン」「ブタン」などとも呼ばれている。

LPガスは、常温常圧で気体であるが、加圧または冷却すると液化する。液化された状態では、その体積は気体の状態と比較して約250分の1に縮小するので、輸送、貯蔵、消費の各段階で簡便に取り扱うことができる。灯油、ガソリンなどの液体燃料と都市ガスなど気体燃料のちょうど中間に位置付けられる燃料である。

このLPガスが日本で市場に出回り始めたのは、1955年ごろからである。この背景には、石油精製業および石油化学工業の急速な発展によって、副産物として出てくるガスから生産されるLPガスが増加したことがある。当初は主として家庭用および業務用の容器詰めプロパンとして販売され、木炭、石炭、練炭などに代替して需要を伸ばすとともに、一方、同時に生産されるブタンについては工業用の用途を開拓してきた。

また、1961年からは中東からLPガスの製品輸入が開始され、1962年にはタクシー燃料としての利用が始まった。

LPガスは、現在では家庭用・業務用を始めとして、工業用、都市ガス用、自動車用、化学原料用など幅広い用途で使われており、2017年度の需要は1,468万トンである

 現在では、都市ガスの主な原料が液化天然ガス(LNG)です。液化天然ガスとは、天然ガスを-162℃まで冷却し液化させたもので、ほとんどが海外から船で輸入されています。
エネルギー白書2021第4節 二次エネルギーの動向より


 超文系人間が調べたところ、時代とともに、ガスの原料は石炭→石油→液化天然ガス(LNG)と変化しています。今後は「クリーン」「二酸化炭素を排出しない」という方向で、さらに進んでいくのでしょうね。


 余談ですが、2023年10月20日に、千葉県市川市は地域新電力会社を2025年2月頃に設立する方針を発表しました。

 市の計画では、地域新電力会社はごみの焼却熱による発電を行っているクリーンセンターの余剰電力を活用。買い取った後に公共施設や市内の充電設備、電気自動車(EV)などに供給する。太陽光発電やバイオマス発電を加えることも想定している。

 いわゆる「ごみ発電」です。

 日本ではGX(グリーン・トランスフォーメーション)国家戦略が推し進められていることから、環境庁では脱炭素先行地域を選定しています。千葉県だと、千葉市が選ばれています。
 千葉市では、新港クリーン・エネルギーセンターでごみ発電が行われています。

 
■参考資料
資源エネルギー庁ホームページ

東京ガスホームページ


第2章 大気汚染の歴史

人とエネルギー資源の歴史

イギリス石炭鉱業と初期鉱山立法

新疆で中国最古の石炭使用跡発見!石炭使用開始の歴史千年以上早まる

石油利用のはじまり - 石油情報センター

石油のもとは植物プランクトンだったということをご存じですか?


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