【『わが投資術』で考える就職先・取引先選び】個人投資家のスクリーニングの手法

 人生は、選択の連続です。

 選択の前段階で行われるのが、スクリーニング(screening)ではないでしょうか。
 世の中は、大量のもの(情報も含む)であふれ返っています。そこから不要なものを除く作業が、スクリーニング。選別、ふるい分けとも呼ばれるプロセスです。
 こうして残ったものの中から、選び取るのが選択といえるでしょう。



  『わが投資術 市場は誰に微笑むか』(著/清原 達郎 講談社)では、著者のスクリーニングの手法が紹介されています。本格的に投資に取り組みたい人は、本書を熟読するといいでしょう。そうではない個人投資家には、次の提案が行われていました。
 
 個人投資家の方で自分にはそういうスクリーニングはできないという人は、とりあえず低PER、低PBR銘柄の中からいけそうな銘柄を選び、ホームページで決算短信を見てネットキャッシュ比率を確認してもいいかもしれません。PBRは低くても「この会社は固定資産ばかりで現金にまったく余裕ないわ」などとチェックするだけでもいいでしょう。
『わが投資術 市場は誰に微笑むか』103ページ
※PERやネットキャッシュ比率などについては後述

 著者は、投資をする・しないを検討する以前に、自分の持っている資産や生活費を確認することを勧めています。提案の多くは、ほったらかし投資と似ていました。

個人投資家への提案

○生活が切羽詰まった人間がやるべきことではない →ほったらかし投資と同じ
○信用取引(ショート〈空売り〉など)は避ける
○新NISAの口座を開く →ほったらかし投資と同じ
○日本の大型株に分散投資をしたいならTOPIXのETFが一番合理的 →ほったらかし投資と似ている
○余裕資金が200万円あれば、100万円をTOPIXのETF、残り100万円を小型株投資
○手持ちの金を全額株式につぎ込まない →ほったらかし投資と同じ
バリュー投資を行う
○未公開株は決して買ってはいけない
○金融商品の手数料には注意する →ほったらかし投資と同じ

 上記の提案を前提として、冒頭で紹介した「とりあえず低PER、低PBR銘柄の中からいけそうな銘柄を選び、ホームページで決算短信を見てネットキャッシュ比率を確認」を確認していきましょう。なお、『わが投資術』では、著者が独自の観点からPERやネットキャッシュ比率を定義しています。

 まずは、本書での用語を確認していきましょう。

 小型株の「小型」とは、時価総額500億円未満であることを指しています。

時価総額による株式の区分

大型株 時価総額3000億円以上
中型株 時価総額500億円以上、3000億円未満
小型株 時価総額500億円未満

 また、「割安」とは、PERが10倍以下、かつ、ネットキャッシュ比率が1以上を指しています。
 「成長性」については、中小企業の場合は、経営者が企業を成長させる強い意志を持っているかどうかが判断基準です。

成長性見極めポイント

1.経営者がその企業を成長させる強い意思を持っているか(必要条件)
2.社長と目標を共有する優秀な部下がいるか
3.同じ業界内の競合に押しつぶされないか
4.その会社のコアコンピタンス(強味)は成長とともにさらに強くなっていくか
5.成長によって将来のマーケットを先食いし、潜在的マーケットを縮小させていないか
6.経営者の言動が一致しているかどうか

 ここから、実際のやり方です。


小型株投資のやり方

(1) 小型株の中でPBRとPERを見て、割安な株の中から20銘柄ぐらい選んで登録して株価の動きをモニターする。
『わが投資術 市場は誰に微笑むか』139ページ

PER(株価収益率)

 PERは株価収益率(Price Earnings Ratio)。1株当たりの当期純利益(単に1株当たり利益、1株益ともいう)に対して株価が何倍になっているかを示す指標です。

PER=株価/1株当たりの当期利益
  =時価総額/当期利益


※通常は、株価をEPS(1株当たり純利益)で割って算出 
※企業が将来に渡って向こう何年間利益を上げ続けられるかを表すため、「期待度」とも呼ばれる
※PERの平均は、日本の上場企業全体では15倍程度
※PERが10倍以下だと、その企業が投資家から期待されていない=割安
※数値が低ければ割安
※利益が出ていない赤字企業では、この指標は使用できない

短期投資では、PERが15倍以下であるかどうかに着目


PBR(株価純資産倍率)

 株価純資産倍率(Price Book-value Ratio)のこと。純資産は、企業の株の資産価値です。
 PBRは株価に対して、企業がどれくらい資産を持っているかの指標で、PBRが1倍のとき、株価と1株当たりの純資産は一致しています。 ですからPBRの目安は「1倍」です。
 PBR=1を上回るか下回るかで割安かどうか判断されます。1を下回ると割安、1を上回ると割高です。


PBR=株価/1株当たりの純資産
  =時価総額/純資産


※赤字になると一般的に企業の固定資産の価値は簿価よりも下がり、評価額が正しく算出できるとは限らない
※あくまでも理論上の話であるPBRは、評価基準としてあまり役に立たない

長期投資では、PBRが1倍を下回ると割安


ネットキャッシュ

企業が持っている現金や預金、有価証券(資産)から有利子負債を引いた金額

ネットキャッシュ=流動資産+投資有価証券×70%-負債

※企業が持つ簿価と同額で売れる資産に、企業の持つ現金を足し、全負債を引いたもの
※キャッシュリッチ(金余り)、つまり、会社が破綻した際、同じ値段で売れる資産がどれくらいあるかを示す
※70%をかけているのは、一般的にコストが簿価を大幅に下回っていることが多く、現金化すると税金を払わないといけないため(税金分30%を引いている)

ネットキャッシュ比率=ネットキャッシュ/時価総額
          =(流動資産+投資有価証券×70%-負債)/時価総額

※ネットキャッシュ比率が1とは、「会社がただで買えるほど割安」ということ(お金を借りて時価でその会社の株を全部買うと、借りたお金は会社にある現金や換金可能な流動資産を売って返済できる)
※比率が1を超えれば、借りた金でその企業の株を買えば、資産を売って返金できしかも余りの現金も手に入るという、“非常識”な事態も可能になる
※流動資産は現金と同じ扱いとなる
※PERなどによる検証も加える
※事業の魅力や成長性もチェックする



(2) いろいろな追加情報を得ながら一番いけそうな銘柄から1銘柄10万円程度ずつ買っていく。または、相場全体が急落して20銘柄がすべて大きく下げたら、大きく下がった10銘柄を一気に10万円ずつ買う。
『わが投資術 市場は誰に微笑むか』139ページ

※会社のホームページを見る(決算説明会の資料、決算短信など)
※四季報をチェックする
※リサーチにマスメディア(投資について書かれた書籍や雑誌など)は必要ない(情報収集にお金をかけ過ぎない)
※最初の銘柄選びの際に真剣に考える
※3~5年は買った株を持ち続ける
※業績が伸びて株価が3割上がってもすぐには売らない(売るときの見極めは「違和感」)

 以下は、『わが投資術』の覚書です。

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 現実的には「大勢と同じ考えやポジションを持っていると間違ったときに大損しやすく、少数派の考えやポジションであれば間違っても損失が少ない」ということなのでしょう。平たく言えば、「自分の考えはみんなと同じ」なら投資のアイデアにはなりません。「自分の考えはみんなと違う」時に投資のアイデアになるのです。
 そんな投資のアイデアを市場は歓迎し貪欲に取り込もうとします。市場があなたに冷たい態度を取るとしたら、あなたが「自分でよく考えずに大衆に迎合したとき」だけです。
18ページ

株式市場で人気の圏外にある「割安小型株」は株式市場での参加者が少ない(というか投資家に無視されている銘柄が多い)ので、「何が株価に織り込まれているか」が比較的簡単にわかります。だいたいは「この会社のビジネスには将来性はなく減益が続くだろう」あるいは「この会社には未来がないので無視してかまわない」ということが織り込まれているのです。
20ページ

 「投資のアイデアを探す」ということは「株価に織り込まれていないアイデアを探す」ということです。もともと少数派だった自分の考えやポジションが「実は多数派になっていた」ことを発見した時は、何らかのアクションを取ったほうがいいかもしれません。大きなリスクを抱え込んでしまった可能性がありますから。個人投資家が少数派でいることのメリットは「株式市場の売買手数料がとても安い」ことにも支えられています。自分だけが開違った判断をして、その誤りに気づいて反対売買をしても取引コストがとても低いのでほとんど損をしないのです。
20-21ページ

 科学者や医者のほとんどの主張は仮説です。もっとそれは有力な仮説なのかもしれませんが仮説は仮説です。
24ページ

 株式投資を考える際に、この「バイアス」はとても大事です。
 大多数の投資家の判断に強いバイアスがかかっていれば投資のチャンスです。
29ページ

 投資判断に必要な情報はどうやって集めたらいいのでしょうか? (中略) とにかく個人投資家の方は節約をして株を買う元手をためることが何より大事です。
31ページ

 通常、市場は合理的です。市場が織り込んでいる情報はどの投資家が持っている情報より幅広く深いでしょう。だから、大型株で投資家が儲けるためには「市場が見せる一瞬の隙」を逃さないことです。
44ページ

私の結論は「個人投資家が日本の大型株に分散投資をしたいならTOPIXのETFが一番合理的」ということになります。
50ページ

大型株に比べると、中小型株は社長の個性や良し悪しによる業績への影響が圧倒的に大きいのです。 大企業のようにたくさん経営資源があるわけではないですから。
132ページ

日本人の個人投資家なら中小型の日本株に投資しないのはもったいないと思いますよ。
140ページ

 株式投資のように確率的に考えなければいけないゲームでは 「決めつけ」は禁物です。決めつけたとたん、その後に出てくる有益な情報を見逃しやすくなってしまいます。
176ページ

 手数料の開示という意味で最も卑劣なのが「仕組債」です。また、「ラップ口座(ラップファンド)」も良心的とはとても言えません。
297ページ
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