上田自由大学と、「大学」と名のついた動画その他

  1947(昭和22)年3月31日に制定された学校教育法の135条1項で、「○○大学」は学校教育法で定められた正規の大学ではない教育施設では用いてはならないとされています。


要するに、「学校教育法上の大学」でない「教育施設」は、「大学」という名称を用いてはならない、ということになります。

なぜこういう規制があるのかというと、この名称を見た人に、”ここは、学校教育法上の学校(=学校教育法上の設置認可を受けた学校)なんだな”、という誤認を生じさせるおそれがあるからです。




 学校教育法が制定される前の大正デモクラシーの時代(大正後期~昭和の初め)に、長野県上田市「上田自由大学」という運動が展開されていました。

 上田自由大学は、university・collegeと誕生の過程が似ています。

 しかし、university・collegeをまねたのではなく、自然発生的に起こったもののようです。 1920年に起草された『信濃自由大学趣意書』には、次のような文言があるとのこと。

自由大学の運動は日本で起きたものです。しかも長野県で経験してきた大学拡張運動の自然の発展としてかうしたものを産んだのであります。西洋にさうした類似の運動があるかどうか、そんなことはまるで知らない。「自由大学」という名も、それらの勇気に富んだ青年の中から、自然に湧き出て来たものであって、強いて誰が命名したとも言えない。

教育とは人格の自律を完成する為のものだとするならば、教育は青年である十数年の間だけ行はれて其れで止む可きものでは無い。又同時に人間の生活の中に、教育を受ける期間と、生産的労働に従事する期間と、截然たる区別を生じせしむ可きものでも無い。学校とは、民衆が其れ々々の生産的仕事に従事しつゝ、生産を尽くして永遠に、或は学び、或は討論し、又或は研究する為めの、其の機関である。

 明治維新で日本に導入された欧米の資本主義。その後の貧富の差の増大、農村の繁栄と荒廃(好景気に後の急激な不況)などの中で、働くことと学ぶことを切り離す効率化への危機感、それから、手仕事(労働)や学び、芸術の喜びを、言葉や絵などで表現する場が、自由大学だったのかもしれません。


 現在、日本の学校教育法で定められた正規の大学ではない「大学」には、運営が自治体とそうでないものがあります。自治体が運営していない大学についてはシブヤ大学をこれまでに紹介しました。

 いろいろな意味で有名になったのは、2019年に開設された「中田敦彦のYouTube大学」。

歴史、経済、哲学、ビジネス書など、幅広いテーマをわかりやすく解説しています。中田さんの独特な話し方やテンポの良い進行が特徴で、難しい内容でも楽しく学べると評判です。

 こんな評価がある一方で、不正確という指摘も多々ありました。


〇民間が運営する、学校教育法で定められた正規の大学ではない大学
中田敦彦のYouTube大学

シブヤ大学
哲学、心理学、町歩き、デザイン

自由大学
占い、ビール醸造、本作り
※上田自由大学とは無関係

リベラルアーツ大学
「本当の自由を手に入れる お金の大学」
※投資などお金の話題がメインで、リベラルアーツ(教養、古くは文法・修辞・論理・数学・音楽・幾何・天文の7科)ではなさそう……

■主な参考資料
大炎上「オリラジ中田のYouTube大学」なぜ人は信じ込んだのか?

自由と大学をめぐる歴史的な省察

学びに飢えた青年、自ら創った自由の大学 運動発祥の地、長野・上田

上田自由大学の成立とその展開
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