【ほったらかし投資勉強会】「それは消費? 投資?」で、投資の原則1「長期」について考えてみた

 「投資」という言葉は、日常的に、さまざまな場面で使われています。

「勉強会に参加することで自分に投資している」
「スポーツジムに通ったり、エステに行ったりして、若さを保つのも自己投資」
「教育投資の一環で、子どもを塾に通わせている」




 実は、上のすべては投資ではなく消費

○投資:資産を投じる
○消費:費やして消える

 投資とは、「将来的に役に立ちそうなこと全般にお金を使う」というニュアンスで使われがちですが、経済関連では違うのです。
 投資には次の3つがあるとされています。

○民間の設備投資
○民間の住宅投資
○公共投資

 設備投資の「設備」には、形がある有形固定資産(土地、建物、機械など)と、形がない無形固定資産(ソフトウェア、特許権、商標権など)があり、どちらも資産としての価値があります。ただ、無形固定資産についても、ある意味では、「権利」として形になっているといえそうです。

○将来、商品を作って稼ぐために、今、お金を出して工場を建てる→民間の設備投資
○将来、商品を作って稼ぐために、今、お金を出して特許権を得る→民間の設備投資
○将来、住宅を売ったり貸したりするために、今、お金を出して住宅を建てる→民間の住宅投資
○将来、物流を活発にして経済を活性化し、税収を増やすために、今、橋や道路を整備する→公共投資

 このように、費やして消えるものではなく、将来のリターン(収益)を得ることを目的に資産を投じるのが、投資とされているのです。また、今の消費をあきらめて、将来のために資産を使います。

 「勉強会に参加すること」も、将来のリターン(収益)を得ることを目的に資産を投じるように思えます。ただ、教育というのは目に見えないし、教育で得た知識だけでは「権利」として形にはならないので、消費と区分されています。頭にある知識だけでは、資産としての価値はないということ。
 このように、自分にとって有益か無益か、役に立つか立たないか、ましてや好きか嫌いかなどは、投資とは関係がありません。

投資ではなく消費


 ほったらかし投資での「投資」は、自分のお金をどこかの投資ファンドに投じて、リターン(収益)を得ることを指しています。

 自分の1万円が投資ファンドを経てどこかの企業に渡り、工場が建てられたり、特許権が取得されたりする形で使われ、いい商品やサービスができて、数年にわたって稼げた分が、2万円のリターンとして自分に戻ってくるのです(リターンは戻るという意味なので重複しますが……)。「今の1万円は、将来の2万円と同じ価値がある」という表現もできそうです。

 現在のお金と、将来のお金は、同じ額でも価値が異なることを、別の視点で考えてみましょう。
 例えば、1万円の宝くじに当たったとします。

 今すぐ1万円を受け取りますか。
 1年後に1万円を受け取りますか。

 多くの人は、今すぐに1万円を受け取るでしょう。理由は次の3つです。
○1万円を銀行に預ければ、将来、利息を受け取れる
○これから物価が上がったら、1万円では買えないものが現れる
○宝くじをなくしたり、宝くじの制度が変わったりして、1年後に1万円を受け取れないかもしれない

 このように、1年後の1万円よりも、現在の1万円のほうが価値が高いのです。1年後の1万円と現在の1万円との価値の開きが、ざっくりいうと「割引現在価値」です。

 正しくは、将来の価値をある率で割り引いたのが、割引現在価値です。
 例えば1万円を1%の金利で銀行に預けると、1年後に1万1円になります。そのため、「1年後の1万1円は、現在の1万円と同じ価値」と見なすのです。
 元本の1万円は、将来価値である1万1円の割引現在価値で、その割引率は1%であるということになります。
 将来価値の計算式は以下のとおりです。
キャッシュフローと現在価値経営財務Ⅰより

FV = PV(1 + r)^n
10001万円=10000万円(1+1%〈0.01〉)×1年の1乗

○FV (Future Value):将来価値
○PV (Present Value):現在価値
○r(rate):割引率(金利)
○n (number of periods):期間(年数)

 割引率(金利)については、将来得られる利益(価値)が確実であれば、低くなります。不確実であればあるほど、割引率が高くなります。

 お金を借りる際に、銀行よりも街金(中小規模の消費者金融)のほうが金利が高くなっています。これは貸したお金が返ってこない確率、つまりリスクの高い客が街金を利用しているからです。

 銀行からお金を借りる際の金利が年1%で、100円を借りたら、1年後には101円を返します。2年後は101円×1.001=101.101円、3年後は101.101円×1.001=101.2021円と、返済額は増えます。
 街金の金利が15%だと、1年後は115円、2年後は132.25円、3年後は152.0875円です。
 同じ100円を借りたとしても、3年後には、街金は銀行よりも50.8854円も多く返済しなければならないということです(※)。
街金といえば『ナニワ金融道』


 街金は、「全額が返ってくるかもしれないし、半額かもしれないし、返ってこないかもしれない」というリスクを負担する代償として、銀行の1%に14%を追加して、15%の割引率(金利)でお金を貸しています。

 資産運用も、銀行や街金と同様に、私たちの今あるお金(資産)をリスクが低いところや高いところに配分します。ここでのリスクは、リターン(収益)の変動、つまりブレの大きさを指しています。

○リスクが少ない=元本保証がある預貯金など
○リスクが大きい=元本割れもあり得る株式など

 リスクを負担する代償として、元本保証がある預貯金では割引率(金利)が低くなっています。一方、元本割れもあり得る株式では、その分だけ割引率が高いのです。
 リスクを負うことで上乗せされる利益、言い換えると、リスクを負担する代償として得られる追加的な利益がリスクプレミアムです。似た言葉が「ハイリスク・ハイリターン」です。株価や債券価格などには、リスクプレミアムが織り込まれます。
一攫千金を狙う大航海時代の冒険もハイリスク・ハイリターン



 投資とはリスクプレミアムのコレクション(※)だと、『ほったらかし投資術』(朝日新聞出版)では述べられています。リスクを負うことで、無リスク資産に上乗せされるリターン(収益)を集める(コレクション)には、時間が必要です。

 世の中では、株式投資について次のように説明されがちです。

「資本主義経済(または企業)の成長を買うものだ」
「人間には欲望があるから資本主義経済は成長し続ける」
「応援したいと思う会社の株式を買ってみよう」

 しかし、成長している企業の株でも、業績や財務状況、将来性などを考慮した適正価格(※※)よりも高い価格で購入したら、収益は小さくなります。
 逆に成長しなくても(マイナス成長)、適正価格の株価であれば、投資でリスクプレミアムを得ることができると『ほったらかし投資術』で述べられています。

 景気やイノベーションなどで、株価はかなり変動します。しかし、占い師でもない限り、いや、占い師でも、未来を予測することなどできません。また、私たちが応援したところで、その会社が成長するかというと、そうでもありません。

 ですから、自分にとって有益か無益か、役に立つか立たないか、ましてや好きか嫌いか(応援したいかしたくないか)などは、投資とは関係がありません。

 投資においては、適正価格で購入した株式を長く保有して、リスクプレミアムの実現を待つことになります。ですから、投資の原則の一つが「長期」なのです。

■ 『ほったらかし投資術』 以外の主な参考資料

インフレと株式投資の関係を整理する
https://media.rakuten-sec.net/articles/-/36156?page=1

[本来あるべき理論的な株価である理論株価(P、円)の、ネットで散見した計算法] 
 1 理論株価(P、円)=PER (株価収益率)× BPS(1株当たりの純資産) × ROE(自己資本に対する当期純利益の割合)
2 理論株価(P、円)=EPS(1株当たりの利益)×PER (株価収益率)


1 先のことは誰にもわからない
2 世の中にうまい話はない

『経済ってそういうことだったのか会議』 著/佐藤 雅彦、竹中 平蔵  日本経済新聞社


※借金などと関連して「等比数列の和」

 ある規則性に従って並んでいる数が数列です。

 例えば、2 5 8 11 という数列。
 これは、前の数に3を足したら後ろの数になる、言い換えると後ろの数よりも前の数が常に3少ない数列です。これを等差数列といいます。

 では、 2 6 18 54 という数例はどうでしょうか。
 前の数に3をかけたら後ろの数になる、言い換えると後ろの数を前の数で割ると3になる数列です。これを等比数列といいます。
 等比数列の初項をa1、公比をrとすると、n番目の項anは以下の式で表されます。
an = a1× r^(n-1)
54=2×3×3×3

 等比数列の和は、次のとおりです。
2+6+18+54=80

等比数列の和の公式


 公式に当てはめてみましょう.。
80=2(1-3×3×3×3)÷(1-3)
 =2×(1-81)÷-2

■参考資料
等比数列の公式まとめ(一般項・和の公式・証明)



※※株価を判断する主な尺度がPER・PBR

 PERは株価収益率(Price Earnings Ratio)。株価が「1株当たりの当期純利益(単に1株当たり利益、1株益ともいう)」の何倍になっているかを示す指標です。
 一般的に上場企業の場合、PERの水準は「15倍」とされています。 日本の企業におけるPERの全業種平均がおよそ15倍だからです。
 PERが小さいほうが、株価は割安ということになります。

 PBRは株価純資産倍率(Price Book-value Ratio)のこと。純資産は、企業の株の資産価値です。
 PBRは株価に対して、企業がどれくらい資産を持っているかの指標で、PBRが1倍のとき、株価と1株当たりの純資産は一致しています。 ですからPBRの目安は「1倍」です。
 PBR=1を上回るか下回るかで割安かどうか判断されます。1を下回ると割安、1を上回ると割高です。
 市場全体が値下がりしている場合は、優良企業でも株価が下がり、PBRが1以下で低迷することがあります。そうした株は相場全体が回復したときに、他の銘柄に比べて適性価格に戻りやすいため、割安と考えられています。



■参考資料
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