【『わが投資術』で考える就職先・取引先選び】 人生で損をしない「会社の辞め方」
『わが投資術 市場は誰に微笑むか』(講談社)の著者のプロフィールは、以下のとおりです。
清原 達郎(きよはら・たつろう)Taturo Kiyohara投資家1981年、東京大学教養学部(国際関係論)卒業。同年、野村證券に入社、海外投資顧問室に配属。スタンフォード大学で経営学修士号(MBA)取得後、1986年に野村證券NY支店に配属。1991年、ゴールドマン・サックス証券東京支店に転職。その後モルガン・スタンレー証券、スパークス投資顧問を経て、98年、タワー投資顧問で基幹ファンド「タワーK1ファンド」をローンチ。2005年に発表された最後の高額納税者名簿(長者番付)で全国トップに躍り出る。2023年、「タワーK1ファンド」の運用を終了し、退社。
資産800億円!
2005年発表の最後の高額納税者名簿(長者番付)で、全国トップに躍り出た「伝説のサラリーマン投資家」が、元タワー投資顧問運用部長の清原達郎氏だ。
一口でいうと「すごい経歴」。『わが投資術』の内容も、バブル期の野村證券のあくどさや、投資家としての丸焦げになる危機など、すごみがあります。
とはいえ、一般の個人投資家にも参考になる情報がたくさん盛り込まれていました。
個人的に着目したのは、見極め力。
投資以上に私たちの生活に密着しているのは、就職先・取引先選びではないでしょうか。本書で紹介されている小型株投資(時価総額500億円未満の企業への投資)と、私たちの就職先・取引先選びとの間に共通点を見出したのです。
私事ですが、中小企業の出版社を11年前に退職し、フリーの編集者として独立しました。
退職した理由は多々あるのですが、一つは経営陣のずさんさでした。私と同時期に、ベテランの編集者が数名辞めています。
退職してから9年後、その会社は破産しました。破産まで在籍していた私の元同僚たちは、よくある話ではありますが、退職金は0円でした。
なお、私自身については、「よし、独立してしまおう!」という見極め力があったわけではありません。退職した後も長い間、「辞めないほうがよかったかな……」と、くよくよ悩んでいました。
加えて、フリーの編集者としての大口の取引先は、辞めた会社でした。そのため破産した際には、私は債権者となりました。この点でも見極め力がないことがわかってしまいます。
退職金が全額支払われるタイミングで辞めたのはラッキーだったし、債権者になったのはアンラッキーという程度の話です。
こうした自分の経験を踏まえて『わが投資術』を読んだので、小型株投資は、中小企業が対象の就職先・取引先選びに通じるものがあると感じました。
今の大学生の就職活動においても、大手企業は人気があります。私が大学生だった頃もそうで、例にもれず、私も大手企業の採用試験を片っ端から受けていました。ただ、バブル崩壊後ということもあり、軒並み試験に落ちました。
結果として、中小企業の出版社に就職したという流れです(いろいろとありましたが、ブランド志向が強かったアホな大学生を拾ってくれた出版社の存在には、今も感謝しています)。
現在、少子高齢化が進み、売り手市場といわれているものの、すべての学生が大手企業に就職できるとは限りません。
中小企業に就職するとなったときに、どんな企業を選びますか。
できれば破産して退職金も支払われない企業ではなく、将来成長する企業を選びたいと思いませんか。
同じことが、取引先にもいえます。
中小企業と取引するときに、どんな相手を選びますか。
できれば破産してギャラを支払わない企業ではなく、将来成長してギャラが増える企業を選びたいと思いませんか。
ラッキーorアンラッキーで終わらせるのではなく、また、「やった!」or「やられた」「搾取された」「ひどい」と感情に振り回されるのではなく、自分にプラスになる形で企業を選んでいきたいところです。
今回は、本書で紹介されていた、人生で損をしない「会社の辞め方」(「対会社で損をしない辞め方」)を引用しておきます。
1.今の会社、今の仕事がなんとなく嫌でも、自分が何をやりたいか具体的にわからない状況で会社を安易に辞めるべきではない。2.ある程度やりたいことが決まったら、今の会社で給料をもらいながら自分の目指す仕事に必要なスキルが磨けるかどうかを判断する。目指す仕事に役立つことだけを今の会社でやる。3.やりたいことが決まっても、それを達成する方法は複数あるかもしれない。人生の目的が「一生野球をやりたい」だとしても、プロ野球選手を目指すのが最善な方法とは限らない。やりたいことは今の会社にいてもある程度はできるかもしれない。「ただ好きだからやりたい」のなら趣味や副業でもいいかも。4.時代の流れを読む。自分のやりたいことが時代の流れに合っているか考える。そのうえで成功する確率を考える。誰しも自分の人生がかかっているので失敗はしたくないはず。5.自分の実力を正しく判断する。いくら時代の流れに乗ったビジネスでも競合する会社や人に勝てなければ成功できない。自分の独自色を出したビジネスができるかどうか考える。6.出会いを大切にする。自分に実力があって人としての信頼があれば、良い話は向こうからやってくる。ここぞと思った時には思いっきり自分をアピールする。
『わが投資術 市場は誰に微笑むか』54-56ページ
これまでの自分を振り返っても、大学生については社会の一面しか見ることができないと思います。就職してから、正しい・正しくないだけで世の中は回っていないこと、そして「こんな仕事もあったんだ!」といった発見があるはずです。
就職してみて「ああ、この会社は違う……」と落胆する人は、数多くいます。その場合、どんな辞め方をするのかによって、プラスに転じていく人と、どんどん条件の悪い働き方に突き進んでいく人と、大きく2つのパターンに分かれていました。そのため、「自分が何をやりたいか具体的にわからない状況で会社を安易に辞めるべきではない」のは、大いにうなずけます。
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