【ほったらかし投資勉強会】オルカンは、ファストファッション定番アイテム的存在
『ほったらかし投資術』第3版のマニュアルに出てくる「インデックス・ファンド」などの用語について、確認していきましょう。
[ほったらかし投資術]実行マニュアル
1 概ね3カ月〜6カ月の生活資金を確保して、普通預金に置く。それ以外のお金を「運用資金」と呼ぶ。2 運用資金の中からリスクを取って運用してもいいと考える「リスク資産」の保有額を決定する。リスク資産の額は「最悪の場合1年後に3分の1程度損をするかも知れないが、同程度の確率で4割くらい儲かる場合もあり、平均的には年率5%程度の収益率が見込める資産をいくら持つか」と自問して決める。「運用資金」から「リスク資産」を差し引いた残りを「無リスク資産」と呼ぶ。3 「無リスク資産」は、「個人向け国債変動金利型10年満期」又は銀行預金(1人1行1000万円の範囲内を守る事)で持つ。4 「リスク資産」は全て、全世界の株式に投資するローコストな(手数料の安い)インデックス・ファンド(「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」など)に投資する。5 iDeCo(個人型確定拠出年金)、NISA、つみたてNISAなどの税制上有利な運用口座を最大限に利用する。これらの口座の運用商品選択は全世界株式のインデックス・ファンド(選択肢の中に無い場合は、後述する「全世界株式インデックス・ファンドに準ずる商品」)とする。6 税制上有利な運用口座を活用しつつ、適宜積立投資で投資を追加するのも良い。
投資信託(投信、ファンド)は、投資家から集めた資金で、株式や債券などに投資・運用する金融商品です。運用成果は、投資額に応じて投資家に分配されます。
投資信託の一つであるeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)は、「オルカン」と略して呼ばれています。運用しているのは、三菱UFJアセットマネジメントです。
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eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)2024年7月8日から2025年7月7日までの基準価額および純資産総額の推移(三菱UFJアセットマネジメントより) |
上の折れ線グラフを見ると、3回、大きく下落していることがわかります。
1回目は2024年8月頃の下落で、「オルカン・ショック」と呼ばれました。円高の進行(後で紹介する「為替リスク」と関連)と株式市場の変動が原因とされています。近所のすし屋で、カウンターの隣の隣の人が「オルカンが!」と騒いでいたことを覚えています。
今年に入ってからの下落は、トランプ関税による株式市場の変動です(後で紹介する「米国経済への依存」と関連)。
「オルカン・ショック」などが発生することから、マニュアルの2に書かれているように、投資信託などのリスク資産の額は「最悪の損」と「ラッキーな場合の儲け」を検討してから決めるのです。
オルカンの特徴は、時価総額に応じて、機械的に購入する株式の構成比率を変更すること。このように、特定の指数に応じて機械的に構成比率を変更する商品がインデックス・ファンドです。それを上回るように、専門家の力(分析・判断)を使って運用する商品がアクティブ・ファンドです。人手がかかる分、アクティブファンドは手数料が高くなるわけです。
○インデックス・ファンド:特定の指数に連動するように設計された商品
○アクティブ・ファンド:特定の指数を上回る運用成績を目指す商品
ほったらかし投資術で勧められているオルカンは人気商品で、その分だけ、風当たりも強くなっているような印象です。問題点として挙げられていることを、AIが次のようにまとめてくれました。
為替リスク:オルカンは海外の株式に投資するため、円と外貨の交換レートである為替相場の影響を受けます。円高になると、海外の株式を円換算した時に価値が下がり、利益が出にくくなる可能性があります。米国経済への依存:オルカンは全世界の株式に投資しているように見えますが、実際には米国株の比率が非常に高くなっています。そのため、米国経済が低迷すると、オルカンのパフォーマンスも悪化する可能性があります。元本割れのリスク:投資信託は、価格変動リスクがあり、購入時の価格を下回る可能性があります。特に、短期間で売却すると、元本割れのリスクが高まります。組み入れ銘柄の偏り:組み入れ上位の銘柄は、全体のパフォーマンスに大きな影響を与えます。特に、米国株式市場の主要なテクノロジー企業(GAFAなど)の比率が高いため、これらの企業の動向に左右されやすいです。
為替リスクは、外国の株式を組み込んだ投資信託であれば必ず起こることで、外貨預金などでも発生します。元本割れのリスクについても、投資信託にはつきもので、生活防衛のための資産配分が実行マニュアルにもすでに盛り込まれています。
米国経済への依存・組み入れ銘柄の偏りは、「機械的」であれば、当然そうなるでしょう。現在、イノベーションを起こしているのは、ほとんどがアメリカの企業だからです。
オルカンの評価を見ていると、ユニクロなどのファストファッションと近いものがあると感じています。
定番に近いけれどもトレンドもちょっと取り入れた製品を、工場で生産し、低価格で購入できるのがファストファッション。デザイナーの能力が大きく発揮されるファッションブランドよりも面白みはないでしょうが、普段使いには非常に便利です。
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イラスト/イラストイメージ |
オルカンの最大の魅力は、コストが低いこと。ザイ・オンラインの2025年7月1日更新データでも、「総経費率」が2番目に低くなっていました。ちなみに、最も低かったのは、野村アセットマネジメントが運用する、はじめてのNISA・全世界株式インデックス(オール・カントリー)でした。
『ほったらかし投資術』第3版の情報は、2022年2月時点のものです。eMAXIS Slim 全世界株式よりも手数料の低い、全世界の株式に投資するインデックス・ファンドが登場すれば、それも選択肢になります。
とはいえ、周囲からお勧めの投資信託を尋ねられた場合には、私は「まずはオルカンですよね」と答えています。
ファストファッションの定番アイテムのように、とりあえずオルカンを持つ。そしてチャートというトレンドをチェックしつつ、投資を勉強する。
このように「まずは始めてみる」のが経済的独立への近道ではないでしょうか。
■ 『ほったらかし投資術』 以外の主な参考資料
インデックスファンド「信託報酬」比較ランキング!「オルカン」「S&P500」など投資対象別に“実質コスト”を比較し、一番お得なおすすめファンドを紹介!
分散効果があるという人も、オルカンの購入は株式という一つの資産のなかでの銘柄分散にすぎないことを忘れている。本来の分散は資産分散だ。株式以外にも債券、不動産投信、商品など株式とは価格特性の異なる資産に分散しておかなければ、卵を複数のバスケットに入れたことにはならない。
個人の債券投資覚え書き
https://media.rakuten-sec.net/articles/-/41707
https://media.rakuten-sec.net/articles/-/41707
暫定的な結論として、
(1)個人が安心して投資できる対象が主に国債しかないこと、しかし、
(2)国債にはリスクプレミアム的なリターンが期待しにくいこと、
(3)個人の資産配分ではリスクを薄める必要性が乏しいこと、などを考えると、株式との分散投資効果が存在する可能性に少々未練は残るものの、個人の資産運用には債券投資は必要ないように思われる。
その方が運用がシンプルでもある。
※株式・債券・金利などの用語について、おおざっぱに説明すると次のとおりです。
○株式:出資証明書
○債券(国債、社債):借金証書
○金利:お金の使用料
○株式:出資証明書
○債券(国債、社債):借金証書
○金利:お金の使用料
○リスクプレミアム:リスクを負うことで上乗せされる利益(似た言葉が「ハイリスク・ハイリターン」)
○不動産投資信託(REIT、不動産投信):投資家から集めた資金で不動産に投資し、そこから得られる賃料収入や売却益を投資家に分配する金融商品
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