「今の国の制度のままだと“過疎ビジネスコンサル”はこれからも生まれるんだろうな」と思ってしまった『過疎ビジネス』

 第29回新聞労連ジャーナリズム大賞(大賞) 、第73回菊池寛賞を受賞した『過疎ビジネス』(著/横山勲 集英社)。


 本書で印象的だったのは、私の場合は2カ所でした。

 まずは「行政の無謬主義」。
 役所の論理を持ち出して、あの手この手で自分たちの行動を正当化しようとする。こうと決めた方向性を頑として変えようとせず、間違いがあっても認めようとしない。いったん失敗や誤りを認めれば、責任の所在を明らかにしなければならなくなるからだろう。

 この段落を読んで、思わずぷっと噴き出してしまいました。文章にもある「役所の論理」が、私のような一般市民の論理とは合わず、唖然としたことが少なからずあったからです。役所の職員の態度の描写があまりにも的確で、つい笑ってしまったのでした。

 ただ、役所だけではないですよね。「会社の上のほうの人の論理」「PTAの論理」など、部外者には通用しない論理で自分たちの行動をやたらと正当化するというケースは珍しくありません。その傾向が、役所は非常に強いという印象。

 もう一つは、「国の責任」。
 「過疎ビジネス」の深い闇を生んだのは、地方の実情を度外視して予算をばらまくだけばらまき、隙だらけの制度設計を放置した国の責任でもある。

 私が思うのは、「国の責任でも」ではなく、ほぼ100%で「国の責任」ということ。本書に登場するコンサルタントの島田昌幸氏について、ネットで調べたところ、わんさかとインタビューがヒットしました。
島田昌幸氏(ゼリーの常温備蓄技術を応用して宮城発の上場企業を目指すより)

 末尾に彼の経歴をまとめましたが、経済産業省や国土交通省、内閣の直轄機関の復興庁が、「過疎ビジネスコンサル」を生み出したのです。

 ただ、日本という国は、私たち国民が選んだ政治家が動かしているので、結局のところ、私たちの責任になるわけですね。

 この国の主権者は、私たちだ。
 



コンサルタントの島田昌幸氏の経歴

1983年 北海道岩見沢市で生まれる(美唄市出身というデータも)
「私は父方の家系に起業家が多かったので、一般企業に就職するのではなく自分のやりたいことを仕事にするのが普通だと思っていました。」

2001年 北海道教育大学岩見沢校に在学中だった18歳のときに大学ベンチャーを起業

2005年4月 地域再生法施行
 地方公共団体による地域活性化や雇用創出を国が支援するための法律。当時は小泉純一郎内閣でした。

2005年 22歳のときに北海道岩見沢市で教育系ベンチャーJICCを起業
 JICCはサッカーをしながら英語を教えるというユニークな学習塾だったとのこと。

2005年 経済産業省の助成事業「チャレンジ・コミュニティ創生プロジェクト」に参加
 チャレンジ・コミュニティ・プロジェクト(チャレコミ)は、NPO法人ETIC.(エティック)が中心となり、2004年から展開している、地域経済の新たな担い手を輩出する取り組みです。 
チャレンジ・コミュニティ・プロジェクトでは、「地域プロデューサー」と呼ばれる地域コーディネート人材・機能を、全国300ヶ所に増やしていくことを目標としています。

2006年 経済産業省のチャレンジ・コミュニティ創生プロジェクトのモデル団体に認定
 24歳の最年少プロデューサーとして全国の地方創生に関わったとのこと。

2007年 国土交通省認定の観光地域プロデューサーに任命
 農業にITとデザインの要素を注入したビジネスモデルを作り上げたとのこと。

生まれ故郷の北海道では、農業と教育をミックスした自然に触れながらの体験学習教室を手掛けていたという。
「実際に土を触ったことのない子どもが、理科や農業の勉強するのはおかしいと思ったんです。そこで実際に自然に触れながらの受験勉強スタイルを企画したところ、好評を博しまして。たくさんの子どもたちを連れてくるから、行く先々であいつは何者だと注目されていましたね」。

2008年頃 金銭トラブルで北海道を離れる
 『過疎ビジネス』によると、農産物の加工品開発のビジネスを一緒に手掛けていた男性がいたが、補助金を個人口座に振り込んでいたことなどがわかり、返金で示談としたとのこと。
 農業と教育のリテラシーを掛け合わせた総合型学習スクールで、後に、野菜の宅配事業やコミュニティビジネスにも参入したという情報がありました。この会社は譲渡したそうなので、金銭トラブルと関連があるのかもしれません。

2009年 宮城県仙台市に活動拠点を移転
 舞台ファームの針生(はりう)信夫社長に呼び寄せられたとのこと。

2010年6月 28歳のときに株式会社ファミリア(宮城県仙台市)設立
 ファミリアは「フードコンサル会社」とのこと。
この傘下に農業部門の多賀城ファーム,加工部門の多賀城ファクトリー,パン屋のルタンリッシュがある。さらに,後述するROKUプロジェクトを入れれば,2012年12月現在,グループ全体で福祉雇用46人,一般就労23人の計69人となっている。

 東北Rokuプロジェクトについては、以下のとおり。
運営は「(社)東北ロクプロジェクト」。障がい福祉サービス事業や6次化事業のコンサルティング、建築事業、飲食店事業などを営む6人の経営者で組織する。それぞれの専門分野を生かすことで、他にはない独自の施設を作り上げた。
 

2010年 国土交通省の推薦で、総務省の「地域力創造アドバイザー」に登録
 1次産業をプロデュースする事業開始。

2011年3月 東日本大震災

2011年 自治体の政策形成を支援する「震災復興ワークス」を設立
 「東京の仲間とともに」設立したとのこと。

「医療法人や銀行、システム開発会社などから出資を受けています。この防災システムを完成させて、日本の防災研究所に相当する会社を目指しているんです。東北の枠組みを超えて世界のどこでも通用する防災ソリューションを構築して、宮城から上場企業になることを目指しています」

2011年 中小企業初の日本CSR大賞準グランプリを受賞

2013年9月 宮城県名取市に「農と食」がテーマの商業施設roku farm ATALATA(ロクファーム アタラタ)をオープン



2014年11月 「まち・ひと・しごと創生法」施行
 地方創生交付金がが創設。

2016年4月 企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)創設

2016年 株式会社ファミリアを分社して株式会社ワンテーブル設立

2017年12月 宮城県七ヶ浜町の商業施設「SHICHINO RESORT」をプロデュース

株式会社 七ヶ浜ハーバースクエア
 ・事業本部長 島田 昌幸 氏


2019年9月 長期常温保存可能な備蓄食「LIFE STOCK」(ライフストック)が販売開始
3.11の極限状態を教訓に生まれた「5年保存備蓄食」 防災ゼリー『LIFE STOCK』先行発売

2019年 新潟県三条市から5000万円の新規事業を随意契約で委託

2020年 経済産業省の事業を通じてワンテーブルとベル・データが共同で立ち上げた「スーパー防災都市創造プロジェクト」として、全国12都市で実証実験を開始

2021年4月 宮城県亘理町(わたりちょう)で文化創造拠点「WATARI TRIPLE[C] PROJECT」実施(ワンテーブルが事業主体)

 『WATARI TRIPLE [C] PROJECTは「CULTURE」「CULTIVATE」「 CHALLENGE」と3つのキーワードで構成されています。

2021年6月29日 総務省から派遣されて、北海道仁木町の「地域力創造アドバイザー」に就任

2022年3月 福島県国見町が官民共創コンソーシアム(自治体が民間企業と共同で地域課題の解決をはかるもの)を立ち上げ、事務局を株式会社ワンテーブルに委託

2022年3月29日 北海道の北後志広域5町村(余市町、積丹町、古平町、仁木町、赤井川村)との間において住民の生命・生活と安全を高めるべく広域防災連携に係る協定を締結

2023年2月 川北新報が福島県国見町の企業版ふるさと納税「寄付金還流」疑惑を報道

2023年3月 株式会社ワンテーブルの社長を辞任

会社名(英文表記)株式会社ワンテーブル ONETABLE Inc.
代表取締役社長 富田 智之
設立年月日 2016年11月11日
資本金 14,750,000円
資本準備金 310,750,000円

主要株主
東京美装ホールディングス株式会社
シップヘルスケアホールディングス 株式会社
株式会社内田洋行
稲畑産業株式会社
BELL・ホールディングス株式会社



■主な参考資料
ゼリーの常温備蓄技術を応用して宮城発の上場企業を目指す
https://www.reconstruction.go.jp/jireishuu/list/pdf/R1_05.pdf

防災備蓄食業界初のゼリー状備蓄食を開発、地域活性化と
新防災産業の創造を目指す
https://www.77bsf.or.jp/wp-content/uploads/2021/02/200422-22inter-onetable.pdf

被災地の農業再生目指す経営コンサルタント 島田昌幸氏
https://www.nikkei.com/article/DGKDZO45985530R10C12A9NNSP00/

過去を分析し、未来を見据える。東日本大震災から生まれた、復興と経済活動を両立する「防災ソリューション」とは
https://ampmedia.jp/2020/04/23/disaster-solutions/

北後志広域5町村と4民間企業とで、防災連携に係る協定を締結
https://satudora-hd.co.jp/news/2022/03/30/3814/

「善意がゴミになる仕組みはおかしい」防災備蓄ゼリーのために3億円の貯金を捨てたワケ
https://news.infoseek.co.jp/article/president_52369/

北海道仁木町・再エネ巡る官製談合疑惑 総務省のアドバイザーが主導 自ら計画立案して自社で受注 「地方の自治体ぶん捕る」
https://www.chosyu-journal.jp/shakai/29855

地方創生利権をあさる東北のコンサル会社。「行政機能を分捕る」と豪語、随意契約をもぎ取る
https://toyokeizai.net/articles/-/884080
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