印刷された紙切れがお金になるのは「思い込み」が宿るから? トレカでお金を考えてみた

 誰が紙に印刷したかで価値が左右される……
 それが紙幣です。

 紙幣とトレーディングカード(トレカ)には共通点があります。
 トレーディングカードとは、トランプぐらいの大きさの紙に絵が描かれたカード。



 インターネットで検索すると、トレーディングカードの両面印刷で200枚13050円。紙代と印刷代で1枚当たり65.25円。市中に出回っているものはさらに大量に印刷しているはずなので、1枚当たり30円程度でしょう。

 原価がその程度の印刷紙が、1枚当たり税別980円などで売られているのです。

 トレーディングカードについては、「このカード3枚と、あのカード1枚を交換ね」などと交渉している様子を見たことがありました。
 トレーディングカードの持ち主は「これは大事だ」「価値がある」「みんな欲しがっている」と思い込んでいるから、いろいろな物と交換するのでしょうね。

 このように交換できるという点が、紙幣とトレーディングカードの共通点なのです。

 さらに、トレーディングカードも紙幣も、誰が作ったのかが価値を決めるポイント。
 私でも、トレーディングカードのような紙切れを作れます。しかし、私が作ったところで誰も欲しがりません。有名玩具メーカーのカードだから、価値があるのです。

 ただ、トレーディングカードの人気が衰えてくると、誰も見向きもしなくなるでしょう。「どうでもいい」「ばかばかしい」と熱が冷めた時点で、がんばって入手してきた大量のカードはただの紙。

 ということは、紙幣もただの紙に戻る可能性があるのです。
 
 例えば、このジンバブエドル。

 私がジンバブエに行ったのは2002年の夏でした。
 当時、ジンバブエの紙幣だったジンバブエ・ドル(上の写真)は、隣国のボツワナにあるチョベ地区のサファリロッジのフロントで両替してもらえませんでした。拒否をする手の動きで、頭を左右に振る女性の「これはダメダメ」という表情を覚えています。

 ジンバブエ・ドルは2002年の時点ですでに信用されていませんでした。
 その後、ロバート・ムガベ大統領が独裁政治を行うジンバブエの経済は混乱していき、2008年7月のインフレ率は2億3100万%だったと報じられているそうです。6月まで100ドルで買えていたジュースが、7月になったら231億ドル出さないと買えなくなったということ。

 『「お金」って、何だろう? 僕らはいつまで「円」を使い続けるのか?』(山形 浩生、岡田斗司夫 FREEex 光文社)によると、ジンバブエ・ドルを刷る費用のほうが、紙幣の額面よりもはるかに高かったとのこと。日本に置き換えると、1万円札を印刷するのにインク代が2万円かかっていたのだそうです。

 結局、2009年にジンバブエ・ドルは流通が停止したため、紙幣はただの紙となりました。

 ちなみに、日本においては、1万円札の実際の印刷費は1枚当たり約22円だそうです。
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