角を立てずに、清々しく仕事を断る方法

 断ることが苦手な人は少なくありません。
 しかし、嫌な予感がする要件を引き受けたら、やっぱりうまく進まなくて、後で「断っておけばよかった」とモヤモヤするものです。

 また、曖昧な返事を続けていたために、相手が不満をどんどん募らせ、人間関係にヒビが入ることもあります。断るときにウソや言い訳を使うと、後でつじつまが合わなくなるなど、自分が苦しくなります。


 今回は、嫌な気分にならずに済む、仕事の断り方を考えてみました。


 そもそも、自分はどうしてその仕事を断りにくいのでしょうか。
 おそらく、「相手との関係が悪くなると、次から仕事が来なくなる」という不安を抱いているからでしょう。

 しかし、思うのです。
 1回断ったぐらいで依頼がなくなるのなら、その程度の人間関係だし、自分の力量も大したことはないということ。


 また、嫌な予感がする原因は、どこにあるのでしょうか。
 案件の内容なのか、仕事量に見合わない報酬になりそうなのか、「ホウレンソウ(報告、相談、連絡)」がスムーズではないからなのか、筋が通らない進行なのか、責任の所在が曖昧なのか。


 原因が具体的にわかっているときは、後で述べる「4.無理な部分だけ断る」方式で、部分的に依頼を受けることもできるでしょう。
 ただ、具体的にわからないときは、複数の理由がこんがらがっている可能性が高いので、速やかに断ることをお勧めします。


 嫌な予感を抱えて仕事を引き受けると、必要以上に時間がかかってしまい、他の仕事にも悪影響を及ぼします。
 加えて、なんとか形にしてもクオリティは低く、自分の評価を下げることにもなるのです。

 自分なりに納得ができた段階で、仕事を引き受けたいものです。

 とはいえ、「この仕事はお断りします」といった直接的な表現だと、失礼な人間だと思われたり、相手を不愉快にしたり、今後の仕事に影響する可能性もあります。
 「断る」という強い表現ではなく、「遠慮する」「辞退する」「見合わせる」「見送る」「期待に沿えない」などを状況に合わせて使いこなすといいでしょう。


■角を立てずに、清々しく仕事を断る方法

1. 礼儀正しく、きっぱりと断る
 「ご依頼、ありがとうございます。せっかくのお話ですが、今回は見通しが立たないので、ご遠慮させていただきます」「誠に残念ですが、今回のテーマですと〇〇字の原稿にまとめるのは厳しいため、ご期待には沿えません」「検討したのですが、今回はご辞退させていただきたいと思います」と簡潔に断りましょう。

□礼儀正しい印象を与えるワード
「せっかくのお話ですが」「誠に残念ですが」


2. 素早く、短い言葉で断る
 返答を遅らせたり、回りくどい言い方をしたり、たくさんの言い訳を用意したりするのはやめましょう。レスポンスを早ければ、相手は多くの言葉を必要としません。引き延ばされるから、イライラが募り、理由を求めるのです。


3. 自分が主導権を握る形で断る
 「3カ月後はお引き受けできる状況になるかもしれませんので、よろしければまたお声がけください。今後ともよろしくお願いいたします」「△△ではなく〇〇というテーマでしたら引き受けられるかもしれません。次回はぜひよろしくお願いいたします」などと、あくまでも自分の都合を大切にしましょう。


4.ダメ出しせずに断る
 相手の欠点を挙げて「ですから、お引き受けできません」と述べると、相手だけでなくその周囲も含めた人間関係が壊れる可能性があります。「2. 素早く、短い言葉で断る」にも通じるのですが、相手への評価を断る理由として長々述べる必要はありません。

 理由が必要な場合は、
「この仕事を入れてスケジュール調整するのは厳しい」
「自分の専門分野とは異なる」
「自分とは仕事のやり方が違う」
「このまま進めると、自分が納得できるクオリティの仕事ができない」
などと、自分の状況や断る仕事にまつわることを伝えるといいでしょう。

 相手の問題点や課題には踏み込みません。
 これは、相手に自分の仕事に踏み込ませない状況をつくるためにも重要です。

4.無理な部分だけ断る
 依頼が多岐にわたっているときは、要素を整理し、受け入れられる部分とそうでない部分を明確にしましょう。そして無理な部分だけ断ります。





 私たちは生物として死ぬ運命にあります。
 仕事相手も含め、すべての人々と別れる運命にあるとも言えます。

この盃を受けてくれ 
どうぞなみなみつがしておくれ
花に嵐のたとえもあるさ
さよならだけが人生だ
「歓酒」の一部 
作/ 晩唐の詩人 干武陵 訳/井伏鱒二


 どうせ別れるのなら、気持ちのよい笑顔で、清々しくありたいものですね。
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