どうして人間は作文をするようになったのか

 世界最古の文字は、イラクにあるウルク遺跡から出土した粘土板(石板も交じる)に刻まれています。

 約800枚(諸説あり。5000枚以上とも)の粘土板は、紀元前3300~3200年頃のものです。つまり文字の歴史は約5000年ということになります。

 粘土板に刻まれている文字は、絵文字(またはウルク古拙文字)と呼ばれています。



 紀元前3300~3200年頃は、チグリス川・ユーフラテス川の周辺の平野で「メソポタミア文明」が成立していました。




現在のイラク(「紀行地図」一部改変)



 この地域に住んでいたシュメール人が、都市国家を築いたとのことです。ウルクは当時の都市の名前で、現在はワルカという名前です。






ジッグラトという聖塔が建てられたとのこと(foryourimages.com)



 ウルクの遺跡から出土した粘土板には約1000の文字が使用されているそうです。完全には解読されていませんが、大部分が会計簿または目録であることがわかっています。短く刻まれた線である数字と一緒に、人物や動物、食料品が絵文字で書かれています。

 例えば、労働者への日給は大麦で支給は、労働者個人を象徴する頭部と、麦を意味する穂を描くことによって記録されています。また、物品の出納(食料品、織物、家畜)と人事異動に関する記録も残っています。

 ちなみに、文字には次の4種類があったようです。

1 写実的な形をした絵文字

2 象形的で意味がわからない文字

3 柔らかい粘土に刻んだ短い線、または円形の数字記号

4 2つの文字記号を組み合わせた、複雑な文字記号

 

 以上から考えると、人間は愛を語り合うためでなく、経済活動を記録するために文字を使って作文をするようになったわけですね。

 全然ロマンティックではありません。



 ただ、この歴史から、作文の基本がわかります。それは、みんながわかるように、明確にする必要があること。誰がどれだけ働いて、大麦をどれだけもらったのか、粘土板を見ればみんながわかるようにしておかなければ、記録する意味はありません。

 5000年前から、作文では「わかりやすさ」が重要だったともいえるでしょう。



 



※参考資料

地球ことば村・世界言語博物館 http://www.chikyukotobamura.org/muse/wr_middleeast_18.html

ルーブル美術館 https://www.louvre.fr/jp/oeuvre-notices/%E6%9C%80%E5%8F%A4%E3%81%AE%E7%B2%98%E5%9C%9F%E6%9D%BF

紀行地図 http://travel-mapper.com/
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