血球が作り出されるのは骨髄だけじゃなかった! 米国コロンビア大学発表「血球は腸でも生成される」

 2018年12月5日に、「『血球は腸でも生成される』」ことがわかった」というニュースが、『ニューズウィーク日本版』で配信されました。
 アメリカのコロンビア大学の研究チームが、腸移植を受けた患者21名を5年にわたって追跡調査し、移植された腸にドナー(臓器提供者)の造血幹細胞が存在することを突き止めたのです。

〇「血球は腸でも生成される」ことがわかった──腸移植の耐性を高める可能性
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/12/post-11376.php

 造血幹細胞とは、赤血球や白血球、血小板といった血球を作り出すもとになっている細胞です。これまで、骨の中心部にある「骨髄」の造血幹細胞から、血球は作り出されていると考えられていたのです。

 このニュースについて、内科の関由佳医師に伝えたところ、「腸には白血球がたくさん存在しているので、造血幹細胞も存在していることは私にとって不思議ではありませんでした。また、『あなたの体は、あなたが食べ物からできている』ということわざがあるように、胃腸の消化力が血液の状態に影響を及ぼすことは、古くから知られていたことです」というコメントが返ってきました。
細菌と戦う白血球


 腸が免疫の要ということは、すでに多くの人が知っているでしょう。
 私たちの体で外界と器官のすべて、例えば皮膚、鼻・口などの粘膜、腸などに、ホコリや雑菌などの異物を外に出すバリア機能が備わっています。
 なかでも腸は、総面積が約20畳とたいへん広いため、腸のバリア機能が破壊されると全身に影響が及ぶのです。
 腸の粘膜やその下の層には、体を病気から守る免疫細胞があります。その数は非常に多く、全身の免疫細胞の約6割が腸に集中しているといわれています。主な免疫細胞が、体の中で細菌やウイルスなどを退治する白血球です。

 それほど多くの血球が骨髄から腸へ運ばれてくるだけでなく、腸でも作られていると考えたほうが自然だと、関医師は語っているわけです。関医師はアーユルヴェーダなど伝統医学も過去に学んでいます。こうした経験から、上記のコメントが出たのではないかと思います。

 西洋医学は主に演繹法で成り立ち、東洋医学など伝統医学は主に帰納法で成り立っています。
 西洋医学だと、「□□と決まっているから、○○である」というように、ある前提をもとに診断をします。そのため、前提が間違っていたり偏見に満ちていたりすると、現実とはほど遠い診断を下してしまう危険があるわけです。
 過去に、ゼンメルワイスや鈴木梅太郎などの例もありました。
  
〇「あれはトンデモ療法」「これが正しい」という決めつけは、医師として極端な態度ではないでしょうか
https://life-livelihood.blogspot.com/2019/03/blog-post_681.html

 一方、体の一部を取り出して顕微鏡で見ることなどできない状態で発達した東洋医学は、患者の体を隅々まで観察し、その内容をもとに「〇〇である」という結論を出します。データを数千年にわたって集め、過去のデータを修正し、現在もその作業が続いているといえます。

 西洋医学と東洋医学の診断・治療を組み合わせたハイブリッドな医療が、今の日本では可能な状況ではないでしょうか。
 患者を治すよりも東洋医学などをたたいている批評家気取りの医師も多数いますが、私はハイブリッドな医療に取り組む医師が増えてほしいと思っています。

 なお、冒頭の記事はタイトルどおり「血球は腸でも生成される」ことを示しているのであって、「血液は腸で生成される」と伝えているわけではありませんので。
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