5月はめまいに要注意! 安静ではなく体操・運動が予防の鍵
「5月の連休が明けた頃に必ず、めまいを起こす人もいるんです」と語るのは、聖マリアンナ医科大学耳鼻咽喉科教授の肥塚 泉医師。
突然目の前がぐるぐると回ったり、まっすぐに歩けなくなったりするめまいには、恐怖感を伴うことも少なくありません。めまいの経験者は「また起こったらどうしよう」と不安になり、できるだけ外出などを避けて、じっと静かに過ごしがちでしょう。
確かに、めまいの急性期は安静が重要だが、急性期を過ぎれば積極的に運動したほうが再発しにくいと肥塚医師は話していました。
5万人のめまい患者の治療に当たった肥塚医師に、めまいの防ぎ方と治し方について聞きました。
どうして5月に
めまいが起こりやすいのか?
新年度の4月には、入社、転勤、異動など環境が大きく変わります。新しい生活による緊張状態で過ごしているところで、ゴールデンウィークを迎えて精神的な疲れがどっと出て、休み明けに無気力な状態や体調不良に陥るのです。
慣れない環境でストレスがたまって起こる五月病の症状の一つが、めまい。「めまいの発症とストレスは、深くかかわっている可能性が示唆されています」と肥塚医師。
また、ゴールデンウィークに、道路の渋滞や列車の混雑に巻き込まれることも多いものです。過労や睡眠不足の状態で仕事に向かい、めまいを起こすケースもあります。体がフワフワと宙に浮く、足元が定まらないなどと感じる「浮動性めまい」で、体がふらついたり、まっすぐ歩けなくなったりするのです。
「一口に『めまい』といっても、感じ方はさまざまで、吐き気や嘔吐、冷や汗などの症状を伴うことが少なくありません。
めまいが起こると脳の病気を心配する人も多いのですが、実際にはめまいの7割が耳の病気が原因です。耳の奥にある内耳になんらかの障害が生じて平衡感覚が低下すると、めまいが起こるのです」
肥塚医師によると、めまいは3タイプに分けられ、先に述べた「浮動性めまい」のほかに、自分自身や周囲の風景がぐるぐる回っているように感じる「回転性めまい」、立ち上がったときにクラッとする「立ちくらみ」があります。
リハビリの重要性を
NASAとの共同研究で確信
めまいは「急性期」と「慢性期」があります。
目の前がぐるぐる回ったり、冷や汗が噴き出したりする急性期は、安静第一。静かな暗い部屋で過ごし、楽な姿勢で体を休めましょう。
急性期は短い人で数時間、長くても1~3日間程度だと肥塚医師は語っていました。その後は、めまいはほとんど消え、なんとなくフワフワした感じがしたり、体がフラフラしたりする慢性期になります。
「急性期の症状を和らげるために薬物療法は有効です。また慢性期の症状を軽くするためにも、薬が必要な場合はあります。
しかし、めまいを薬で根本的に治すことはできません。
不調だから休みたい気持ちはわかりますが、体を動かさなければ全身の血流が悪くなります。耳の血流が悪くなれば、内耳の働きも回復しません」
めまいの治療で肥塚医師が重視しているのが、患者自身でできる体操や運動です。
肥塚医師は1998年にNASA(アメリカ航空宇宙局)が計画した実験に参加し、宇宙船に乗って起こる「宇宙酔い」の研究を行っています。この共同研究によって、体操や運動といったリハビリテーション(平衡訓練)の重要性を確信。それ以来、めまいの治療にリハビリテーションをどんどん取り入れていったのだそうです。
「仕事では座りっぱなし、自宅でも横になってばかりでは、慢性期の症状はなかなか改善しません。散歩やウォーキングなど軽い運動を取り入れて、血流を改善させるとともにストレス解消を図るのをお勧めします」
肥塚 泉(こいづか・いずみ)
聖マリアンナ医科大学耳鼻咽喉科教授。1981年、聖マリアンナ医科大学卒業後、大阪大学医学部耳鼻咽喉科、米国ピッツバーグ大学医学部耳鼻咽喉科、東大阪市立中央病院耳鼻咽喉科などを経て、95年、聖マリアンナ医科大学耳鼻咽喉科講師。97年、助教授。2000年、教授。同大学の「めまい外来」を率いて、これまで5万人以上を診察し、問診と検査でめまいを解決してきた。診療のほか、めまい疾患に対するリハビリテーション法の考案や、宇宙酔いに関する研究にも力を入れている。1998年には、NASAとの共同研究によりスペースシャトル・コロンビア号上で、宇宙酔いに関する実験も行った。テレビや新聞などメディアでも活躍中。
※この記事は、2017年5月18日に肥塚医師をメール取材した内容をもとに作成しています。最新情報は肥塚医師に直接お尋ねください。
突然目の前がぐるぐると回ったり、まっすぐに歩けなくなったりするめまいには、恐怖感を伴うことも少なくありません。めまいの経験者は「また起こったらどうしよう」と不安になり、できるだけ外出などを避けて、じっと静かに過ごしがちでしょう。
確かに、めまいの急性期は安静が重要だが、急性期を過ぎれば積極的に運動したほうが再発しにくいと肥塚医師は話していました。
5万人のめまい患者の治療に当たった肥塚医師に、めまいの防ぎ方と治し方について聞きました。
どうして5月に
めまいが起こりやすいのか?
新年度の4月には、入社、転勤、異動など環境が大きく変わります。新しい生活による緊張状態で過ごしているところで、ゴールデンウィークを迎えて精神的な疲れがどっと出て、休み明けに無気力な状態や体調不良に陥るのです。
慣れない環境でストレスがたまって起こる五月病の症状の一つが、めまい。「めまいの発症とストレスは、深くかかわっている可能性が示唆されています」と肥塚医師。
また、ゴールデンウィークに、道路の渋滞や列車の混雑に巻き込まれることも多いものです。過労や睡眠不足の状態で仕事に向かい、めまいを起こすケースもあります。体がフワフワと宙に浮く、足元が定まらないなどと感じる「浮動性めまい」で、体がふらついたり、まっすぐ歩けなくなったりするのです。
「一口に『めまい』といっても、感じ方はさまざまで、吐き気や嘔吐、冷や汗などの症状を伴うことが少なくありません。
めまいが起こると脳の病気を心配する人も多いのですが、実際にはめまいの7割が耳の病気が原因です。耳の奥にある内耳になんらかの障害が生じて平衡感覚が低下すると、めまいが起こるのです」
肥塚医師によると、めまいは3タイプに分けられ、先に述べた「浮動性めまい」のほかに、自分自身や周囲の風景がぐるぐる回っているように感じる「回転性めまい」、立ち上がったときにクラッとする「立ちくらみ」があります。
リハビリの重要性を
NASAとの共同研究で確信
めまいは「急性期」と「慢性期」があります。
目の前がぐるぐる回ったり、冷や汗が噴き出したりする急性期は、安静第一。静かな暗い部屋で過ごし、楽な姿勢で体を休めましょう。
急性期は短い人で数時間、長くても1~3日間程度だと肥塚医師は語っていました。その後は、めまいはほとんど消え、なんとなくフワフワした感じがしたり、体がフラフラしたりする慢性期になります。
「急性期の症状を和らげるために薬物療法は有効です。また慢性期の症状を軽くするためにも、薬が必要な場合はあります。
しかし、めまいを薬で根本的に治すことはできません。
不調だから休みたい気持ちはわかりますが、体を動かさなければ全身の血流が悪くなります。耳の血流が悪くなれば、内耳の働きも回復しません」
めまいの治療で肥塚医師が重視しているのが、患者自身でできる体操や運動です。
肥塚医師は1998年にNASA(アメリカ航空宇宙局)が計画した実験に参加し、宇宙船に乗って起こる「宇宙酔い」の研究を行っています。この共同研究によって、体操や運動といったリハビリテーション(平衡訓練)の重要性を確信。それ以来、めまいの治療にリハビリテーションをどんどん取り入れていったのだそうです。
「仕事では座りっぱなし、自宅でも横になってばかりでは、慢性期の症状はなかなか改善しません。散歩やウォーキングなど軽い運動を取り入れて、血流を改善させるとともにストレス解消を図るのをお勧めします」
肥塚 泉(こいづか・いずみ)
聖マリアンナ医科大学耳鼻咽喉科教授。1981年、聖マリアンナ医科大学卒業後、大阪大学医学部耳鼻咽喉科、米国ピッツバーグ大学医学部耳鼻咽喉科、東大阪市立中央病院耳鼻咽喉科などを経て、95年、聖マリアンナ医科大学耳鼻咽喉科講師。97年、助教授。2000年、教授。同大学の「めまい外来」を率いて、これまで5万人以上を診察し、問診と検査でめまいを解決してきた。診療のほか、めまい疾患に対するリハビリテーション法の考案や、宇宙酔いに関する研究にも力を入れている。1998年には、NASAとの共同研究によりスペースシャトル・コロンビア号上で、宇宙酔いに関する実験も行った。テレビや新聞などメディアでも活躍中。
※この記事は、2017年5月18日に肥塚医師をメール取材した内容をもとに作成しています。最新情報は肥塚医師に直接お尋ねください。
文/森 真希(もり・まき)
医療・教育ジャーナリスト。大学卒業後、出版社に21年間勤務し、月刊誌編集者として医療・健康・教育の分野で多岐にわたって取材を行う。2015年に独立し、同テーマで執筆活動と情報発信を続けている。
Leave a Comment