改めて、「心臓」について考えてみよう その3 心不全

 心臓は、縮んだり緩められたりを繰り返して、ポンプのように動いて血液を全身に送り出しています。

収縮期 心室が縮んでいる期間(収縮の開始から大動脈弁閉鎖まで)  
拡張期 心室が緩められている期間(大動脈弁閉鎖から収縮の開始まで)


心臓の内部(看護roo!より)


 心臓が1分間に拍出する血液の量が「心拍出量」です。

心拍出量=1回の拍出量×心拍数


 心拍出量は、前負荷(容量負荷)、心収縮力、後負荷(圧負荷)で決まります。

前負荷 心室が収縮を開始する前に心室にかかる負荷、拡張期までに心室に流れ込んだ血液の量

心収縮力 心筋の収縮力

後負荷 心室が収縮を開始した後に心室にかかる負荷、全身に血液を送り出すために必要な圧力


 心臓が正常な状態では、拡張期に心室に流れ込んだ血液で、心室は拡大します。そして収縮期に、心室を縮ませて内部に圧力をかけて血液を送り出します。


血液が流れ込むのは緑の○の部分

 ところが、心室に流れ込んだ血液が多ければ(前負荷が大きい)、心室は大きく広がってしまいます。そしてその分だけ、大きく収縮して、1回の拍出量を増やすのです。

 この状態が長く続くと、心室はびろーんと伸びて十分に収縮できなくなります。長く使い続けたパジャマのズボンのゴムのようですね。

 こうして心臓が拡大した状態を「心拡大」といいます。


 一方、全身の血管が硬くなったり狭くなったりして血液を送り出しにくくなると(末梢血管抵抗の増加)、心室を強く収縮させるために心筋が太くなります。

血液が流れ出すのは緑の○の部分

 この状態が長く続くと、筋肉が厚く、太くなりすぎて、緩められなくなってしまいます。あくまでもイメージですが、筋肉バキバキのボディビルダーが気をつけの姿勢などができなくなる不都合な状況のような……

 こうして心臓が肥大した状態が「心肥大」。


 心拡大や心肥大が進行して「心不全」になります。心臓が血液を送り出すポンプ機能が果たせず、心拍出量が減って、全身の血液の循環が滞ってしまうのです。

 血液を手足などに送り出す左心室の心不全(左心不全)で、血液が左心室にとどまってしまうと、車の渋滞と同じ状況になります。事故などで車が通れなくなると、後続の車が次々と止まって渋滞を起こします。


 同様に、左心室に血液が入れないために、左心房の圧力が高まり、左心房につながっている肺静脈でも血液がたまって、肺がうっ血してしまうのです。

 すると、肺に血液を送る右心室、右心房も渋滞。そして全身の血液を心臓に送り込む体静脈でもうっ血が起こってしまいます。

左心不全(下の図で1、2、3)→肺うっ血、肺高血圧(4)→右心不全(5、6)→体静脈うっ血(7

■参考資料

『病気がみえるvol.2 循環器』
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