尿が作られる仕組みと出る仕組み その6 夜間頻尿

 夜間に、排尿のために1回以上起きなくてはならず、それに困っている状態が「夜間頻尿」です。夜間頻尿で悩んでいる40歳以上の人は4500万人いると推定されていて、年齢が上がっていくともに増加します。

 夜間頻尿になると慢性的な睡眠不足を引き起こすだけでなく、暗い中でトイレに行くので転倒のリスクも増えてしまいます。

 夜間頻尿の主な原因として、「夜間多尿」、膀胱のしなやかさの低下、睡眠障害の3つが挙げられます。



1 夜間多尿

 本来、睡眠中は抗利尿ホルモンの働きで、尿を作る量が制限されます。この抗利尿ホルモンの分泌量が、加齢に伴って低下すると、寝ている間も尿が多く作られます。これを「夜間多尿」といいます。そして尿意が起きて、目が覚めてしまうのです。シニア世代の多くが、夜間多尿が原因で夜間頻尿が起きています。

2 膀胱のしなやかさの低下

 尿をためる膀胱は、筋肉でできています。加齢によって筋肉のしなやかさが失われると、膀胱についてもあまり広がらなくなります。そのため膀胱内にためられる尿の量が減り、夜間頻尿になってしまうのです。膀胱が小さくなった場合には、1回の尿量が200ml以下のことが多く、また夜間だけではなく、昼間も頻尿が現れます。

 膀胱のしなやかさが失われて小さくなると、過活動膀胱が引き起こされることがあります。
 過活動膀胱については、突然、強い尿意に襲われる尿意切迫感が主な症状で、それによる尿漏れ(切迫性尿失禁も伴います。過活動膀胱については、以下を参照してください。

〇尿が作られる仕組みと出る仕組み その5 尿失禁と頻尿
https://life-livelihood.blogspot.com/2021/01/5_5.html

3 睡眠障害

 睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害があると、眠りが浅くなると同時に、抗利尿ホルモンが分泌されにくくなります。

 こうした睡眠障害で夜間頻尿が起きているケースでは、昼間はしっかり尿をためることができているので排尿回数が正常なのに、夜間だけ頻尿が現れていることが多くなります。

※睡眠時無呼吸症候群(SAS)
 睡眠中に無呼吸を繰り返すことで、夜間頻尿だけでなく、さまざまな合併症を起こす病気です。空気の通り道である上気道が狭くなることが原因で、無呼吸だけでなくいびきも現れます。

[診断方法]

 夜間頻尿に限らず、頻尿や尿漏れがある場合には、原因を明らかにするために「排尿日誌」をつけます。
 排尿日誌は、排尿した時刻や排尿量などの記録をつけることです。古くなった計量カップか、量がわかるように目盛りをつけた容器を用意して、1回の排尿量を量り、時刻ともに排尿日誌に記入します。

 排尿日誌は、亀田メディカルセンターのサイトから無料でダウンロードできます。
http://www.kameda.com/pr/urogyne_center/voiding-diary.html
 また具体的な記録のやり方は、夜間頻尿.comに書かれています。非常にわかりやすいので、お勧めします。
https://yakan-hinnyo.com/chart/chart03.php


 夜間尿量は、夜間と起床直後の尿量の合計です。夜間尿量が1日の排尿量(起床後2回目から翌朝の起床直後の尿量の合計)の33%以上ならば、夜間頻尿の原因は夜間多尿でしょう。

 また、1回の排尿量がたびたび200ml以下になる場合、膀胱のしなやかさが低下していることが考えられます。

 それから、夜間多尿はないのに、夜間の排尿回数が多い場合は、眠りが浅くなっている可能性が高くなります。

 排尿日誌は、3日程度つけてください。計量はおおよそでかまいません。「記録しなければ」と意識しすぎると、普段とは排尿状態が異なってしまう場合があるので、リラックスして行いましょう。


[生活習慣の見直し 1]水分を取り過ぎない

 健康や美容のために、水をガブガブと飲んでいる人は珍しくありません。それが夜間頻尿の原因になっていることもあります。
 水分の摂取量を見直し、適切な量を取るように調整することを「飲水コントロール」といいます。

 1日当たり排尿量は、体重1kg当たり20~30mlです。例えば、体重が60kgならば、排尿量が1200~1800mlということになります。その人の排尿量に相当する水分を摂取していれば、体内で水分が不足することにはなりません。
 水分は食事からも摂取しているため、1日に必要な水分量は体重1kg当たり20~25mlと考え、体重(kg)×20~25(ml)で計算します。つまり、体重が60kgの人にとって適切な1日の水分量は、食事以外で1200~1500mlです。

 排尿日誌で1日の排尿量が体重(kg)×40(ml)だとわかったら、水分を取り過ぎている可能性が高いといえます。

 ただし、水分摂取量を減らし過ぎると、腎臓機能の低下を招いたり、熱中症などの危険が高まったりします。のどが渇いているときに、無理に水分制限する必要はありません。あくまでも適切な量を心がけてください。


[生活習慣の見直し 2]アルコール、カフェインを控える

 アルコールやカフェインには利尿作用があります。そのため、アルコール飲料や緑茶、紅茶、コーヒーなどは、飲んだ量以上に尿が出てしまうのです。

 また、アルコールやカフェインは深い睡眠の妨げにもなるので、就寝前は特に控えるといいでしょう。


[生活習慣の見直し 3]適度に運動する

 適度な運動は、全身の水分の巡りを促して下半身のむくみを解消するので、夜間の排尿量を減らすのに役立ちます。夜間の排尿回数を減らすためには、昼から夕方の時間帯に行うのがお勧めです。30分ほどのウォーキングでも有効とのこと。

 また、体が適度に疲れると、眠りが深くなります。


[生活習慣の見直し 4]適度に睡眠を取る

 睡眠時無呼吸症候群に対しては、CPAP(シーパップ)という鼻に装着するマスクによる治療が行われています。そのほかの睡眠障害に対しては、生活改善と併せて睡眠薬の使用も考慮します。

 また、加齢に伴って、睡眠時間が減っていくのは自然な現象です。それなのに、若い頃と同様に「1日8時間寝なければならない!」と思い込んで寝床に入っていると、当然、そんなに長い時間は眠れません。

 今回、夜間頻尿で取材した泌尿器科の医師は60歳とのことで、「睡眠時間は6時間でも多いぐらいです」と話していました。

 眠くもないのに長く寝床に入っているよりも、運動したり、骨盤底筋群トレーニングを行ったりしたほうが、健康に役立ちそうです。膀胱のしなやかさを取り戻すには、骨盤底筋群トレーニングが有効と医師が話していました。

 骨盤底筋群トレーニングについては、以下を参照してください。

〇10代女子にも増えつつある尿漏れ! 早急に骨盤底筋群トレーニングに取り組もう
https://sceltadelmetodo.blogspot.com/2019/09/10.html


■参考資料

  
 


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