古臭くて非効率とされている「日本的経営」は、コワーキングにおいて重要な要素かもしれない問題

 シェアリング・エコノミー(Sharing economy、共有経済)の明確な定義は存在していませんが、昔から物の貸し借りや共有は当たり前のこととして行われてきました。

 物の貸し借りや共有がビジネスとして発展したのは、テクノロジーの進歩と大きく関係するようです。インターネット上のシステムで、知らない人同士でも、簡単に、個人間で物の貸し借りや共有ができるようになったわけです。

 シェアオフィス(Shared office)も、個人事業主などが事務所を共有して、安く済ませようという考え方をもとに作り出された概念だと考えられます。


 『クラナリ』で調べてきた中では、日本ではシェアオフィスとコワーキングスペース(Coworking space)が、ほぼ同じ意味で使われている印象を受けました。

○サテライトオフィス、レンタルオフィス、シェアオフィス、コワーキングスペース。違いは何?
https://life-livelihood.blogspot.com/2021/01/blog-post_15.html

 しかし、語源を見たら、両者はかなり意味合いが違うように思えてくるのです。

 朝日新聞2014年5月23日朝刊だと、コワーキングスペースは「互いのアイデアや情報を交換し、仕事の質を高める働き方ができる場所」。「コワーキングスペース」という呼び名は、アメリカのサンフランシスコで2005年頃に生まれたと説明されています。

 コワーキングだと、一緒に(Co)アイデアを出し合って働くことが重要で、必ずしも働く空間を共有する必要がなさそうです。

 もちろん、同じ空間にいて、顔見知りになり、気軽に自分の考えを伝え合える状況は大事です。ただ、その状況を作り出すには、空間の共有だけでは足りないのではないでしょうか。


 自分の経験では、一つの会社が同じ一つのビルに入っていても、さらには同じフロアに部署があっても、必ずしも活発に部署間で交流しているわけではありませんでした(部署内でも交流が活発とは……)。 「飲みに行こうか」「みんなでイベントに行かないか」などと誘ってくれる人、企画してくれる人がいて初めて、同じ部署内や他部署間で、仕事のやり方や現状についてポツポツと情報交換ができていたのでした。

 こうした経験をしているのは自分だけでありません。友人や同僚も同様のことを感じていました。「同じ場所にいりゃ、それでいいってわけではない」というのは、家庭内でもよく起こることです。


 ちなみに、知人Aが使っていたコワーキングスペースでは、ビールが飲み放題だったそうです。それで知人Bは、知人Aには用事もないのに、ビール目当てにそのコワーキングスペースに”打ち合わせ”に行っていると、私たちの間で噂になっていました。ビールには人を集めるパワーがあるようですね。


 そう考えると、古臭くて非効率とされている「日本的経営」は、実はコワーキングにおいて重要な要素だったのかもしれません。飲みニケーションに社員旅行、社内運動会など、嫌でも他人と関わらなければならず、社内で知り合いが増えていくからです。


 ただし、ビール飲み放題にして、複数の人が一緒にビールを飲んでいるだけでは、ただの飲み屋(無料という意味でも"ただ")。情報やアイデアを交換しなければ、仕事としての発展性は乏しいような気がします。

■参考資料 

中小企業・小規模事業者が担う我が国の未来(中小企業庁)https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H26/h26/html/b3_5_1_4.html

第3のオフィス「コワーキングスペース」がもたらす生産性革命(日経BizGate)

シェアリングエコノミーが中国で盛り上がり、日本で盛り上がらない理由(ニューズウィーク)
https://www.newsweekjapan.jp/marukawa/2018/09/post-41.php

やってはいけない 新しいこと3パターン(日経ビジネス)
https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/special/00139/

『つながりの仕事術』(著/佐谷恭、中谷健一、藤木穣 洋泉社)
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