薬との付き合い方24 解熱鎮痛薬~解熱鎮痛成分
※この記事は「試験問題作成に関する手引き(平成30年3月)」の「医薬品の本質」をベースに、個人的な勉強を目的として作成しています。
〇試験問題作成に関する手引き(平成30年3月)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000082537.html
解熱鎮痛薬、いわゆる痛み止めは、比較的よく使われていると思います。「痛みに負けるな」のようなCMも盛んで、けっこう気軽に市販薬を使いがちではないかと。
しかし、「試験問題作成に関する手引」を読むと、かなり体に負担をかけるような印象です。
痛みに関係している体内物質がプロスタグランジン(prostaglandin、PG)。病気がケガがあると体内で活発に作り出されます。このプロスタグランジンが、痛みの情報が脳に伝わることや、体温を高くすることに関わっているようです。
また、月経が起こること自体にプロスタグランジンが関わっていることから、月経痛が現れる場合があるとのこと。
また、月経が起こること自体にプロスタグランジンが関わっていることから、月経痛が現れる場合があるとのこと。
そのほか、プロスタグランジンには胃酸分泌調節作用や胃腸粘膜保護作用もあるそうです。
ですから、「痛みを止めたいなら、関係しているプロスタグランジンの産生を抑えればいいや!」と単純に考えてはいけないんですよね。
そもそも痛みは、体への警告信号で、防御機能ともいえるもの。「すごく痛いのに、痛み止めを飲むのは我慢する」という必要はありませんが、「すごく痛い」の原因を普段から取り除いて、痛み止めに頼らないことも大事に思えます。
□西洋薬
解熱に関しては、以下の2つの作用が働きます。
○中枢神経系におけるプロスタグランジンの産生抑制作用
○腎臓における水分の再吸収を促して循環血流量を増し、発汗を促進する作用
循環血流量の増加は心臓の負担を増大させるため、心臓に障害がある場合は、その症状を悪化させるおそれがあります。
体の痛みや炎症反応に対しては、局所のプロスタグランジン産生を抑制する作用が働きます。
局所プロスタグランジンの産生抑制は、腎血流量を減少させるため、腎機能に障害があると、その症状を悪化させる可能性があります。
肝臓ではプロスタグランジンの産生抑制が逆に炎症を起こしやすくする可能性 もあり、肝機能障害がある場合は、その症状を悪化させるおそれがある。
ただし、すべてアセトアミノフェン以外の作用です。
ですから、心臓病、腎臓病、肝臓病、胃・十二指潰瘍 のある人の場合は、市販薬を使うのではなく、専門家に相談して処方してもらったほうがよさそうです。
① サリチル酸系解熱鎮痛成分
○アスピリン(アセチルサリチル酸) 痛みの発生を抑える
○サザピリン 痛みの発生を抑える
○エテンザミド 痛みが神経を伝わっていくのを抑える
○サリチルアミド 痛みの発生を抑える
※アセトアミノフェン、カフェイン、エテンザミドの組み合せは、それぞれの頭文字から「ACE処方」と呼ばれる。
アスピリンは、他の解熱鎮痛成分に比較して胃腸障害を起こしやすいので、アスピリンアルミニウムとして胃粘膜への悪影響の軽減を図っている製品もあります。
特に留意されるべき点は、ライ症候群の発生が示唆されていることで、アスピリン(アスピリンアルミニウムを含む)とサザピリンは、15歳未満の小児に対しては、いかなる場合も一般用医薬品として使用してはいけません。ライ症候群とは、主として小児が水痘(みずぼうそう)やインフルエンザなどのウイルス性疾患にかかっているときに、激しい嘔吐や意識障害、痙攣などの急性脳症の症状を呈する症候群。
また、エテンザミド及びサリチルアミドについては、水痘(みずぼうそう)やインフルエンザにかかっている15歳未満の小児に対しては使用を避ける必要があります。
アスピリン(アスピリンアルミニウム)には血液を凝固しにくくさせる作用もあるため、出産予定日12週間以内の使用を避けます(医療用医薬品のアスピリンは、血栓ができやすい人に対する血栓予防薬の成分としても用いられている)。加えて、重篤な副作用として肝機能障害を生じることがあります。
② アセトアミノフェン
主に中枢作用によって解熱・鎮痛をもたらすため、末梢における抗炎症作用は期待できません。その分、他の解熱鎮痛成分のような胃腸障害は少なく、空腹時に服用できる製品もあります。
まれに重篤な副作用として皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死融解症、急性汎発性発疹性膿庖症、間質性肺炎、腎障害、肝機能障害を生じることがあります。定められた用量を超えて使用した場合や、日頃から酒類(アルコール)をよく摂取する人で起こりやすいとされています。
小児の解熱に用いる製品としてアセトアミノフェンが配合された坐薬もあるので、内服薬の製品と重複して使わないように注意しましょう。
③ イブプロフェン
アスピリンに比べて胃腸への悪影響が少なく、抗炎症作用も示すことから、痛み止めに使用されることが多い成分。一般用医薬品では、15歳未満の小児に対しては、いかなる場合も使用してはいけません。
イブプロフェンはプロスタグランジンの産生を抑制します。そのため、消化管粘膜の防御機能を低下させ、胃・十二指腸潰瘍、潰瘍性大腸炎(免疫抗体の異常などが原因とされる、大腸に潰瘍やびらんを生じる病気)、クローン氏病(口腔から肛門までの消化管全域に亘って不連続に炎症や潰瘍を生じる疾患)の既往歴がある人では、再発を招くおそれがあります。
そして出産予定日12週以内の妊婦については、服用しないこととされています。
まれに重篤な副作用として、肝機能障害、腎障害、無菌性髄膜炎を生じることがあります。
全身性エリテマトーデスや混合性結合組織病の人は、無菌性髄膜炎を生じやすいため、専門家に相談しましょう。
④ イソプロピルアンチピリン
解熱・鎮痛の作用は比較的強いのですが、抗炎症作用は弱いため、他の解熱鎮痛成分と組み合わせて配合されている、「ピリン系」と呼ばれる解熱鎮痛成分です。
1960年代半ばまでは、イソプロピルアンチピリン以外のピリン系解熱鎮痛成分も、一般用医薬品のかぜ薬や解熱鎮痛薬に配合されていましたが、ショック等の重篤な副作用が頻発したため用いられなくなりました。
ピリン系解熱鎮痛成分によって薬疹(ピリン疹)などのアレルギー症状を起こしたことがある人は使用しません。
□生薬
① ジリュウ
フトミミズ科のPheretima aspergillum Perrierや、その近縁動物の内部を除いたものが原料の生薬で、古くから「熱さまし」として用いられてきました。ジリュウのエキスを製剤化した製品は、「感冒時の解熱」が効能・効果となっています。
② シャクヤク
ボタン科のシャクヤクの根が原料の生薬で、鎮痛鎮痙作用、鎮静作用を示し、内臓の痛みにも用いられます。同様な作用を期待して、ボタンピ(ボタン科のボタンの根皮を基原とする生薬)が配合されている場合もあります。
③ ボウイ
ツヅラフジ科のオオツヅラフジのつる性の茎と根茎を、横切したものが原料の生薬で、鎮痛、尿量増加(利尿)作用が期待されています。日本薬局方収載のボウイは、煎薬として筋肉痛、神経痛、関節痛に用いられています
④ その他
抗炎症作用を示す生薬として、カンゾウが配合されている場合があります。
発汗を促して解熱を助ける作用を期待してショウキョウ、ケイヒが、関節痛や肩こりの改善を期待してコンドロイチン硫酸ナトリウムが、他の解熱鎮痛成分と一緒に配合されていることがあります。
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