感動する本との出会い 『日本の古代国家』
「本の完成度」として、しみじみと感動したのが『日本の古代国家』(著/石母田正 岩波書店)。最初に単行本が刊行されたのが、1971年とのこと。
現在、文庫で1380円で購入できることも、「本って、すばらしい!」と感じた理由の一つでした。
アマゾンのレビューでも、この本について「緻密」と評価されています。多くの文献をもとに、著者が細かく検証したことを丁寧に解説されていました。
それに、自分が教科書で習った日本の古代史が、あまりにも恣意的というか、明治・大正・昭和初期の政治と絡み合ったものではなかったのかと思ったのでした(簡単に言うと、都合よく改ざんされた歴史)。日本地図の見方すら変わってしまいました。
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石母田 正(いしもだ ただし/しょう、1912年9月9日[1] - 1986年1月18日[1])は、歴史学者。元法政大学法学部教授。専攻は古代史および中世史で、多数の著作・論文がある。唯物史観の観点から多くの論文・著作を発表、戦後の歴史学に多大な影響を与えた[2]。戦後、歴史学を志した人々の多くが石母田の著書(特に「中世的世界の形成」)を読んだことにより、歴史学を専攻する道を選んだ(石母田正著作集各月報より)と述べている。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9F%B3%E6%AF%8D%E7%94%B0%E6%AD%A3
歴史については、私が子どもの頃と、今とでは、弥生時代が前倒しになるなど、教科書に書かれている内容も変わっているのだそうです(テレビ番組で見ました)。
1992年に刊行された『一〇〇問一〇〇答 日本の歴史2』(編/歴史教育者協議会 河出書房新社)の参考文献でも、『日本の古代国家』からの引用は多々行われていました。
歴史は変わる。
だから、学び直しが必要なのでしょうね。『交雑する人類 ― 古代DNAが解き明かす新サピエンス史』でも、全ゲノム解析によって旧説のおかしな点がわかったと報告されていました。
『日本の古代国家』からの数珠つなぎで読んだ『海民と日本社会』(著/網野善彦 新人物往来社)では、古くから日本は農業・稲作社会ではなく、漁も製塩も交易も廻船も同時に行う百姓であり漁民社会だったと指摘しています。
なお、『邪馬台国をとらえなおす』(著/大塚初重 講談社現代新書)も、やはり丁寧に考察が重ねられていて、二重構造モデルは違っているのだろうなあと改めて思った次第です。
『反穀物の人類史』(著/ジェームズ・G・スコット みすず書房)にも、文明の起こりは穀物ではなく、水辺を中心とした多様な生業(漁業、採取、交易など)だったのではないかという仮説が提示されていました。
「常識を疑え」
とらわれないことの重要さと本のすばらしさを実感した年末年始でした。
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