鎮静を考える2 治療どころか検査も拒否して、がんとともに生きる(2022年5月3日初出、2025年10月21日再構成)
85歳。女性。足のむくみがひどく、持病の脊柱管狭窄症が原因と疑って整形外科を受診。
ここで大きな病院での検査が必要と診断され、そのまま総合病院へ入院。エコーで大腸に大きな腫瘍が見つかり、医師は「ほぼ間違いなくがん」と考えました。
しかし、確定できなかったのです。女性が「手術するつもりがないから、検査は不要」と突っぱねたからです。
そのため、輸血でひどい貧血の治療を行い、退院しました。一人暮らしでは心配なので、看護付きの施設に移り、引っ越し後の片づけや趣味で忙しく暮らしていました。
私は終末期に関連する情報を集めていたのですが、検査まで拒否した例は今回が初めてでした。
ただ、この女性が主張するとおり、手術を希望しないのならば、検査も不要と主張するのは筋が通っています。
85歳という年齢を考えれば、検査そのものが苦痛で、体力と気力を奪うものに違いありません。今、がんでも元気に暮らしているのは、不要な検査を行わなかったことが関係しているように思われました。
多くの患者が、医師から手術や検査を勧められると、そのまま受け入れてしまいがちではないでしょうか。
病気と闘わない。
そのためには、終末期をどのように過ごしたいのかを患者側がしっかりとイメージし、できれば勉強しておくことも重要なのでしょう。
なお、この女性は看護師だったこともあり、代替医療などに頼ってはいません。手術と検査は拒否したものの、総合病院の担当医のことは気に入っているように、「あの先生に看取ってほしい」と話していました。病院も、それを受け入れています。
円満に、すべてを断るという選択肢もあるのです。
この女性については、がんの進行で腹水がたまっていき、強い不快感を訴えました。そして、「あの先生に看取ってほしい」と望んでいた医師のいる病院を受診します。
一通りの検査を終え、医師からは外科的な手術で腹水を抜くと、逆に体力が衰えるので、こうした処置は行わないと女性は告げられました。そして鎮静について、詳しく説明を受けたのです。
昭和初期を生きた女性は、鎮静薬について悪いイメージを抱いていました。副作用が強く、いわゆる「頭がおかしくなる」状態を招くと思ったようです。
この点で、医師は説明を重ね、女性は腹水の不快感と鎮静薬の不安を天秤にかけた結果、鎮静薬の使用を受けることにしたのでした。
なお、この女性については腹水はたまっていたものの、「はちきれんほどパンパン」というわけではなく、食欲もありました。
腹水を抜くか抜かないかは、ケースバイケースのようです。
利尿薬を投与しても腹水がたまっていく場合は、腹腔穿刺をして腹水を抜くこともあります。以前は「腹水はできるだけ抜かない方がよい」というのが医学の常識でした。しかし、腹腔穿刺によって、安全かつ確実に腹水による症状を楽にできるという研究結果が出ていますし、2000年ごろには米国を中心とした大規模比較試験で、「腹水をできるだけ抜かずに我慢した場合と、苦しくなる前に抜いた場合を比較すると、抜いた方が命の長さもQOL(生活の質)も良くなった」という報告も出ており、腹水は絶対抜かない方がいいというのは、過去の迷信になったといってよい状況です。
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/anursing/hirakata/201907/561578_2.html

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