終末期医療を考える3 「大学病院の医師の言うとおりにしておけば、がんは治る」と思い込んだ患者の話
夫が抗がん剤で苦しんだ姿を見て、自分は抗がん剤を使わないと決めた。
しかし、実際にがんになると、すべて大学病院の医師の指示どおりに、手術→抗がん剤治療を受けた。
苦しい抗がん剤治療。「がんばれば、がんは小さくなる」と思い込んでいたが、結果として、まったく変化はなかった。
担当の医師に詰め寄ると、ホスピスを勧められた。患者はショックを受け、激しく怒った後、「見捨てられた」と絶望した……
これは、ホスピスで亡くなった、私の母親の話です。
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私は仕事柄、多くの患者さんからお話を聞く機会がありました。そんなこともあって、母親がステージ4のがんとわかったときに「抗がん剤は、途中でもやめてもいいんだよ」と何度も言っていました。
おそらく、母親の頭では、抗がん剤治療中の夫の自殺の原因や、娘の話している内容は理解していたでしょう。
しかし実際の行動は、手術→抗がん剤治療のフルコース。
大学病院の医師の言うままに、検査も受けたようです。それが、高齢とがんで弱っていた腸の神経を傷つけたと思われ、母親は便漏れに悩まされるようになりました。
「人工肛門の手術を受ける!」
そう言いだして、私のほうは「もうこれ以上、手術はしないほうがよい」と話していました。しかし母親はあきらめきれず、近所の医師に相談したところ、「やめておきなさい」と止められたのだそうです。
便漏れにいら立っていた母親は、「こんなバカな体!」と自分の体を憎んでいるようでした。
この母親については、亡くなるまでさまざまな出来事がありましたが、一つだけ、確実なことが言えます。
誰かの言うとおりにがんばったからといって、病気が治るとは限らない。
"えらい"大学病院の医師の言うとおりに手術を受けても、健康本に書かれているような健康法に取り組んでも、謎の気功師の"治療"を受けても、自分の都合どおりに体を変えられることなどないのです。
さらに、手術や薬での治療だけでなく、検査さえも、高齢の体にはリスクになるかもしれません。がんばった結果としてQOLが下がり、失意の中で死を迎える可能性もあります。
失敗しない医者は存在しないから、私たちはそれに憧れ、「ドクターX」シリーズのようなフィクションに魅せられるではないでしょうか。
憧れは憧れ、現実は現実として、医療と向き合う必要が患者にもありそうです。
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