句読点をきちんと打てなかった小学生が、中学で国語の偏差値が75になったという事実
5年前に、「句点をきちんと打てない子どもたちのために」を書きました。
当時、小学校高学年だった子どもAが、句読点をきちんと打てなかったため、私は悩んでいました。あの手この手で、文章の書き方をどうやったら理解してもらえるのかを考えていました。
今、思い出しても最悪なのは、低学年の頃の、教師の教え方です。「『ネ・サ・ヨ』の文節分けで、句読点を打ちなさい」と子どもAに指導したようなのです。
「ネ・サ・ヨ」の文節分けについては、例えば「今日ぼくは友だちといっしょに学校へ行った」の場合。
今日サ ぼくはネ 友だちとネ いっしょにネ 学校へネ 行ったヨ
このように「ネ・サ・ヨ」が入れられるところで、文節が分かれるというもの。
「『ネ・サ・ヨ』が入るところに句読点を打つ」と教えられたせいで、「今日。ぼくは、友だちと、いっしょに。学校へ、行った。」のような文を子どもAが書くようになっていたのです。
こんな教え方をしたのは誰だぁと、つい激怒してしまいました。
まあ、小学校の教師だったのですが。
そんなスタートだったことと、発達障害(書字障害)その他で、文章を書くのは苦手だったと思われます。加えて、小学2年生が終わる頃でも九九が覚えられない、筆算はルールを無視するからできない、理科では実験で周りの子についていけない、板書をノートに書き写すのが非常に遅いなど、学習面での遅れや変なこだわりが見受けられました。
また、私は作文教室でほかの子どもたちが書くスピードなどを見ていましたが、平均しても格段に遅いとわかりました。
にもかかわらず、中学で、何度も国語の偏差値が75になったわけです。
原因はどこにあるのでしょうか。
もちろん、本人の努力が大きいのですが、思い当たるのは「作文で失敗させなかった」こと。発達障害の療育に取り入れられているABA(応用行動分析)というものがあります。ABAをベースに書かれているのが『発達障害の子どもを伸ばす魔法の言葉かけ』です。
この本が評判だったこともあり、ABAについて調べていたときに、「失敗は成功のもと」とは限らないと気付きました。
成功のもとになるのは、基礎的なことがある程度できている人物です。
知識がない、やり方もわからない、戸惑っている、怒られるなどで自己肯定感が低いという子どもは、日常生活ですでにストレスを抱えています。そこに新たな失敗が加わると、落ち込ませるだけで、学びは期待できません。
「失敗してもいいから、とにかく自分でやってみなよ」という言葉かけは、ベースができていない子どもには、教育放棄に当たるかもしれない……そう知ったとき、かなり驚きました。
しかし、『発達障害の子どもを伸ばす魔法の言葉かけ』を読み込んで、その内容を実践したところ、私と子どもAとの関係性が楽なものになっていったのです。
それで、子どもに作文を教えるときは、失敗しないように、手取り足取り教えることにしました。
やってみせ
言って聞かせて
させてみせ
ほめてやらねば
人は動かじ。
山本五十六
そのほか、子どもAの読書好きなところも、国語の偏差値が上がったことと関係があるのでしょう。
繰り返しになりますが、子どもたちの発達は個人差が大きいものだと実感しています。ですから、悲観する必要はありません。タイムマシーンがあれば、そのように5年前の自分に伝えたいところです。
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