感情の浮き沈みが激しく、言うことがコロコロ変わり、一貫性のない言動を取る人は、陰で「大人の発達障害ではないか……」と噂されることも少なくありません。
「発達障害」が身近なワードになりましたが、実は精神科医でもパーソナリティ障害・発達障害・双極性障害II型の鑑別が難しいといいます。
個々の症状については、ネットなどで調べてもらうこととして、ここでは主に「誤診」について考えてみましょう。
境界性パーソナリティ障害は,気分,行動,および睡眠の大幅な変動のために,双極性障害と誤診されることが最も多い。しかしながら,境界性パーソナリティ障害では,気分および行動がストレス因,特に対人関係でのものに反応して急激に変化するのに対し,双極性障害では,気分はより持続的であり,反応性が低い。
鑑別診断
自己愛性パーソナリティ障害は以下の障害と鑑別することができる:
双極性障害:自己愛性パーソナリティ障害患者はしばしば抑うつにより受診し,その誇大性のために,双極性障害と誤診されることがある。自己愛性パーソナリティ障害患者は抑うつを有することがあるが,他者より上にいたいという欲求が常にあることによって,双極性障害患者から鑑別される。また,自己愛性パーソナリティ障害では,気分の変化は自尊心に対する侮辱によって引き起こされる。
反社会性パーソナリティ障害:自分のために他者を利用することは両方のパーソナリティ障害の特徴である。しかしながら,その動機は異なる。反社会性パーソナリティ障害患者は物質的な利益のために他者を利用するが,自己愛性パーソナリティ障害患者は自尊心を維持するために利用する。
演技性パーソナリティ障害:他者の注意を惹こうとすることは両方のパーソナリティ障害に特徴的である。しかし,自己愛性パーソナリティ障害患者は,演技性パーソナリティ障害患者とは異なり,注意を惹くために気取ったことやばかげたことをするのを非常に嫌い,賞賛されることを望む。
「診断は、双極性障害II型か境界性人格障害か発達障害のどれかだと思います」と言われる、医者によって診断が変わる
今の不調感、気分の波、コミュニケーションの取りづらさ、人間関係の難しさがどこから来ているのかというときに、よく僕らは「心理的な問題(人格障害)」、「知的能力の問題(発達障害)」、「脳病(双II)」から来ているのではないかと想定しますが、これらのどれから来ているのかわかりにくいケースがあります。そのため、人格障害なのか発達障害なのか双極性II型なのか、となってしまいます。これが今の医学の限界だったりします。
上記のほかにも、「パーソナリティ障害・発達障害・双極性障害II型が併存していることがある」という記述もありました。
やはり、鑑別が難しいようですが、以下のことは言えそうです。
○パーソナリティ障害→他者から批判などを受けたときに、それに反応して気分や行動が大きく変化する(気分などが変わりやすい)
○発達障害→自分の考えなどを周囲に理解してもらえず、そのストレスが累積して、気分や行動が大きく変化する
○双極性障害II型→「誰かに何かを言われた」などとは関係なく、気分や行動が大きく変化し、躁や鬱の状態が長く続く
心理的な問題か、知的能力の問題か、脳病かはさておき、これら3つは、社会生活を送る上で、対人関係でのトラブルを抱えやすく、自分も他人も困る(主に他人を困らせる)状況です。
無人島で一人ぼっちで暮らしていたら、何の問題も生じないでしょう。そう考えた場合、対人関係の困難さをどのように自分で乗り越えていくのかを、自分で考えて、工夫していく必要があるように思えました。
パーソナリティ障害か発達障害か双極性障害II型かの診断はさておき、どんなときに対人トラブルを起こすのかがわかっていたら、あらかじめそれなりの対処が用意できるはずです。
SNSはやめておく。
自分の特性に合った仕事を選ぶ。
マルチタスクは回避する。
生活面でのさまざまな工夫を紹介した書籍も、多数発行されています。
障害があるから無理。
障害があるんだから支援して。
障害を理解しろよ。
そんな態度だと、状況が悪化しやすいものです。近畿大学医学部 精神神経科学教室の白川治教授の言葉に深くうなずいたのでした。
精神疾患からの回復には,その病理性がそれほど深くなければ,いかに自分と向き合うか,が求められているはずである。グレーゾーンの発達障害にも支援が必要と言われればもっともだと思う反面,パーソナリティの病理として捉え,自分と向きあうことなしには本当の意味での回復は望めないようなケースも少なくない気がしてならない。
■対処法
パーソナリティ障害の人への対処法をまとめました。
○「この人、嫌だな」という自分の感情に気づく(気持ちにふたをしない)○対人関係の境界線を明確にする(たとえ家族であっても)
○一定の距離を置く
○自他の問題をきっぱりと分ける
○自分も境界線を越えないように注意する(見ざる言わざる聞かざる)
○「どうして?」「こうしたほうがいい」はNGワード
○嫌なことをされても、仕返ししようとしない(泥沼状態になるため)
○挑発に乗らない
○同じ土俵の上に上がらない
○白黒はっきりさせようとしない
○無理に人間関係を続けようとしない(たとえ家族であっても)
○原因を調べることに意味はない
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