どうして「わかりにくさ」が発生するのか その2  作文は「言葉のキャッチボール」

   千葉県の公立高校の千葉県公立高校作文・小論文課題を、興味深く読んでいました。

○千葉県公立高校作文・小論文課題(27 ~ 31 年度)
https://school-data.com/exam_archives/pdf_data/2020/191226sakubun_chiba.pdf

 学校によって、課題があまりにも違うからです。そして、課題を見ると、採点が減点方式か加点方式かがわかります。

 作文もコミュニケーション手段の一つ。

 コミュニケーションは「言葉のキャッチボール」などと呼ばれているとおり、相手があって成立するもの。出題者=読み手に届くような文章を作成するように、作文を書く際には心がけたいものです。投げっぱなしにならぬよう……



■出題者の意図

 千葉県公立高校作文・小論文課題(27 ~ 31 年度)を見たところ、出題者である学校側の意図は、以下の2つに分けられました。


1 学校の社会的地位を上げてくれる、面白い視点を持った学生かどうかを判断したい
 通常のテストではパッとしない成績の学生でも、面白い作文を書くケースは少なくないでしょう(もちろん、テスト成績もよく、作文がユニークな子どももいますが)。

 あるデータを読ませて、それをもとに作文をさせるパターンの出題は、面白い切り口で文章を書ける学生に入学してほしいという意図が見えます。
 多少独りよがりな意見であったとしても、ズバッと核心を突き「これは面白い」と読み手をひきつけるような文章は、書き手の将来性を感じさせます。そんな学生に来てもらうと、バラエティ豊かな校風になるという期待もあるのかもしれません。

 どちらかといえば偏差値の高い学校に、こうした出題傾向が強く見られました。
 そして加点方式で採点されていると推測します。多少、文章が荒れていても、「ほぅ!」と新鮮味を覚える内容ならば、評価は高いでしょう。


2 教師との間できちんとコミュニケーションが取れる学生かどうかを判断したい
 作文から判断できるのは、一般常識と読み手への思いやりを持っている人物かどうかです。

 ですから、句読点などがメチャクチャで、課題とは無関係のことをダラダラと文章にしている人物は、「コミュニケーション能力と協調性が乏しい」と判断されます。

 また、自分をよく見せようとして思ってもいないことを書いたり、あまり理解していないことを書いたりすると、読み手は「信用できない人物」と判断する可能性があります。

 作文の課題が「高校生活で挑戦したいこと」「高等学校における自分の目標」などの場合、学生のコミュニケーション能力を出題者は判断していると考えられます。
 そして、与えられたテーマに合致する文章を書いているか、適切に句読点は打たれているか、誤字脱字はないか、主語・述語はきちんと対応しているかなどのポイントごとに、減点方式で採点されていると推測します。


■作文の基本

1 たくさん書くことで上達する
 数をこなすことで技術が上がるのは、作文全般に当てはまります。手を動かして書く作業が、作文の技術を向上させるのです。

2 情報を集める
 自分の経験では、書く分量の3倍以上の情報が頭になければ、文章化はできません。800字の原稿を書くときには、2400字以上の情報を持っていなければいけないということです。

3 脳内情報をまとめる
 「頭の中にある情報」には、本やインターネットなどで仕入れた外部情報と、頭の中で生まれた脳内情報があります。
 外部情報をつぎはぎした文章は、単なる引用です。外部情報をもとに頭の中で作り出した脳内情報(自分の意見)を、わかりやすく表現するのが作文です。

4 課題に対応した答えを作る
 作文では「以下の文章を読んで、××のメリットについて答えなさい」といった課題が出されることもあります。
 この設問に対し「私は××には反対です」と書いた時点で失敗です。メリットを聞かれたらメリットを、デメリットを聞かれたらデメリットを答えるのです。
 ですから、課題を最後まで読んで(というより、最後に注目して)、出題者が何を求めているのかを把握します。
 「以下の文章を読んで、××のメリットについて答えなさい」に対しては、「△△といったメリットがあります。しかし▽▽といったデメリットがあるので、私は××には反対です。◇◇というやり方を提案したいと思います」と述べるようにします。

■会話(議論)で自分の意見を作り出す

 外部情報を自分の頭の中でこねくり回していると、起こりがちなのが論理の飛躍。言い換えると、自分勝手な屁理屈を作り出して、「作文はコミュニケーションである」という基本が頭から抜け落ちてしまうのです。
 結果、読むに堪えない文章が出来上がります。
 ですから、自分が書きたいことは、周りの人と会話したり議論したりしてから、作文に取り掛かることをお勧めします。

○議論のルール
1 主張している人物ではなく論を突く
2 事実に基づいて主張する
3 具体的に主張する
4 屁理屈でもいいので、必ず理屈をつける
5 仮定に仮定を重ねない
※「近い将来に不法入国者が増えてしまったら、日本の治安が悪くなる可能性がある。もし日本の治安が悪くなったら……」というように、現在起こっていない仮の事例に対して予測を行い、その予測(仮の事例)を前提に予測をしていたら、議論にはならない
6 心の問題は道徳であり、議論では持ち出さない
7 日本の法律に違反する内容は主張しない(法律の問題点は指摘してもよい)

■作文の構成とメモ

 すべての作文は、基本的に「はじめ」「なか」「おわり」の3部構成です。
 大切なのは、必ずメモを作ることです。「はじめ」「なか」「おわり」に何を盛り込むのかを、用紙の空きスペースや裏に書くのです。走り書きの汚い字でかまいません。
 頭の中で「こんな構成で書けそう」と思い巡らせただけでわかりやすい文章が書けるのは、天才だけです。天才でない人は、面倒でもメモを作りましょう。

○小論文の構成
1 はじめ
 これから何について語ろうとしているのか、相手にわかるように紹介します。はじめで結論を書くのもいいでしょう。
2 なか
 自分がどのような意見を持ち、それにはどういう理由があるのかを、相手に説明します。
3 おわり(オチ)
 自分は何ができるのか、自分は何をしたいのか、自分自身に引き付けてオチをつけます。できれば反対意見を言いっぱなしにせず、前向きな言葉と肯定文で締めくくります。

■ぶっちゃけ

 毎年、似たような課題が出されている学校については、「去年と同じ課題でしょ? うちの学校に来たいんなら、すでに知っているよね?」という出題者の気持ちが透けて見えます。そして、減点方式で採点されていると推測します。

 ならば、例年の課題で、自分としては完璧な作文を何度も書いて、インプットしておきましょう。
 例えば、毎年「高校生活で挑戦したいこと」と似たテーマならば、今の時点で、500~600字で作文をしておき、周りの大人に添削してもらうのです。日本語としての誤りを直してもらった文章を、何度か書いて覚えてしまうと、試験の当日は減点の少ない作文ができるということです。

 なお、時事問題などを扱った文章を読んだ上で作文をするスタイルの試験ならば、普段から情報を集めて、周りの人と議論をしておくしか対策はありません。
 『クラナリ』編集人は過去の課題を見て、「大人でも難しい」と思ったぐらいです。ははは。
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