腎臓を巡る、長く、曲がりくねった物語 その13 細胞はどうやって酸素と栄養を取り込んでいるのか
間質液(組織液)には、酸素と栄養もあれば、二酸化炭素とゴミ(老廃物)もあります。細胞にとって必要なものも不要なものも、ゴチャゴチャッと入り混じっている状態なのです。
私たちの住む社会でいえば、飲み水と排水が混ざっているというカオス。健康によくありません。
そんな状態から、どうやって細胞は必要なものを細胞内に取り込んでいるのでしょうか。
まずは、酸素と二酸化炭素が関係している呼吸について、考えてみましょう。
呼吸というと、鼻の穴からの空気の出入り、あるいは肺でのガス交換などを思い浮かべますが、こうした外界と生体との間で行われる呼吸は「外呼吸」。体の中の細胞で行われている呼吸は、「内呼吸」と呼ばれています。
細胞の中では、酵素の働きで、酸素を使ってグルコース(ブドウ糖)などが分解されて、その際に放出されるエネルギーはATP(アデノシン三リン酸)になって保存されます。グルコースなどが分解される際には二酸化炭素と水ができます。
この一連の反応が、呼吸なのです。
内呼吸には、解糖系・クエン酸回路・電子伝達系の3つの反応があります。これらの反応で二酸化炭素ができるため、細胞の内側の細胞内液には二酸化炭素が増えていきます。
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内呼吸(Wikipediaより、Author:Fvasconcellos, RegisFrey, ふわふわ) |
細胞の外側の間質液には、血液で運ばれてきた酸素がたくさん含まれています。
●酸素濃度 細胞内<細胞外
●二酸化炭素濃度 細胞内>細胞外
酸素や二酸化炭素といったガスは、細胞膜を自由に通過できます。ですから、濃度が均一になっていく「拡散」が細胞の内側と外側で同時に起こるというわけですね。
ただ、エネルギー源のグルコースは、細胞膜を通れません。ですから、細胞膜に抜け道が作ってあるのです。それがグルコース輸送体(Glusose Transporter、グルコーストランスポーター、GLUT)。
グルコース輸送体には、以下の4つがあります。
〇GLUT1 主に脳の細胞に存在
〇GLUT2 主に肝臓、小腸上皮細胞の基底膜(血流側)、尿細管細胞の基底膜、 膵臓に存在
〇GLUT3 主に神経細胞に存在
〇GLUT4 主に脂肪組織、横紋筋(骨格筋、心筋)に存在
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細胞小器官(イラスト/おやすみん) |
細胞で内呼吸が行われる際には、細胞の内側にあるミトコンドリアなど細胞小器官が機能しています。細胞小器官の主な成分はタンパク質や脂肪で、内呼吸などで働けば劣化していきます。要は使い物にならなくなるということ。
こうして、細胞の内側でゴミができてしまいます。
さまざまなゴミを処理するのが、リソソームという細胞小器官です。リソソームの内部には、60種類以上の酵素が詰まっています。これらの酵素の働きで、不要になったタンパク質、脂質、糖質などは、アミノ酸、リン脂質、糖、核酸などにまで、小さく分解されます。
分解されたもので、使えそうなものは細胞質に吸収されます。
一方、使えないゴミは、細胞膜と同じ成分でできた小さな膜(小胞)がパクッと包んで、細胞膜にまで移動し、パカッと開いて細胞の外に出してしまいます。この一連の働きを、エキソサイトーシス(開口分泌)といいます。
ちなみに、エキソサイトーシスの逆は、エンドサイトーシス。細胞の外にある物質を小さな膜でパクッと包み、細胞の内部でパカッと開いて取り込みます。
このように細胞の働きを見ていくと、人体だけでなく、細胞も化学工場などが存在する水中国家を形成していることがわかります。
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水中国家(AIで作成) |
■参考資料
Wikipedia
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 生体膜生理化学
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