腎臓を巡る、長く、曲がりくねった物語 その14 それで、体に入ってきたグルコースとアミノ酸はどこでどうなるのか?
腎臓を巡る、長く、曲がりくねった物語 その9 それで、体に入ってきた脂質はどこでどうなるのか? では、脂質の体内経路を確認しました。
グルコース(ブドウ糖)とアミノ酸については、どこでどうなっているのでしょうね。
調べたところ、厚生労働省で、非常にわかりやすくまとめてありました。
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厚生労働省 3大栄養素(エネルギー)が互いに変換され利用される主な仕組み |
税金を払った甲斐がありますね。もうこれで十分!
ですが、文字でもおさらいしておきます。
■グルコースの体内の経路
食事をした後で、小腸で吸収されたグルコースを100%としましょう。
グルコースは血液に取り込まれ、門脈を通って、まず、肝臓に到達します。
肝臓では30%のグルコースが、グリコーゲンになって貯蔵されます。グルコース同士がいくつか結合(重合)されたものがグリコーゲンです。
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グリコの由来はグリコーゲン(グリコ公式より) |
肝臓から出てくる血液だと、グルコースは70%になっています。
この血液は静脈で心臓に送られてから、肺を通って心臓に戻り、全身に送られます。
グルコースが含まれる血液が膵臓に到達すると、膵臓からインスリンが分泌されます。インスリンは、肝臓や筋肉、脂肪組織にグルコースを取り込ませる働きをします。
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厚生労働省 ブドウ糖の取り込みとインスリン分泌の関係 模式図より、一部改変 |
筋肉では、肝臓と同様に、グルコースはグリコーゲンとして蓄えられます。
脂肪細胞では、グルコースはトリアシルグリセロール(中性脂肪)になって、蓄えられます。
脂肪細胞は全身にありますが、特に太ももやおなか、お尻、内臓の周りに多く、ここにトリアシルグリセロールが貯蔵されているというわけです。
また、脳と赤血球が、エネルギー源としてグルコースを使います。つまり、グルコースが極端に減ってしまうと、脳も赤血球も働かなくなり、死に至るリスクが出てくるのです。
そのため、血液中のグルコースが減ると、肝臓と筋肉に蓄えられていたグリコーゲン、そして脂肪細胞のトリアシルグリセロールが分解されてできたグリセロールから、グルコースが作られて、血液に放出されます(トリアシルグリセロールの脂肪酸からはグルコースはできません)。
体に吸収されたグルコースの量と、エネルギー源として使われたグルコースの量が等しいときには、内呼吸で利用された結果として二酸化炭素と水になり、腎臓や肺から排出されます。
■アミノ酸の体内の経路
食事をした後で、食べ物などに含まれるタンパク質は、小さいサイズのペプチド(アミノ酸が結合したもの)やアミノ酸に分解されて、小腸から吸収されます。
小腸には腸内細菌がすんでいます。一部の腸内細菌がアミノ酸を代謝するときに、アンモニアが大量に発生します。アンモニアは毒性のある物質で、血液の中に大量にたまって濃度が高くなると、さまざまな神経症状が引き起こされます。
アミノ酸とアンモニアは血液に取り込まれ、門脈を通って、まず、肝臓に到達します。
肝臓では、以下をはじめ、さまざまなタンパク質がアミノ酸から再合成されます。この働きから、「肝臓は化学工場」と呼ばれているんですよね。
〇アルブミン
〇血液凝固タンパク質
〇免疫グロブリン
〇ホルモン
〇ヘモグロビン
〇アクチン(細胞骨格を構成)
〇ミオシン(筋収縮に関係)
〇酵素
そして、アンモニアについては、肝臓で無毒な尿素に変換されます。
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尿素回路(難病情報センター 尿路サイクル異常症より) |
タンパク質の再合成に使われなかったアミノ酸を、肝臓に蓄えておくことはできません。
再合成で残ったアミノ酸は、血液は静脈で心臓に送られてから、肺を通って心臓に戻り、全身に送られます。そして、エネルギー源として使われたり、脂質や糖質に変換されたり、細胞を構成するタンパク質や酵素、ホルモンなどの材料になったりします。
体液には、遊離アミノ酸(他の物質と結合していないアミノ酸として存在するもの)が存在していて、これを「アミノ酸プール」と呼んでいます。
細胞で作られたタンパク質は、古くなるとアミノ酸に分解され、新しく合成されるタンパク質と入れ替わっています。
体の中でアミノ酸が分解される過程や、アミノ酸からほかの物質を作る際に、アンモニアが発生します。そのアンモニアは、グルタミンシンテターゼという酵素の働きでグルタミン酸というアミノ酸とくっついて、グルタミンという、これまたアミノ酸になります。そして、血流に乗って肝臓に送られて、腸管から来たアンモニアと一緒に無毒な尿素に変換されます(尿素回路)。
腎臓で取り込まれたグルタミンからは、近位尿細管でグルタミナーゼという酵素の働きでアンモニアが作られてます。アンモニアは大量の水素イオン(H+)を除去するため、血液のpHの調整に利用されています。
肝臓で作られた尿素は、腎臓から体の外へ排出されます。
■参考資料
厚生労働省 3大栄養素(エネルギー)が互いに変換され利用される主な仕組み
ダイエットで減った脂肪はどこへいく?
さとう内科クリニック 運動療法①:どんな運動でも血糖は下がる?
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