腎臓を巡る、長く、曲がりくねった物語 その18 必要なものだけリサイクル(尿細管)

  人体という水中国家で、腎臓の役割は、下水処理場兼浄水施設であり、ゴミ処理場であり、リサイクルセンターであり、実は丞相でもあります。
 
 下水処理場兼浄水施設の機能を持つのが、糸球体です。


 今回はゴミ処理場・リサイクルセンターの機能を持つ尿細管について検討しましょう。
尿細管(看護roo!より一部改変)

 糸球体は、穴によって、血液の大きな成分(血球やタンパク質)と小さな成分(グルコースやゴミなど)をふるい分けしました。
 小さな成分を含んだ液体である原尿は、ボウマン嚢で受け止められてから、尿細管に流されます。
 原尿には、人間の体にとって必要な水分やグルコース、アミノ酸、ミネラルなどが混じっています。糸球体では大小でふるい分けしただけなので、原尿には要・不要関係なく、たくさんの成分が含まれています。
 特に水分については、糸球体が濾過したものをすべて排出してしまうと脱水に陥ります。そのため原尿の99%は再吸収されるのです。

 尿細管では、さまざまな成分の分別が行われています。人間の社会でいうと、ゴミのリサイクル処理です。


 ビルなどを解体してできる建設廃棄物には、コンクリートや木材など複数種類の素材が混じり合っている。このため、最終処分場でゴミとして埋め立てる前に、解体現場や分別処理場などで分別している。

 上の写真では、ベルトコンベアーで流れてくる廃棄物を、ロボットが分別しています。このロボットアームの役割を果たしているのが、尿細管上皮細胞です。

 尿細管は、糸球体に近いほうから、近位尿細管、ヘンレループ、遠位尿細管と区分されていて、部位ごとに再吸収されるものが異なっています。

 ゴミ処理場・リサイクルセンターのロボットアームは電力で動きますが、近位尿細管や遠位尿細管ではエネルギー(ATP)を使って物質の出し入れをしています。

■腎臓を巡る、長く、曲がりくねった物語 その13 細胞はどうやって酸素と栄養を取り込んでいるのか

 ヘンレループでは、「水分は薄いほうから濃いほうへ」の浸透圧で、水分が再吸収されています。

■腎臓を巡る、長く、曲がりくねった物語 その12 「濃度差」が物質輸送のカギ

 ※フリーランスの編集者・ライターである『クラナリ』編集人(バリバリの文系)は、腎臓に関する記事や書籍に携わる機会が多いため、それに関連していろいろと考察しています。素人考えですが。

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