腎臓を巡る、長く、曲がりくねった物語 その5 外界にゴミを捨てるためのトンネル
※フリーランスの編集者・ライターである『クラナリ』編集人(バリバリの文系)は、腎臓に関する記事や書籍に携わる機会が多いため、それに関連していろいろと考察しています。素人考えですが。
人体という水中国家では、トンネルから外界へ、ポイッとゴミを捨てています。
水中国家を貫くトンネルは、一方通行で、食べ物が入ってきてゴミ(廃棄物)を排出。
トンネル(というより穴ぼこ)その1は下水処理場兼浄水施設とつながっていて、双方向で、支燃物(可燃物に結びついて可燃物を燃やすもの)を取り入れてゴミ(ガス)を排出。
トンネル(というより穴ぼこ)その2は下水処理場兼浄水施設兼ゴミ処理場兼……とつながっていて、一方通行で、ゴミを排出。
人体では、食べ物のタンパク質が小腸でアミノ酸に分解される際に、腸内細菌の働きによってアンモニアが発生します。そしてアミノ酸とともに、小腸で血液の中へと吸収されます。
アンモニアは毒性が強く、そのまま脳に到達すると、脳機能が低下して意識障害などが起こります(肝性脳症)。
私たちが肉などを食べても意識障害にならないのは、小腸からの血液は肝門脈という血管を通って、必ず肝臓へと運ばれ、アンモニアが尿素になって無毒化されているからです。
また、お酒に含まれているアルコールが胃や腸から吸収されると、血液に吸収されて、肝臓に運ばれます(胃から吸収されるのは5~10%程度)。
ここでまず、ADH(アルコール脱水素酵素)の働きでアセトアルデヒドに分解されます。 アセトアルデヒドは、動悸や吐き気、頭痛などの原因となる、毒性の強い物質です。
このアセトアルデヒドは、ALDH(アルデヒド脱水素酵素)の働きで、無害な酢酸へと変化します。
なお、アルコールのすべてが分解されるわけではなく、呼気(0.7%)、汗(0.1%)、尿(0.3~4%)からも排泄されています。
肝臓は、アンモニアを尿素に変換したり、アルコールを酢酸に分解したりして、毒性のある物質を体にとって無害なものにしています。
また、細胞の中には、遺伝情報を伝えるDNAやRNAといった核酸があります。細胞が古くなって分解されると、内部の核酸も分解されて、構成成分のプリン体が現れます。
プリン体は血液に乗って肝臓に運ばれ、尿酸に変えられます。
肝臓から出てきた血液は、心臓から腎臓へと運ばれます。そして尿素や尿酸などの大部分は、腎臓から尿として排出されています(一部は腸管から便として排出)。
酢酸は、血液に乗って全身に運ばれる中で、化学反応によって水と二酸化炭素になります。水は腎臓から、二酸化炭素は肺から排出されます。
便が出る消化管は、水中国家を貫くトンネル。
二酸化炭素が出る肺は、トンネル(というより穴ぼこ)その1。
尿が出る腎臓は、トンネル(というより穴ぼこ)その2。
さて、腎臓では、どうやってごみを捨てているのでしょうか。
それは次回に!
■参考資料
アルコールの吸収と分解
ものはなぜ燃えるのか - 消防研究センター
ビールだと水よりたくさん飲めるのはなぜ?
アルコールが体に入ると・・・
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