腎臓を巡る、長く、曲がりくねった物語 その8 膀胱の話も少々
※フリーランスの編集者・ライターである『クラナリ』編集人(バリバリの文系)は、腎臓に関する記事や書籍に携わる機会が多いため、それに関連していろいろと考察しています。素人考えですが。
血液が腎臓に流れ込むと、糸球体で水分と一緒に小さな物質が濾過されて、原尿が作られます。
糸球体を出た原尿は、尿細管を通って尿になり、腎盂(じんう)に集められます。
原尿には、体に必要な水分や栄養素などがたくさん含まれていて、尿細管を通るときに必要な成分が再吸収されます。
原尿の99%が尿細管で再吸収され、残った1%が尿として体の外に出されているのです。
腎盂から出た尿は、尿管を通って膀胱へと流れます。
膀胱は、尿を一時的にためておく、袋状の器官です。筋肉でできていて、骨盤の中にあります。
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腎臓・尿管・膀胱・尿路(看護roo!より、一部改変) |
どうして尿をすぐに体外に出さずに、ためておくのでしょうか?
一説によると、尿を垂れ流しにするとにおいが発生して、「ここに尿を出している生き物がいるぞ!」と周りにバレてしまうからだそうです。においのために襲われたり、待ち伏せに気づかれたりするということ。ですから、膀胱があるのだそうです。
だったら、周りを水に囲まれていて、尿を出してもすぐに薄まってしまう魚は、膀胱は必要ないのでは?
そう思って調べたところ、魚にも膀胱がありました。膀胱を持つものと持たないものがあるようです。
マダラについては、膀胱から水分が再吸収されているとのこと。
マダラの膀胱上皮細胞は活発に吸収活動を行っていたことが考えられ, このため, マダラの膀胱は尿から水を再吸収し, 浸透圧調節に寄与している可能性が示唆された.船上で凍結して持ち帰った膀胱内液から, 尿の代表的成分である65-213μg/dlのアンモニア-Nと1.5-3.5mg/dlの尿素一Nが検出された.
そうであれば、人間とマダラとでは、膀胱の役割がかなり違うということになります。マダラの膀胱は、人間の腎臓にある尿細管と同じ働きをしているからです。
※カエルもマダラと同様に、再吸収を行う膀胱があります。
ちなみに、哺乳類は、タンパク質を取り入れた際にできてしまう毒物のアンモニアを尿素に変えて、水に溶かして尿として排出します。
爬虫類・鳥類や昆虫は、アンモニアを尿酸にして、ふんで排出しています。また、多くは膀胱を持たないとのこと。
また、昆虫・ムカデ・クモなどの節足動物、そして緩歩動物(クマムシ)は、マルピーギ管が腎臓の役割を果たしているようです。
かなり脱線しましたが、人間に話を戻すと、尿失禁、頻尿といった「尿のトラブル」のほとんどが腎臓が直接の原因ではありません。男性の場合は前立腺肥大、女性の場合は骨盤底筋群の緩みと、膀胱が過敏になった過活動膀胱が多いようです。
尿失禁
〇膀胱などを支えている骨盤底筋群の緩んで、尿の出口がキュッと締まらなくなった
〇前立腺肥大で尿の出が悪くなり、膀胱に残った尿が少しずつ漏れる
頻尿
〇前立腺肥大で尿の出が悪くなり、尿が少しずつしか出せなくなった
〇膀胱が過敏な状態(過活動膀胱)で、膀胱に少量の尿しかためられない(生活習慣やストレスが原因のことも)
〇膀胱に細菌が感染して炎症が起こり(膀胱炎)、膀胱の知覚神経が刺激される
〇尿路で、尿に含まれるカルシウムやマグネシウム、尿酸などが結晶化し(尿路結石症)、結晶が膀胱を刺激する
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■参考資料
腎性尿崩症
腎性尿崩症(nephrogenic diabetes insipidus:NDI)とは,腎において集合管主細胞(principal cell)の抗利尿ホルモン(antidiuretic hormone:ADH)に対する感受性が減弱し,尿濃縮力の低下をきたす疾患である1,2)。日常の臨床で遭遇する腎性尿崩症の大部分は,薬剤による副作用や電解質異常が引き起こす後天的なものであり,その病態は複雑な場合も少なくない。一方,小児期には遺伝性に NDI が発症し,臨床的にも重要な位置を占めている。先天性の NDI では遺伝性に集合管でのバソプレシン(AVP)受容体 AVPR2 や水チャネルAQP2 が機能異常を起こし,下垂体後葉で AVP が過剰に分泌されているにもかかわらず,腎がその刺激を正常に受け取れず,腎髄質部の浸透圧勾配形成が障害されて尿崩症を発症する。
※ 難病情報センターによると、バソプレシン分泌低下症(中枢性尿崩症)の患者数は5000-10000人で、約3 万人に1 人の割合。腎性尿崩症の正確な罹病率は不明で、 カナダのデータから推計すると、日本には約400人の患者が存在することになるようです。
無尾両生類の水調節機構
カエルは膀胱に蓄えた尿から水分を再吸収するという独特の機構も持つ。カエルの尿からの水の再吸収は膀胱で起こるものが主で,哺乳類と異なり腎臓の腎髄質対向流系が欠如しているので,腎臓での尿の濃縮はできない。
野生動物とエキゾチック動物の臨床
5 章 海洋無脊椎動物の多様性
内分泌系を介した高次の体液浸透圧調節機構をもつ魚類では、環境の浸透圧変化にかかわらず体液浸透圧を 400mOsm 程度の一定のレベルに維持することができるが、このような浸透圧調節系を持たない無脊椎動物の場合は、体液の浸透圧は環境水の浸透圧の影響を受け大きく変化する。前者のタイプを浸透調節型、後者のタイプを浸透順応型とよぶ。浸透順応型である海洋無脊椎動物では、体液浸透圧が環境水の浸透圧の影響を受けて変化するため、それに応じて個々の細胞の容積も変化する。
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