腎臓を巡る、長く、曲がりくねった物語 その24 尿の成分
血液の液体成分である血漿の約90%は水。そして尿の90%以上が水だと、大塚製薬のサイトには書かれていました。根拠となっているのが、『図説 からだの仕組みと働き』(医歯薬出版)で、96%が水となっています。
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photo/Ivan Dražić |
国立長寿研究センターのサイトによると、 1日の飲水量は体重の2~2.5%、尿量は体重1kg当たり20~25mL程度が適切とされているようです。
体重が60kgの場合は、1日の尿量は1500mL程度となります。尿の96%が水ということで、仮に1日の尿の重さは1500gとしましょう。
1500gの尿には、以下の物質が含まれているようです。
尿素窒素 6.5~13.0 g/dayクレアチニン 0.5~1.5 g/day尿酸 400~800 mg/day無機リン 400~800 mg/dayカルシウム 100~200 mg/day尿糖 40~85 mg/dayマグネシウム 20.6~164.9 mg/day尿蛋白 20~120 mg/dayナトリウム 150~250 mmol/L/dayカリウム 50~100 mmol/L/dayクロール 70~250 mmol/L/day
国立がん研究センター中央病院臨床検査科臨床検査基準値一覧より、一部改変
実は、最初にヒットした別の文献に「尿素は蛋白質の終末代謝産物であり,肝臓で合成され,腎臓から排泄される.ヒトが蛋白質から取り入れた窒素のうち,過剰分のほとんどが尿中に尿素の形で排泄される.通常,20〜30 mg/日の排泄がある」という記述がありまして、あまりに少ないため、「えー、違うだろう……(困った)」と思って、いろいろと調べていたのです。おそらく、「mg」ではなく「g」……
ちなみに、その別の文献では、尿の成分は次のように記述されています。すべて1日当たりの量です。
尿素 7~13g ※正誤表(2021/08/06)で「7~13g」と修正されていたので、こちらも修正クレアチニン 約 1,000 mgアミノ酸 約 150〜200 mgシュウ酸 約 20 mgアンモニア 0.5〜0.8 mg 腎臓の尿細管細胞でグルタミンやアミノ酸が代謝を受けてできる
尿素とは、主に腸でアミノ酸が吸収・分解された際にできる有害なアンモニアが、肝臓で変換されてできる無毒の物質です(尿素回路)。この尿素に含まれる窒素が、尿素窒素。
タンパク質の構成成分であるアミノ酸は、窒素(N)、炭素(C)、酸素(O)、水素(H)で構成されています
アンモニアはNH3で、尿素はCH₄N₂O。
なお尿素回路については、以下で紹介しています。
尿の黄色の由来は、血液中の赤血球のようです。赤血球の寿命は120日前後で、寿命を迎えた赤血球は脾臓で分解されます。ここでは、赤血球の成分であるヘモグロビンから、間接ビリルビンが作られます。
間接ビリルビンは肝臓に運ばれて、直接ビリルビンになり、胆汁に排出されます。胆汁の直接ビリルビンの多くが、胆管を通って十二指腸に流れ、便とともに体外に排泄されます。
直接ビリルビンの一部が血液に乗って腎臓に運ばれ、原尿に入り、尿細管でウロクロムという黄色の物質へ変化します。こうして、尿の色が黄色になるのです。
また、直接ビリルビンが、腸内で腸内細菌によって分解されると、ウロビリノゲンになります。ウロビリノゲンが血液に乗って腎臓に運ばれると、尿の中に排出されます。これが尿ウロビリノゲンです。
ウロクロムの1日の生成量は、ほぼ変わりません。水分を多く取ると尿中のウロクロムが薄められて、尿の色が薄くなります。このように摂取する水分量で、尿の色は変化するのです。
なお、間接ビリルビンはアルブミンと結合しているため、腎臓の糸球体で濾過されません。つまり原尿には入らないということ。ただ、糸球体が壊れてきて「ふるい」が「ざる」になると、尿に出て来ちゃうかもしれませんね。
最後に、上記で引用した以外にも、尿に含まれている成分があるかもしれませんが、とりあえずまとめてみました。
1日の尿の量 1500g
尿素 6.5~13.0 g→10g
クレアチニン 0.5~1.5 g→1g
尿酸 400~800 mg→0.6g
無機リン 400~800 mg→0.6g
アミノ酸 約 150〜200 mg→0.17g
カルシウム 100~200 mg→0.15g
マグネシウム 20.6~164.9 mg/day→0.1g
尿蛋白 20~120 mg/day→0.07g
尿糖 40~85 mg→0.06g
シュウ酸 約 20 mg→0.02g
アンモニア 0.5〜0.8 mg→0.00065g
水が99.15%、尿素が0.67%で、後は円グラフで判別できないほど微々たるものという結果になりました。もちろん、あくまでもざっくりとした数字です。
■参考文献
おもな検体検査:尿・便の検査 尿ビリルビン、尿ウロビリノゲン→非常にわかりやすいので、お勧め
多発性嚢胞腎がよくわかるサイト 「尿」で知る腎臓の病気
国立がん研究センター中央病院臨床検査科臨床検査基準値一覧
尿検査のみかた,考えかた
カルシウム,マグネシウム代謝の考え方
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