頭痛では、脳そのものは痛んでいない ~片頭痛や熱中症による頭痛など、頭痛の種類
「頭痛」は、その名のとおり、頭の痛みですが、頭の中にある脳そのもの(実質)については痛みを感じません。脳は神経が集まっていものの、痛覚神経がないのです。
頭痛については、頭にある痛覚感受性器官への刺激が脳に伝えられることによって発生しています。
つまり、痛みを引き起こしているのは、脳そのものではなくて、脳と脊髄を包んでいる硬膜、そして血管や筋肉です。
もちろん、脳そのものに病気があれば頭痛が起こります。これは血管や硬膜が圧迫されて、刺激を受けることが原因です。繰り返しますが、脳は痛みを感じません。
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頭痛より |
片頭痛
症状
日常生活に支障が出るほど、発作的に痛むのが片頭痛です。「ズキズキする」「脈打つような」と言い表される痛みです。頭の片側だけでなく、両側に現れることも珍しくありません。そして、階段の上り下りなど、些細なことで痛みが悪化しがちです。
また、視界の一部にギザギザした光が現れ、それが広がってピカピカして見えなくなる「閃輝暗点(せんきあんてん)」と呼ばれる症状が、痛みの前兆として現れるのが特徴です。
頭痛のほか、吐き気や嘔吐、めまい、光過敏、音過敏などの症状が現れます。
原因
以前は血管説(vascular theory)が有力でした。血管内にセロトニンが放出されて血管が収縮し、その後セロトニンがなくなって反動的に血管が広がって痛みが起こるという考えです。この説では、片頭痛の特徴である閃輝暗点や、ズキズキした痛みをうまく説明されていました。
しかし、その後の研究で脳血流の増加時期と患者が頭痛を感じている時期とが、必ずしも一致していないと判明しました。
最近の説は、三叉神経血管説(trigeminovascular theory)です。頭蓋内・硬膜血管に分布している三叉神経が、なんらかの刺激で興奮して痛みを起こすというものです。
緊張型頭痛
症状
以前は「筋収縮性頭痛」と呼ばれていました。
「締めつけられるような」「重りを載せられたような」と表現される、だらだらと続く痛みです。痛みが楽な日とひどい日があり、だいたい毎日起こり、我慢すれば仕事や日常生活はできます。夕方に悪化しやすく、精神的ストレスが引き金で起こることもあります。
簡単な運動やストレッチ、入浴などで改善することも珍しくありません。仕事や家事などではずっと同じ姿勢を続けず、ときどき休憩を入れて首や腕、肩を回すと、頭痛の予防のつながります。
原因
頭の周囲の筋肉の活動亢進や過緊張、血管の収縮、中枢神経の機能異常などが関係している推測されています。
群発頭痛
症状
数週間から数カ月間、毎日のように頭痛が続くため「群発」という病名がつきました。原則として片側の痛みで、毎日決まった時間に頭痛発作が起こりがちです。
痛みが激しく「目の奥をえぐられるような」と表現されています。
頭が痛むほうの目で充血したり、涙が出たり、鼻水が出たりします。
原因
現在は 4 つの説が有力となっています。
①視床下部がトリガーとなる説(視床下部が支配している人間の体内時計の日内リズム異常)
②神経ペプチドなどの変化による説(頸静脈中の神経ペプチドの増加)
③内頸動脈の周囲に起源を求める説(内頸動脈が拡張して周囲を圧迫し、血流を阻害)
④三叉神経の過剰興奮が副交感神経の活性化を起こすとする説(三叉神経が刺激され、その刺激が目の奥にある内頸動脈や硬膜に伝播)
アイスクリーム頭痛(Icecream headache)
症状
おふざけではなく、正式な医学用語として認められている頭痛です。かき氷やアイスクリームを食べたときに感じる、「キーンとした」こめかみ辺りの痛みです。
原因
口の中やのどが急激に冷たくなると、その反射として頭蓋内の血管が広がって痛みを感じるという説があります。
もう一つは、のどへの「冷たい」という刺激が、三叉神経を通って脳幹の三叉神経核に伝達されたときに、脳で混乱が起こって「冷たい」ではなく「痛い」と感じるという関連痛説です。
熱中症による頭痛
症状・原因
熱中症は、高体温症と呼ばれる病気の一つで、体温調節がうまくできなくなって頭痛などが起こります。
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熱中症に関連する用語より |
まず、上がり過ぎた体温を下げるために、皮膚の血管が拡張して、頭部でも痛みが生じると考えられます。
その後、血管が広がり過ぎて血圧が下がり、脳への血流が減少して、意識を失います(熱失神)。
また、汗で血液中の塩分(ナトリウムイオン)が失われて筋肉が引きつり、痛みやけいれんが起こることがあります。同時に汗で血液(血漿)が減り、脳への血流も減少します。
ホットドッグ頭痛
症状・原因
亜硝酸塩は、ハムやソーセージなどの加工肉に含まれる色素固定剤です。亜硝酸塩は狭心症治療に使うニトログリセリンと似ていて、血管を開げるために頭が痛むことがあります。
中華料理店頭痛(中華料理店症候群)
症状・原因
中華料理によく使われているうま味調味料のグルタミン酸ナトリウムが、頭痛やめまいなどを起こすと考えらえていました。メカニズムについてはわかっていません。
二日酔いの頭痛
症状・原因
アルコールが体内に入ってアセトアルデヒドに変わると、血管が広がります。
飛行機頭痛
症状・原因
離陸や着陸のときに、気圧の変化によって副鼻腔内の空気が膨らんで頭痛が起こります。
睡眠時頭痛
症状・原因
かつては「目覚まし時計頭痛」と呼ばれていました。夜に寝てから、特定の時間、特に夜間や早朝に頭痛が1時間くらい続き、そのために目が覚めてしまうのが特徴です。高齢者に多く見られます。
体内時計の働きにより、体の器官の活動が活発になるタイミングで頭痛が発生します。
■主な参考資料
熱中症頭痛
第23回 アイスクリーム頭痛
第26回 中華料理店症候群
頭痛
関西医科大学第9回市民公開講座 頭痛について
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